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魔女の道々  作者: 川獺右端
第十章 アリスと三人の家来
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あとがきにかえて: オッタル・ウーリムス

 ターラーの名前を私が初めて知ったのは、初等科の遠足で国立美術館に行った時の事だ。

 世界で一番有名な魔女のガラス像は展示室の奧にひっそりとあって異彩を放っていた。

 もの凄い青色だった。

 凜と立った少女の魔女が青い炎を纏って杖を構えているガラス像だった。

 国立美術館の展示物で一番記憶に焼き付いたのがターラー像だった。


 その後、私が大きくなるにつれ、歌劇「ターラー」を見たり、ターラーを主人公にした歴史キネマを見たりして彼女の一生の理解を深めていった。


 とにかく、リンデンの国民はターラーが好きだった。

 魔女王アリスよりも、ターラーの方が人気があるぐらいだ。

 それはやはり、テロリストとして歴史に現れ、『青』の魔女として数々の冒険を果たし、ヴァンフリート卿と愛し合い、そして魔女王アリスを救うために悲劇的に死んだという、数奇な一生が国民の気持ちに合ったのだろう。


 魔導科学活劇で文壇デビューした私であるが、いつかターラーとアリスを主人公に歴史物を書きたいという衝動が芽生え、資料を集め始めたのがこの作品の始まりである。


 ターラーの文字コンテンツで最古の物は、文豪でもある、プラント師の小説『青色魔女の恋』であるが、これはターラー師が生きている時から、話がいい加減であると大評判だったらしい。

 話をまとめるために事件を改編したり、人物を融合させたりしているらしい。

 何かというとクランク師を出して「クランク来来」と言わせて悪漢を叩き斬るシーンをやると、批判されていた。

 今回はなるべく「クランク来来」はやらないつもりであったが、やはり何回かは入れてしまった。

 クランク師を出しておいて「クランク来来」を入れない訳にはいかないのである。


 プラント師が書いた小説を底本に歌劇「ターラー」は作られた。

 こちらも舞台のため、上映時間が限られているので大胆な演出が入り、歌劇空間と呼ばれる独特の創作世界が作られた。


 今回の著作では、文献資料を基に、なるべく事実と思われる説話を採択し執筆した。

 とはいえ、底本小説と歌劇の引力はとても強く、完全に脱出できたかは疑問が残る所だ。


 アリス編では、定番の底本小説が無く、『魔女王アリス漫遊記』が伝わっているが、もちろん通俗本であるから、記述に信頼が置けなかった。

 そこで、リンデン王国年代記と歴史資料を紐解いてアリス王の生涯を丁寧に追って行った。

 アリス編では生き証人である、オートマタのナナ師とオニキス師に直接インタビューできたのが大きかった。

 彼女らは、アリスやペトロネラ、ヨリック、ダンカンなどの人物をまるで昨日の事のように熱く語ってくれた。

 不死のオートマタが居てくれてありがたいと思った所だ。

 今でも博物館でナナ師とアリス王の家来達の話を夢中でしてしまい夕暮れを迎えた事を思い出す。


 こうして、今回、古典小説版でも、歌劇版でもない、まったく新しいターラーとアリスの旅の物語を書く事が出来た。


 作中の時間からは百年の時が流れ、中央深樹海も小さくなり、エルフィンの数も減り、地に魔導列車が走り、空に飛空艇が飛び交う現代であるが、大魔導文明を生み出した魔女達は確かにこの時代にいて、笑い、泣き、愛し合い、憎しみ合い、殺し合った。

 魔女の道々は今も伝わっており、ワルプルギスの夜市も四年に一度、盛大に行われる。


 世界と歴史を作ってきた、ターラーやアリスの魔女達に感謝の意を表明して、筆を置こう。


オッタル・ウーリムス

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― 新着の感想 ―
最初から最後まで面白かったです。ありがとうございました。 ファンタジー大河ウーマンリブ(?)という他で読んだことのないコンセプト、キャラクターが本当に生きていた伝記を読んでいる感覚。特にターラー編では…
素敵なお話をありがとうございました。更新が楽しみな小説でした。 魔女たちが、受け継ぎ受け継がれる大きな流れの中で、自分のやりたいことを全力で楽しみながら、自分のやるべきことは見失うことなく一見飄々とや…
後世の歴史家がオートマタやドラゴンなどの悠久の時を生きる歴史の生き証人に話を聞く場面好きなのだ。
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