表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滝の王国の悪役令嬢 ――ある修行僧の再来  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/41

終章の静寂

 その日の夕暮れ、

 滝はゆるやかに金色の光をまとっていた。

 陽の傾きとともに、流れの粒がひとつずつ輝きを変え、

 まるで世界そのものが、溶けゆく水に還っていくようだった。


 街の人々は、もう滝に祈らない。

 誰も声を荒げず、誰も教義を説かない。

 子どもが笑えば、それが滝の音。

 老人がため息をつけば、それもまた、流れの一部だった。


 言葉は、もはや水に戻った。

 語ることも、沈黙することも、同じ流れの中に溶けている。


 クレアは、茶屋の灯を静かに落とす。

 客はすでに帰り、湯気の残り香だけが空気に漂っていた。

 彼女は最後の茶碗を拭いながら、

 ふと、滝の奥――白い霧の向こうに消えたアメリアを思い出す。


 あの微笑。あの静けさ。

 今も滝音の中に、確かに息づいている気がした。


クレア(独白):「あの方の記した言葉は、いまも流れておりますわ。

 滝がある限り、沈黙は終わりません。」


 滝音が、呼吸のように続く。

 間を置くごとに、世界がひとつ、深く息をする。

 光と影が交わり、音と無音が溶けあう。

 そのすべてが、滝の“生”そのもののようだった。


 そして、夜が訪れる。

 王都のすべての家々で、灯りがひとつ、またひとつ消えていく。

 だが、どの窓辺にも微かな音があった――

 水でも風でもない、穏やかな笑いの響き。



――その夜、王都はひとつの音に包まれていた。

誰もそれを滝の音とは呼ばなかった。

けれど、すべての家の窓辺で、静かな笑いが水のように溢れていた。


まるで、世界そのものが、

沈黙の滝 ―― The City of Silent Echoes ――

になったかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ