表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滝の王国の悪役令嬢 ――ある修行僧の再来  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/41

滝税と滝補助金 ――湿度経済の誕生

滝庁の勢いは、ついに経済の領域へと及んだ。


庁長リュカ・ド・フォルマンの新たな声明は、まるで詩のようであり、同時に法令のようでもあった。


「流れはただであってはならぬ。

水の恩寵には、等価の対価が要る。」


こうして、“滝税”が制定された。


内容は奇妙に具体的だった。


「滝に打たれた日数に応じて減税」

「乾燥地帯には“加湿支援金”」

「市民の湿度指数を年度ごとに算定」


各家庭には「個人湿度票」が配布され、居間の壁に湿度計が取り付けられる。

役人が巡回し、濡れ具合を目視で確認していく。

“湿りすぎ”の世帯は注意を受け、“乾きすぎ”の世帯は講習会に呼び出された。


やがて商人たちが動いた。


市場では“打たれ放題チケット”が飛ぶように売れ、

家屋の屋根には“人工滝”が設置されはじめる。

子どもたちはポケットサイズの「簡易滝携帯版」をぶら下げ、

通学路で小さな霧を噴かせながら歩いた。


滝が税制の中心に組み込まれたことで、王国の通貨は安定し、

物価は潤いとともに上昇した。

“湿度経済”と呼ばれる新たな繁栄の時代の到来である。


だが、クレアの目にはそれがどこか異様に映った。


ある日、庶民の家を視察した際、老婆が笑って言った。


「もうねえ、なぜ滝に入ってるのか忘れちまったよ。

でも、入らないと税が高くてねえ。」


クレアは返す言葉を見つけられなかった。

滝の祈りがいつしか義務となり、

信仰が制度に溶け、制度が湿気を増やしていく。


それでも、王都の空気は穏やかだった。

街路樹は青々と葉を茂らせ、子どもたちの頬はしっとりと潤っている。

人々は濡れながら働き、濡れながら眠り、濡れながら笑った。


国は潤いを誇った。

そして、誰もが濡れている限り、平和だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ