もう一回、出会い。
あたしの声に気が付いたのか、男の子はこっちを向いた。
最初は目に涙をためていたものの、だんだんと表情がやわらいできている。
そして、くったくもない笑顔で言った。
「おいらは神だ。そなたは妖精か?それとも天使か?何にしても、とりあえず仲間がいて良かった。」
……何?この人。
神?妖精?天使?
何を言っているの?
「えっと、あたしは普通に人間ですけど。」
「そうかそうか。そなたは人間か。」
自称・神様の顔がすっと青ざめる。
「そなた……おいらのことが見えるのか。おいらの声が聞こえるのか。」
ここにいるんだから見えてるし、目の前で話してるんだから声だって聞こえてる。
「うん。」
あたしはコクリとうなずく。
すると、自称・神様はその場にうずくまってしまった。
どうしたんだろう。
「ああ、おいらは姿消術さえもかけられないのか……。」
姿消術?
……姿を消す術とかかな。
でも術をかける。って……。
もしかして、この子は本当に神様なのかも。
「ねぇ、あなたって本物の神様なの?」
「ああ。なんならそのカメラで撮ってみたらどうだ?おいらが神だって分かるから。」
自称・神様はあたしが手に持っているデジカメを指差す。
そういえば、さっきの写真、背景しか写ってなかった。
やっぱり、本物の神様なんだ。
すごい!
「このことは、誰にもいわないでくれよ。」
神様がぼそっとつぶやく。
えー。
レイちゃんにも教えてあげたかったのに……。
「なんで?」
「おいらはおちこぼれなんだ。あまりにも出来が悪くてここ(人間界)に追放されちまった。おいらたち神は、人間に正体がばれたら『神の力』を剥奪されるんだ……。」
つまり、神様なのに本来の力が無くなっちゃうってこと?そんなの、かわいそうだよ。
っていうか、あたし正体知っちゃったんですけど!
神様が自分から正体ばらしたんだけど、あたしが写真なんか撮ったからこんなことになっちゃったわけで……。
なんか、すごく罪悪感を感じる。
「あの、あたし神様の力になりたい。」
あたしは気が付いたら口走っていた。
神様が顔をあげる。
「どうやって?」
今にも消えちゃいそうな、細い声。
実はあたし……何にも考えてない。
それなのにあんなこと……。
こうなったら今、がんばって考えるしかない。
がんばれ、心愛!
思いつくんだ、心愛!!
……さすが、あたし。
いいこと思いついた!
「あたし、さっきのこと全部忘れる。だからもう一回出会おうよ。今度は人間として!」
「…………。」
あたし、なんか変なこと言ったかな。名案だと思ったんだけど……。
ちらっと、神様のほうを向いてあたしはびっくりした。
だって神様は泣いていたんだから。
あたし、神様に泣かれるようなこと言ってないよね……。
何がいけなっかたんだろう。
「あの、神様。ごめんな……」
「ありがとう。嬉しくて涙までこぼれてしまったではないか。」
神様のすがすがしい笑顔に、あたしはほっとした。
「さあ、もう一回出会おう。ここ(人間界)では人と出会ったとき、自己紹介とやらをするのだろう」
神様はやさしくほほ笑んだ。
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