神様にはとどかない~在るべき場所~
もう少しで約束の時間になっちゃうから、あたしたちはそのまま公園でのんびりと過ごした。
時間がゆっくり流れているような気がした。それくれい、幸せな時間だったよ。
『リアン。帰るぞ』
だけど、あたしたちの幸せな時間はその一言で終わっちゃった。
リアンのお父さん。
本当はお別れなんてしたくない。だけど、リアンのお父さんには感謝しなくちゃいけないんだ。リアンと一緒にいられる時間をくれたんだから。
「リアンのお父さん、ありがとうございました」
リアンが悔しそうな表情で向いている方向に頭を下げる。
あたしは、人間だから、大好きな人の家族の姿さえ見ることが出来ないんだ。
悲しいけど、でもその見えない人にもう一度……
「ありがとうございました」
リアンに出会わせてくれて、ありがとうございました。
あたしがリアンに出会うことが出来たのはあなたが、リアンのお父さんが居たから……。
「父上、帰りましょう。在るべき場所へ」
リアンの言葉が妙に重たく感じる。
在るべき場所……。
それが、あたしにとっては人間界で、あなたにとってはあっちの世界だってだけ。
だけど、それが悔しい。
やっぱり、人間のあたしは神様のあなたにはとどかないのかな。
あなたは、あたしにとって手のとどかない存在でしかないのかな。
「心愛、ありがとう。約束、だから」
そう言い残して、リアンは一瞬にして姿を消した。
さっきまでリアンが居たところに「ありがとう」ってつぶやいてみる。
約束、か。
―――おいらと結婚、してくれるんだろ?
―――心愛はおいらの許婚になりたいというのか?
リアン、できない約束はしちゃいけないんだよ。
でも、ありがとう。
その約束で、あたしは一人でも頑張れる気がするの。リアンも頑張ってね。
いつか、その約束を叶えてくれるって信じてるから。
ずっと待ってるからね。
素敵な時間をありがとう。
やっぱり、あたしなんかじゃ神様にはとどかなかったね。
ふと空を見上げると涙が込み上げてきた。
リアン、リアンのお家を見たって止められない涙もあるんだね。
淋しい。
心にぽっかり穴が開いちゃったみたいだよ。