表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

友達?

「ここはスーパー。食べ物とかを買うところだよ。」


 あたしは今、リアンに人間界っていうかこの町を案内しているところ。

 リアンはスーパーを目をキラキラさせて眺めている。


「人がたくさんいるのだな。それに、ほかの家とやらよりずいぶんと大きいな。」


 見た目は人間だけど、スーパーをこんなにも珍しがる人なんてめったにいないよね。

 神様の世界にはこういうお店は無いのかな?


「ほら、次いくよ。」

 

 あたしはスーパーに釘ずけになってるリアンを連れて歩き出す。

 よっぽどスーパーが気に入ったのか、リアンはしょんぼりしている。

  

「信号気をつけてね。」


「シンゴウ?」


 リアンは知らないことが多い。

 赤ちゃんなみの知識力だと思う。

 あたしは教えてあげることがいっぱいで、ちょっと嬉しい。

 だってあたしは勉強とか、レイちゃんに教えてもらってばっかだもん。


「信号は、あの赤と黄色と青のやつだよ。青ならこの横断歩道を、あっ横断歩道ってのは……。」


 あたしは信号と横断歩道について一通り説明してあげた。

 なんか、頭が良くなった気分。


「おっ、青になったぞ!渡ろう、心愛。」


「うん。」


 リアン、楽しそうだなぁ。

 レイちゃんはあんまり笑わないからな・・・・・・。

 「なんで、おかしくもないのに笑わなきゃいけないのよ。」とか言って。


 レイちゃんとリアンって正反対だなぁ。

 でもどちっもいい友達だけど!


 このあとはどこを案内しよ……


「あぶないっ!!!」


 リアンのあわてたような声。


 ふと横をむくと、あたしの真横におおきなトラックが!


 キ――――


 甲高いブレーキの音。


 あたし、死んじゃうの!

 やだよ・・・・・・。


 あたしは動けなくなった。

 はやく逃げなきゃいけないのに、足が動いてくれない。


 もう、だめだ……。

 あたしはぎゅっと目をつむった。




 ―――――――――あ、れ? 


 車の音、ブレーキの音、近くの人の話し声。


 音が消えた。


 聞こえる音はただひとつ。


 あったかくて、やさしい声。


「心愛!早くおれの手を!」


 ……リアン?


 ゆっくりと目を開くと、目の前には大きな手があった。

 リアンの手……。

 あたしはその手をさっとにぎる。

 強い力で引っ張られた。


 そしてやっと気が付いた。

 まわりの景色が、人が、車がとまっていることに。

 まるで時間が止まってしまったかのように。


 リアンはきりっとした目をしていた。

 今まで見たことも無いような目。


 リアンの額から汗がこぼれ落ちる。


 そのときだった。

 リアンが力なく地面に座り込んだのは。


 それと同時に音が聞こえ始めた。

 車も人も動き始めた。

 さっきと違うのはリアンの様子だけ。


「リアン、大丈夫?」


 あたしは生きている。

 きっとリアンが助けてくれたんだ。

 

「ああ、こ、こあは無事か……。」


 こんなにぐったりしてるのにあたしの心配を?


「うん。ありがとう。助けてくれたんだよね。」


「す、こし、時間……を、と、めたんだ。」


 息をはずませながらにっこりとあたしに笑いかける。


「ねぇ、本当に大丈夫なの?」


「ああ、すこし、疲れた、だけだ。」


 そんな状態で言ったって説得力ないよ。

 

 あたしの為に力を使ってくれたんだよね……。

 着替えしかできないリアンが。

 

 嬉しすぎて、悲しすぎて、泣けてしまうよ。


「うっ、うぅ、うわぁぁぁん。」


 1番つらいのはリアンだってわかってるのに。

 涙がとまんないよぉ。


「心愛、泣くなよ。」


「ごめん。」


「おいらはあの雲のずっと上で暮らしていたんだ。見てみろよ、上を向けば涙がこぼれないだろ。」


 あたしはリアンに言われたとおり、視線を上に向ける。


「本当だね。あたし、泣きたくなったらリアンのお家を見ることにする。」


 しばらく上を向いていたら、涙が止まった。


「案内の……続きをしてはくれぬか?」


 そう言ってリアンはやさしくほほ笑んだ。

 

「え……」

 

「いいだろう。さあ、行こうではないか。」


 リアンはあたしの手を握ると走り出した。

 2人で風をきりながら見た景色は、不思議と輝いていた。

 いつも見ているはずなのに。


 あたしを助けてくれたときのリアンは、強そうで、とってもかっこよかった。

 いつもはおいらとか言ってるのに「オレ」って言ったり……。

 違う人みたいだった。

 優しいとこだけはいつもと一緒だったけど。


 手をつないでるところが熱い。

 心臓がいつもより速いテンポを刻んでいる。

 

 こんな感じ、初めてだ。


 レイちゃんといてもこんな感じにはならない。


 2人とも友達なのに。


 『友達』……なのに。


 あたし、おかしくなっちゃったのかなぁ。

 

 

 読んでいただき、有り難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ