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トイイミは消えない

 俺は公園のベンチに座っていた。そうすると、隣に探偵が座るのだった。

「料金を追加で貰ったので、ここ数十年の間に、あなたの住むマンションの部屋に住んでいた住人のことを、調べました」

 探偵はクリップでまとめられた数十枚の紙を、横から俺に渡すのだった。俺は「ありがとうございます」と言って、素直に受け取るのだった。

「では、私は忙しいので、行きますね」

 俺は一人取り残された。そして、数十枚の紙を読んでいくのだった。数十枚の紙は新しい順になっており、俺は新しい順に読んでいくのだった。そして、最後から数枚のところで目を凝らした。紙には、中年の男の写真が貼られていた。中年の男の情報を読むと、中年の男は三十年ほど前に、俺の住むマンションの部屋に住み始めたらしく、二十年ほど前に引っ越したらしかった。そして、この中年の男は引っ越した後で、連続児童殺人事件の犯人として捕まり、数年前に牢屋の中で、老衰で亡くなったらしかった。この中年の男の写真は、比較的若い頃の写真だった。

 俺は、この男が引っ越す前にも殺人を行なっており、トイイミを部屋で殺したと分かるのだった。俺は、トイイミがこの男に名前以外が思い出せないほど追い込まれたと考え、憤りを覚えるのだった。

 俺は夜にマンションの扉を鍵で開けた。そして、鍵をポケットに入れて、扉を開けて、中に入り、扉を閉めて、扉が開かないようにした。俺は、トイイミがベランダにいるのが、透明なカーテンからわかるのだった。

 俺はリュックをソファの上に置いた。そして、片方の透明なカーテンを開き、窓の鍵を開けて、窓を開け、ベランダに出て、窓を閉めた。

 トイイミは光り輝く外の街を眺めていた。

「ねぇ、聞いて」

「うん」

「私思うの」

「うん」

「私、この世界には、不可能なことは少ないと思うんだ」

「うん」

「でもね、一つでも不可能なことに出会うと、可能なことが不可能なことになるの」

 トイイミは静かに泣いていた。俺は黙って、このままトイイミの横にいるのだった。そして、数分経って、トイイミは泣き止んだ。

 俺はトイイミを殺したに違いない男の名前を言った。

「俺はお前のことを調べていた。俺は、まだ証拠を掴んでいないが、こいつがお前を殺したと考えている」

「そう」

 俺は「こいつがお前を殺したという証拠を、絶対見つけるよ」と言った。

「ありがとう」

 しかし、トイイミは「でも、証拠を見つけても、私は成仏できないと思う」と言った。

「私はずっとこのままだと思う」

 俺は言い返す言葉が見つからなかった。

 俺たちは光り輝く外の街を、黙って眺めるのだった。



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