友達?
「ここはスーパー。食べ物とかを買うところだよ。」
あたしは今、リアンに人間界っていうかこの町を案内しているところ。
リアンはスーパーを目をキラキラさせて眺めている。
「人がたくさんいるのだな。それに、ほかの家とやらよりずいぶんと大きいな。」
見た目は人間だけど、スーパーをこんなにも珍しがる人なんてめったにいないよね。
神様の世界にはこういうお店は無いのかな?
「ほら、次いくよ。」
あたしはスーパーに釘ずけになってるリアンを連れて歩き出す。
よっぽどスーパーが気に入ったのか、リアンはしょんぼりしている。
「信号気をつけてね。」
「シンゴウ?」
リアンは知らないことが多い。
赤ちゃんなみの知識力だと思う。
あたしは教えてあげることがいっぱいで、ちょっと嬉しい。
だってあたしは勉強とか、レイちゃんに教えてもらってばっかだもん。
「信号は、あの赤と黄色と青のやつだよ。青ならこの横断歩道を、あっ横断歩道ってのは……。」
あたしは信号と横断歩道について一通り説明してあげた。
なんか、頭が良くなった気分。
「おっ、青になったぞ!渡ろう、心愛。」
「うん。」
リアン、楽しそうだなぁ。
レイちゃんはあんまり笑わないからな・・・・・・。
「なんで、おかしくもないのに笑わなきゃいけないのよ。」とか言って。
レイちゃんとリアンって正反対だなぁ。
でもどちっもいい友達だけど!
このあとはどこを案内しよ……
「あぶないっ!!!」
リアンのあわてたような声。
ふと横をむくと、あたしの真横におおきなトラックが!
キ――――
甲高いブレーキの音。
あたし、死んじゃうの!
やだよ・・・・・・。
あたしは動けなくなった。
はやく逃げなきゃいけないのに、足が動いてくれない。
もう、だめだ……。
あたしはぎゅっと目をつむった。
―――――――――あ、れ?
車の音、ブレーキの音、近くの人の話し声。
音が消えた。
聞こえる音はただひとつ。
あったかくて、やさしい声。
「心愛!早くおれの手を!」
……リアン?
ゆっくりと目を開くと、目の前には大きな手があった。
リアンの手……。
あたしはその手をさっとにぎる。
強い力で引っ張られた。
そしてやっと気が付いた。
まわりの景色が、人が、車がとまっていることに。
まるで時間が止まってしまったかのように。
リアンはきりっとした目をしていた。
今まで見たことも無いような目。
リアンの額から汗がこぼれ落ちる。
そのときだった。
リアンが力なく地面に座り込んだのは。
それと同時に音が聞こえ始めた。
車も人も動き始めた。
さっきと違うのはリアンの様子だけ。
「リアン、大丈夫?」
あたしは生きている。
きっとリアンが助けてくれたんだ。
「ああ、こ、こあは無事か……。」
こんなにぐったりしてるのにあたしの心配を?
「うん。ありがとう。助けてくれたんだよね。」
「す、こし、時間……を、と、めたんだ。」
息をはずませながらにっこりとあたしに笑いかける。
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
「ああ、すこし、疲れた、だけだ。」
そんな状態で言ったって説得力ないよ。
あたしの為に力を使ってくれたんだよね……。
着替えしかできないリアンが。
嬉しすぎて、悲しすぎて、泣けてしまうよ。
「うっ、うぅ、うわぁぁぁん。」
1番つらいのはリアンだってわかってるのに。
涙がとまんないよぉ。
「心愛、泣くなよ。」
「ごめん。」
「おいらはあの雲のずっと上で暮らしていたんだ。見てみろよ、上を向けば涙がこぼれないだろ。」
あたしはリアンに言われたとおり、視線を上に向ける。
「本当だね。あたし、泣きたくなったらリアンのお家を見ることにする。」
しばらく上を向いていたら、涙が止まった。
「案内の……続きをしてはくれぬか?」
そう言ってリアンはやさしくほほ笑んだ。
「え……」
「いいだろう。さあ、行こうではないか。」
リアンはあたしの手を握ると走り出した。
2人で風をきりながら見た景色は、不思議と輝いていた。
いつも見ているはずなのに。
あたしを助けてくれたときのリアンは、強そうで、とってもかっこよかった。
いつもはおいらとか言ってるのに「オレ」って言ったり……。
違う人みたいだった。
優しいとこだけはいつもと一緒だったけど。
手をつないでるところが熱い。
心臓がいつもより速いテンポを刻んでいる。
こんな感じ、初めてだ。
レイちゃんといてもこんな感じにはならない。
2人とも友達なのに。
『友達』……なのに。
あたし、おかしくなっちゃったのかなぁ。
読んでいただき、有り難うございました。