わたしたちの現実。
「お願いです!リアンと一緒に居させてください!」
「お願いします!心愛と一緒に居させてください!」
お願い。
あたし、もうリアンが居ない世界なんて考えられないよ。
あたしには、リアンが必要なの!
『では、1日だけ時間をくれてやろう』
え?1日?
『なんだ?いらないのか?ならもう連れて帰るが……』
1日でも、たった1日でもリアンと一緒に居られるのなら……
「いえ。お願いします!1日だけ、時間をください!」
あたしはその時間を思いっきり、楽しみたい。
『では、また明日、この時間に迎えにこようではないか』
リアンのお父さんはそれだけ言うと、帰って行ったようだ。
あたしには姿消術の所為で見えなかったけど、リアンの気の抜けた表情からするときっとそうなんだと思う。
「リアン。あと、1日。あたしと素敵な時間を過ごそう?」
うつむいているリアンに手を差し伸べる。けど、リアンはあたしの手を握り返してはくれなかった。
返事すら、返してくれなかった。
その瞬間、あたしの中で膨らんだ何かがはじけたような気がする。
「あたしだってね、すっごく悲しいんだよ? でもね、あたしは最後の一日を泣きながら過ごすなんて嫌だよ! だって、だって最後くらい、リアンの笑顔を見ていたいよ! あたし、リアンの笑った顔、大好きだよ?」
精一杯、思いを伝えた。
「おいら、明日から心愛に会えないと思うともう、笑うことなんてできな……」
――――――パシッ
気がついたら、あたしは大切な人の頬を叩いちゃってた。
「ふざけないでよっ! あたしは、リアンのことが大好きなの! だからこそ、リアンにはずっと笑っててほしいの。あたしの所為でリアンが流していい涙は嬉し涙だけなの! そんなリアンの顔なんて見たくない」
頭で考えるよりも先に口走っていた。
でも、これがあたしの思う全てだ。
「すまない、心愛。おいら、どうかしてたみたいでな」
リアンは目に涙を溜めながら、笑った。
あたしの大好きなリアンの笑顔を見せてくれた。
あったかくて、やさしい笑顔を見せてくれた。
あたしもいつの間にか泣いてたみたい。だけど、リアンの笑顔が見れたから、もう泣かないよ。
二人で泣きながらはにかんだ笑顔を向け合って、なんだか可笑しくなって思いっきり笑った。
笑いながら、この幸せな時間がずっと続けばいいのにって心の底から願った。