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初めて。

 遅くなってごめんなさい。


 リアンが急に足をとめた。


「心愛」


「ん?」

 

 どうしたんだろ、疲れちゃったのかな。

 ずっと走ってたしね。


「ここは……どこだ?」

 

 は?

 自分で連れてきておいて何言ってんの?

 リアンが手、引っ張るから、てっきり行きたい場所でもあるのかと思ってたのに。


「知らないよ。こんなとこ、来たことないもん」


 見渡す限り、みどりでいっぱい。

 「自然」って言葉がしっくり来るような場所。

 

「しかし、奇麗ところだな。人間界ここもなかなかいいではないか」


「うん」


 あたしは、ふさふさの芝生の上で大の字になる。

 空は、とっても広々としていた。


 さっき死にかけたとは思えないくらい、あったかい気持ちでいっぱいだ。

 

「なあ、心愛。おいら、神様のくせに誰かを守りたいとかって思ったことがなかったんだ」


「え……」


「けどな、さっき心愛のこと守りたいって思ったんだ。心愛を守るためなら、おいら、どこまでも頑張れる気がしたんだ」


 そう言ってリアンはあたしの隣で横になった。


「おいらが誰かを守りたいって思ったの、心愛が1番だぞ」


 あたしも初めてだよ。神様に守りたいって言われたのなんて。


「ありがと。守ってくれて、ありがと」


 不意に、涙がこみ上げてきた。

 

「心愛」


 リアンは空を指差して、優しくほほ笑んだ。


 そうだったね。

 リアンのお家を見ればいいんだよね。




 空がオレンジに染まるまで、あたしたちは黙っていた。


「そろそろ、帰ろっか」


「ああ」


 リアンはむくっと起き上がって、ネコみたいに伸びをした。


「どっちから来たんだっけ?」


 ここがどこなのか分かんないけど、とりあえず来た道を戻れば帰れるんじゃないかな。


「こっちだ」

 

 リアンは東の方を指差す。


「では、行こうか」



 リアンの言うとおりに歩いたら、なんとか知っている道に戻ることができた。

 


「リアンは、こっちにいる間どこに泊まるの?」


 人間に知り合いなんているわけないし。


「良い公園を見つけたのでな。そこに泊まる予定だが」

 

 公園て。ホームレスじゃないんだから……。


「ほかの神様はどうしてるの?」


「他の追放された者は、神社に居候しているらしいぞ。」


 神社。神様だもんね、そっか。


「リアンも神社に行けばいいよ。近くにあるよ。」


「いや、予約制だからな。今日のところは公園でよい。」


 神社に予約制とかってあるの?

 不思議。

 でも、公園はちょっとかわいそうだな。

 うちに泊めるわけにもいかないし。

 

「リアン、公園でいいの?」


「かまわない。それより、心愛もそろそろ帰った方がいいのではないか。」


「……そうだね。じゃあ、また明日。ばいばいリアン。」


「さようなら。」


 リアンを公園に残してあたしは帰った。


 リアンはあたしを助けてくれた。

 なのに、あたしはリアンのために何もできない。

 泊まる場所さえも用意できない。

 

 それが、悲しかった。

 読んでくれて、有り難うございました。

 

 感想や、アドバイスいただけると嬉しいです。

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