神様。
「はじめまして。あたしは心愛……桜田 心愛。」
「おいらは神。ちなみに名はリアンだ。よろしくな、心愛。」
神様……リアンはさっと片方の手を差し出した。
あたしはその手をにぎる。
リアンの手は、とてもあったかかった。
でも、今「神」って言ったよね……。
まあ、いっか。
「今日からあたし達、友達だよ!」
あたし、決めたの。
レイちゃんと同じくらいリアンと仲良くなるって。
「ともだち?なんなんだ?それは。」
知らないんだ。友達。
「友達ってのは……えっと……」
こう聞かれるとよくわかんない。
なんなんだろ?
「おたがいに信じあえる人……じゃないのかなぁ。」
「そうなのか。おいらの世界では他の者と口をきく事さえも難しいのでな。人間がうらやましい。」
そう言ったリアンは、なんだかさみしそうに見えた。
「では……いいぞ。おいらたちは今から友達だ。」
とりあえず、良かったぁ。
断られたらどうしようかと思ってたよ。
あたしは「友達」としてリアンを守ろう。
「ところで、リアンの追放っていつまでなの?」
リアンは人間に見えるらしいから、長期間だとさすがに危ないし。
「それなら、だいたい10年だ。」
――――――10……ねん?
「10年って、かなり長くない?絶対、見つかっちゃうよ。」
「そうかもしれないな。でもどうにかなるんじゃないか。」
神様にとって「力」は大事なものなんじゃないの?
武士にとっての「刀」みたいに!
どうにかなる。って適当すぎだよ……。
「見つからなければ良いのだろう。姿消術を使えば簡単だ。」
さっき、その術はかけられないって言ってませんでした?
「あの、その術ってかけれるの?」
「ああ。」
よかった。見つからないなら、正体もばれないじゃん。
「神ならたいていはかけることができるぞ。おいらはできないけどな。」
ああ……。やっぱり。
こんなんじゃ、10年ももたないよ。
「その姿消術ってのをかけれるようになればいいじゃん。」
「だから、おいらはおちこぼれだって言ったじゃないか。」
術が使えないんじゃ、普通の人間と同じじゃん。
普通の人間……。
「あ!」
「どうかしたのか?」
「うん!」
あたし、またいいこと思いついちゃった。
「10年間、普通の人間として生きていけばいいよ。見た目は人間だし。」
「そうか。いい考えだな。じゃあ、おいらは今日から人間だ。」
正体がばれなきゃいいんだもんね。
「では、心愛。人間界を案内してくれぬか?ここ(人間界)のことは何も知らぬのでな。」
人間界の案内か。やってあげてもいいかな。
「いいよ、案内したげる。」
でも、リアンの服装はどうにかしないと。絶対にあやしまれるもん。
和服に袴。こんな格好で町中歩いてる人なんて見たことないもん。
「パパの服でよかったら貸すから着替えてね。」
「服なら借りなくて結構だぞ。」
え、いや、でもその格好はどうかと……。
「わが名はリアン。衣に属する者どもよ、わが命にしたがい力を貸したまえ。」
何か唱えると、リアンの服が一瞬にして変わった。
Tシャツにジーパン。どう見ても普通の人間だ。
すごい!
やっぱり、神様なんだ。
それにしてもさっきのリアン、別人みたいだったな。
ぜんぜんおちこぼれなんかには見えなかった。
「リアンってすごいんだね。」
「まあな。これがおいらのかけれる唯一の術だからな。」
着替えしかできないの!
今は役に立ったけど、実用性ないじゃん。
はあ……。
「じゃあ、行っこか。人間界、案内してあげるから。」
「そうだな。よろしくたのむ。」
「今日からおいらは人間になるし、心愛の友達にもなるんだよな。」
神様の笑顔はやっぱり最高だ。
いつまでも、ずっと、となりで笑っていてほしいな。
せめて、10年は一緒にいてくれるよね。リアン。
読んでいただき有り難うございました。