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異世界のお兄ちゃんと冒険者したりコタツでのんびりする生活  作者: 紫蘇ごま油


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6 お兄ちゃんがもう一人できた

僕には空間魔法で作った部屋が二つある。一つ目は前世の記憶が蘇った時に最初に作った、この世界風のインテリアの広い部屋だ。セドリック兄ちゃんの学園の寮の部屋とドアで繋がっているから気軽に行き来できるようになっている。


もう一つはセドリック兄ちゃんが学園に入学してから暇を持て余した時になんとなく作った、前世で住んでたアパートに似ている小さな部屋だ。


前世のアパートでお兄ちゃんとコタツに入ってテレビを見たり、ご飯を食べるのが好きだったから、コタツを部屋の真ん中にどーんと置いた。床がほとんどコタツに占領されてしまっているけど、それが逆にちょうどよかった。


前世の物で溢れているこの部屋は、セドリック兄ちゃんが前世の記憶を思い出すといけないので僕が一人で使っているからだ。広々とした空間を一人で使うよりは狭いほうが寂しくない。


今まで一人で使っていたその部屋に、僕は転移魔法でルフェル兄ちゃんを連れてきた。ここなら誰にも話を聞かれる心配がないし、僕もたぶん凶暴な魔獣に襲われたってへっちゃらだけど、魔獣を気にしながらだと落ち着いて話ができないだろうから⋯⋯


前世の日本のありふれたアパート風の室内を物珍しそうに見回していたルフェル兄ちゃんに玄関でブーツを脱いでもらってから、コタツにご案内した。僕はルフェル兄ちゃんと向かい合う席に座る。冬が終わったばかりのまだ肌寒い季節だったから、コタツで下半身があったまる。記念すべきお客さま第一号のルフェル兄ちゃんに、お茶とお菓子のおもてなしも忘れない。


「この苦くて緑色の茶か?それと、このやたら硬いが甘いのにしょっぱいクラッカー、初めて口にするがうまいな」


「よかった。緑茶っていうお茶と、お煎餅っていうお菓子です。それであの、僕が弟になる条件ですけど」


「ああ」


「貴族のお金の事件について調べてくれたら、僕⋯⋯ルフェルさんの弟になります!」


前世の記憶を思い出してから四年が経つのに、僕はまだお父さんとお母さんの濡れ衣を晴らせないでいた。


伯爵家の屋敷の、以前はお父さんが部下の人たちと仕事をしていた部屋に忍び込んでお金関係の書類やノートを探したりもしてみたけれど、処分されてしまったのか全然見当たらなかった。


それに僕はチートな魔法を女神さまからたくさんもらっただけで、頭が良い子なわけじゃない。お父さんたちにかけられた『横領』の濡れ衣をどうやって晴らせばいいのか、ちっとも見当がつかなくて困っていたんだ。


こっちの世界の交番みたいな場所──憲兵隊の詰所に何度か『トール伯爵家で起きた横領事件はでっちあげだから調べてください』とお願いしに行ったけど、僕みたいな小さな子どもの言うことは本気にしてくれなかった。


お父さんとお母さんを捕まえて連れていったのも憲兵隊の人たちだ。罪人として鉱山で働かされる予定だったお父さんたちは、知り合いの貴族の人たちが罪を軽くしてくれるようにお願いする署名をたくさん集めてくれたおかげで、鉱山よりは少しだけましな環境の港の船着場で働かされることに決まった。


僕がこっそりお父さんとお母さんの様子を見に行ったら、元貴族だからと嫌がらせで他の人よりつらい仕事をたくさんさせられていたので、僕は二人に完全防御と身体強化の魔法をかけた。


お父さんたちは元貴族だからとムチで打たれても、船の積荷が崩れる大事故に巻き込まれた時も無傷でピンピンしていたし、重い積荷をどれだけ運んでもフラフラにならなくなった。


現場を監督するおじさんも周りで働く人たちもお父さんとお母さんを『兄貴』と『姉御』と呼んで丁寧に接してくれるようになったから、魔法をかけておいて本当によかった。 


船着場は安全になったけど、無実のお父さんとお母さんを早く家に戻してあげたい。僕はお父さんたちが濡れ衣を着せられて捕まっていることを、思い切ってルフェル兄ちゃんに打ち明けてみた。


「なるほどな。それなら俺に伝手がある。お前の両親の件について調べてやれるぞ」 


自信たっぷりに言い切るルフェル兄ちゃん。もしかしたら、お父さんとお母さんを助け出せるかもしれない。僕は嬉しくて泣きそうになった。


「だがそのかわり、今日からお前⋯ニコラは俺の弟だ。俺は狭量な男じゃないからな。ニコラの実の兄の弟をしながら俺の弟になるといい」 


「うん、わかった!よろしくね、ルフェル兄ちゃん!」


その日から僕はセドリック兄ちゃんの弟兼、ルフェル兄ちゃんの弟兼、冒険者になったんだ。



すっかりコタツを気に入ったルフェル兄ちゃんが、この部屋を僕たち冒険者パーティーの拠点にしたいと言うので、僕はすぐにOKした。一人でコタツに入るのは寂しかったから大歓迎だ。  


だけどこの世界に存在しないテレビも気に入った兄ちゃんがしばらくの間テレビっ子になってしまい、最初の頃は冒険者ギルドに行けない日々が続いた。


日本のグルメ番組⋯⋯特にサラリーマンのおじさんが心の中で呟きながら一人でお昼ごはんを食べる番組にハマったルフェル兄ちゃんが、おじさんが食べている料理を見るたびに『あれを食ってみたい』と言うから、魔法で出したタブレットでレシピを調べて、小さなキッチンで二人で色んな料理を作った。作りたい料理の材料は部屋に備え付けの冷蔵庫を開けると普通に入っているから、何でも作れてしまうのだ。


色んな料理を作って食べた末に、ルフェル兄ちゃんの大好物は二日目のカレーとポッポロ一番塩ラーメンの半熟卵乗せに決定した。そこでやっと僕たちの冒険者としての活動がスタートしたんだ。



ルフェル兄ちゃんは宣言したとおり、ドラゴンを倒す依頼を最初に選んだ。僕への弟特典だ。


でも僕が『ドラゴンは見たいけど、倒すのはちょっと⋯⋯』と、乗り気じゃなかったからか『倒すのが嫌ならテイムしたらいい』と言って、二人で魔力を合わせてテイムすることになった。


ドラゴンは大昔に生まれたらしくてとても魔力量が多かった。僕もルフェル兄ちゃんも普通の人よりすごく魔力量が多いけど、一人ずつだとドラゴンには敵わなかった。


一人だと無理だったテイムも二人だとあっという間にできて、今はそのドラゴンを七つ向こうの山の中で飼っている。ルフェル兄ちゃんはその子に『ポッポロ』という名前をつけて可愛がっている。


ギルドの依頼は討伐だったのにテイムに変更しちゃってよかったのかな?と気になって訊ねてみると『話はつけてきたから問題ないぞ』と何でもないふうに返事したルフェル兄ちゃん。


僕はチートな魔法をもらったから色んなことができるけど、ルフェル兄ちゃんはそうじゃないのに普通にめちゃくちゃ強い。それに僕にはわからないギルドの難しい手続きだってさらりとやってのける、とても頼りになるお兄ちゃんだ。


ギルドの依頼の他にも、ルフェル兄ちゃんは個人的に人身売買の悪の組織を捕まえたり、農家の人たちに国が決めた何倍もの税金をかけていた悪い領主を捕まえたりもしていて、僕もそのお手伝いをした。


マイペースでいつも気だるそうに見えるけど、ルフェル兄ちゃんは困ってる人を放っておけない優しい人なのだ。





──そんな感じで僕とルフェル兄ちゃんは、冒険者をしたり困ってる人を助けに行ったり、そうじゃない日は今日みたいに拠点の部屋でのんびりするか、ポッポロのお世話をして過ごしている。


ちなみに今はもう暖かい季節に変わったけど、コタツ布団をしまおうとしたらルフェル兄ちゃんがショックを受けていたので一年中出しておくことにした。


コタツもコタツ布団も魔法で作ったから、自動で洗浄魔法を発動する手間いらずだし、季節に合わせて温度も調節してくれるから夏でも使えるんだ。


「それじゃあ今からポッポロの山に行かない?ポッポロといっぱい遊んで、お腹が空いたらそこでカレーかラーメンを食べようよ」


「いいな。そうしよう」


お昼ごはんの時間になっても空腹じゃなかった僕たちは、ポッポロのいる山に遊びに行くことにした。


二人でコタツから出たタイミングで、部屋中にウウウ~~とパトカーのサイレンみたいな警報の音が鳴り響いた。


「た、大変だ!お兄ちゃんアラートが鳴ってる!」


「なんだ、お兄ちゃんアラートって」


「これはセドリック兄ちゃんに危機が迫った時に鳴る警報だよ!急いで転移するから、ルフェル兄ちゃんも一緒に来て!」




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