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魔女の道々  作者: 川獺右端
第十章 アリスと三人の家来
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第91話 メテオストライク

 魔導動甲冑からオートマタが生まれた事で、デシデリアは魔女の子供を部品にして魔導動甲冑を作った事が明白になった。

 オートマタたちはとても可愛いので各国の貴族の子女のお友達として雇うのが流行った。

 デシデリアはあれは機械の自我が目覚める魔法なので、魔導動甲冑の機械由来の自我で、魔女の子供の自我が復活した訳では無いと抗弁したが、機械の自我はオートマタほど細やかな自我にはならない事を立証されて黙り込んだ。


 デシデリア大統領は開き直った。


「魔物とは魔力に囚われた動物たちだ、魔女も魔力に囚われた人間であって、魔物なのだ。魔女に人権などはない、人由来の魔物である魔女を魔導具部品に応用したからといって、我が国が責めれるいわれは無い」


 と、公式に妄言を発表し、魔女の道々を激怒させた。


「魔女の人権を認めない国をこの世に存続させて置く事は魔女の団体として出来ない。魔女の道々はデシデリア共和国を破門、絶滅を宣言する」


 魔女の道々の代表ソーニャはこう演説した。


 リンデン王国は、貴族に魔女が居た事、王妃に魔女を迎え入れた経歴がある事で、デシデリアの主張を認める事はできなかった。

 なにより王族の跡継ぎたるアリス姫が魔女なのである。

 魔導動甲冑が意味の無い道具となった今、リンデン王府とデシデリア政府は袂を分かった。

 世界のどの国も魔女に賛同し、デシデリアを批難した。


「魔女の人権を認めないデシデリアは滅ぼすべき。まず最初に夏至の日にデシデリアの首都ドーリンガードにメテオストライクを落とし、更地にします。死にたく無い人は避難してください」


 魔女の道々の一人として、アリス姫が中立国の新聞にこのような談話を掲載した。


 メテオストライクを脅迫に使うのか、我が国固有の思想を滅ぼそうというのは傲慢では無いか、アリス姫はテロリズムの信奉者なのか、などとデシデリアは必死になって弁論攻撃をしたが、魔女の道々は何の反論もせず、夏至の日を迎えた。


 とても暑い日であったと伝わっている。


 アリス姫はディアナの軍艦の甲板上で星を呼んだ。

 天空の向こうから流星がなだれ落ちるように落下し、デシデリア首都、ドーリンガードを破壊した。

 人はみな避難して、無人であった。

 火と煙が消えると、そこには五百年の歴史を誇る古都は無く、ただ盆地だけが広がっていたという。

 デシデリア政府はもう何も答える事が出来なかった。

 彼らは、ただひたすら身を縮め沈黙の中で暮らしていた。


 そんな中、ワルプルギスの夜市が来て、アリス姫は十五となり成人した。

 今回のワルプルギスの夜市の会場は中央深樹海の近くのデイリンの街の近く、ゴート山だった。


 メリル共和国の魔女学校があった村は、姿を変え、魔法学術都市のようになっていた。

 デイリンの街は目と鼻の先なので、魔女学校の生徒も沢山、ワルプルギスの夜市へと参加した。


 アリスは家来のナナと、弟子のペトロネラを連れて夜市を遊び回った。

 サンディも体調が良かったので最初から参加してアリスは母親にしっかりと甘えた。


 さて、盛会だったワルプルギスの夜市も終わった。

 アリスはサンディに宣言した。


「お母さん、父さんの所へ行ってくるよ」

「そう」

「話を聞いてくる、馬鹿な事を言うなら殺すし、そうでないなら治療する」

「きっとあの人は馬鹿な事を言うわよ、だけど、殺さないであげて」

「お母さんはお父さんを許したの?」

「全然許してないわよ。ただ、馬鹿な王様が馬鹿な事を言ったとしてもアリスが手を汚す必要は無いと思うの」


 そう言ってサンディは笑い、自慢の娘を抱きしめた。

 それを見つめるディアナの目も笑っていた。


「流星号で行くか、アリス」

「うん、あと、ナナとペトロネラとで行く、ヨリックは留守番だ」

「ええ、心配だけど」

「大丈夫、私は強いし」


 暗殺は心配だったが、アリスが世界一強い魔女なのも事実なので、ヨリックは強くは言えなかった。


「アリス、気を付けて行ってらっしゃい」

「ありがとう、師匠、行ってくる」


 アリスは流星号に跨がった。

 ペトロネラとナナが乗るのを手伝う。


 三人は流星号の背に乗って、リンデンの王都を目指して飛行した。


 ペガサスの速力でリンデン王都までは三日間掛かった。

 リンデン王国の国境を越え、宿場街で宿を取ると、リンデンの王府に来訪が発覚し、軍隊がやってきた。


 朝、ペトロネラと歯を磨きながら、将軍に向けてアリスは吠えた。


「帰れ将軍、それとも問答無用で王都にメテオストライクが欲しいのか」

「し、しかし、アリス姫のご帰還でございますし、言祝ぐ吉兆でございますから、どうかどうか」

「黙れ、これ以上粘るなら私は中央深樹海に帰る」


 軍隊はアリス姫の機嫌を損ねないように撤退をした。

 宿屋の主人と女将は土下座をしてアリスの帰還を喜んだ。

 渋い顔でアリスは流星号に跨がり、旅程を進める。


 アリス姫、帰還す、の報は稲妻の速度で津々浦々まで届き、沿線の国民はこぞって街道に出て旗を振り、アリスの帰還を喜んだ。

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