表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滝の王国の悪役令嬢 ――ある修行僧の再来  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/41

水の王国 ――終末的静寂

国は、すべてを湿らせながら、ゆっくりと沈黙に沈んでいった。

街路は雨に溶け、屋根の上には常に霧が降り、

人々の声は短く、やがて言葉よりも音に近づいていった。


市場では会話が要らなくなった。

代わりに、水の滴り方で値段を示し、

笑い声は、まるで滝の微かな反響のように響いた。


子どもたちは文字を習わず、水の動きを読むようになり、

詩人たちは紙を捨て、瓶の中の音で詩を奏でた。

街全体が、まるでひとつの滝のように呼吸する世界となった。


その頃、クレアは最後の報告書を記していた。

机の上はうっすらと水に覆われ、紙は柔らかく波打っている。

彼女は丁寧にペンを動かしたが、

書かれた文字は、瞬く間にインクとともに滲み、形を失った。


それでも彼女は微笑んだ。


「……お嬢様、あなたの滝は……国家になりましたわ。」


外の空気は重く、湿っていて、

風が吹くたびに庁舎の窓辺から雫が落ちた。

その音が、まるで祈りのように静かに続く。


クレアが顔を上げると、

遠く、雲の切れ間に一本の白い線が見えた。

それはかつてアメリアが立っていた滝――白露の段。

もはや地図にも載らぬその滝が、

王国全体を包み込むように、淡く光っていた。


――滝庁の時代。

それは、王国史上もっとも静かで、

そして、もっとも濡れた黄金期であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ