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魔女の道々  作者: 川獺右端
二章 ワルプルギスの夜市
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第8話 魔女を囲い込もうとする男ども

「夜市で鉄火場が開催されてるのは、魔女を博打に慣らしておくためなんさね」

「え、博打に慣らす?」

「ターラーもエリカも良くお聞き、世界の男共は魔女の魔法がうらやましくてしょうがねえんだよ。で、なんとか囲い込みたい、そんな時に使われるのはチンポかお金だ」

「チ……」

「チ……」

「んもう、ゾーヤは下品ね、男根と言いなさいな」

「同じだわい。とりあえず、愛か借金で縛るのが外の世界の男衆の手だわ。特にイカサマ博打で借金負わされる事が多いな」

「良く聞くわね」

「そういう時の予防に鉄火場があるんだ、博打に慣れておけばそうそう借金は負わねえし」

「夜市のカジノで借金を負ったらどうするんですか?」

「金貸しの魔女はいねえから、大金は借りれねえし、借りたとしても道々の中の事だからそんなにヤバくねえな」


 そうだったのか、とターラーは腑に落ちた。

 では、カジノですっからかんになったのも悪い事ではないんだ。


「それはそれとして、鉄火場で金を全部する馬鹿があるかい」


 パアンとターラーは頭を叩かれた。


「うぐぐ、ごめんなさい。男根の方はどう気を付けたら良いですか」

「恋とかすんな、そんだけだ」

「そんな~~」

「愛はねえ、危ないのよ、二千年昔に大陸の半分をメテオストライクで焼き払った『星』の魔女ティラーンも、『狂王アルビル』への愛が高じてですからね」

「チンコ怖ええ……」


 ターラーは小声でつぶやいた。


 師匠二人は無情にもすっからかんになった弟子にお金を貸す事は無かったが、夜市ではあちこちで賃仕事があって小遣いに困る事は無かった。

 便所掃除やドブ掃除は辛いが、お金を使ってしまった自分たちが悪いのでエリカと一緒に働いて、小遣いを回復させていった。


 アルバイトをしていたら、同じようにカジノにかっぱがれた若い魔女たちと知り合った。

 やっぱりみんなカジノですっからかんになるんだなあと、ターラーは思った。


 年若い魔女たちとは、すぐ仲良くなった。

 ワルプルギスの夜市に来てよかったなあとターラーは思った。

 若い魔女達とエールを飲みながら馬鹿騒ぎをするのはとても楽しかった。


 若い魔女に向けて、読み書きアバカスの教室もあって、ゾーヤ師匠が申し込んでお金を払ってくれていた。

 ターラーがお礼を言うと、弟子が読み書きできねえと師匠として恥ずかしいからな、がんばれ、と言われた。


 火の組合で魔法の修行、若い魔女との交流、歌って踊って、読み書きアバカスの勉強、楽しく暮らしていたら、あっという間に夜市の半分が過ぎ去っていた。


「うう、一ヶ月は無限の遠くかと思ったら、すぐそこまで来てますよ、師匠」

「楽しい時間はそういうもんだ。四年間、あちこちで稼いで、また夜市に来るんだよ」

「そういうものですか」


 ずっと無限に夜市が続けば良いのに、と思ったが、まあ、あまり長くやると飽きてしまうのだろうなあ、と、ターラーは思った。


 ソーニャ師匠にイドンの街の飾り物店に連れて行ってもらった。

 キラキラした物が一杯で店中の物が欲しくなったが、お金があんまり無かった。


「あ、属性のペンダントヘッドがあるよ、ターラーちゃん」

「わ、本当だ、綺麗」


 火の紋章は赤い石を使ってキラキラ光り、土の紋章は黄色でキラキラ光っていた。


「エリカ、買ってあげるわよ」

「わあ、本当ですかっ、師匠大好きっ!」


 エリカはソーニャ師匠に飛びついて喜んだ。

 いいなあいいなあ、とターラーが思っていると、ゾーヤがひったくるようにペンダントヘッドを奪ってレジに行きお金を払った。


「し、師匠! あ、ありがとうございますっ!!」

「大事にしな」


 ぶっきらぼうに言ってゾーヤはターラーの首にペンダントを掛けてやった。


 ターラーはゾーヤの腕におでこを付けてぐりぐりとした。

 なんだか、ぶっきらぼうな師匠の態度がそれっぽくてとても大好きが胸からあふれ出していた。

 ゾーヤは優しくターラーの頭を抱いて撫でた。


「なかよしね」

「そうですねー」


 ワルプルギスの夜市が終わっていく。

 ターラーはとても名残惜しかった。

 魔女の友だちが出来た、エリカという親友も出来た。

 読み書きの勉強も始めた。

 魔法も沢山覚えた。

 ゾーヤ師匠が凄く好きになった。

 魔女という生き方も良いなって、思い始めていた。


 ワルプルギスの夜市は、不要で持って行けない物、木材や布切れを燃やし、大きなかがり火にして夜を飲み明かす。

 歌が出て、踊りは始まり、大婆さまの挨拶があり。

 飲み進めて、朝が来たら、ワルプルギスの夜市は終わりだ。


「じゃあ、ゾーヤ、ターラー、四年後に」

「おう、ソーニャ、エリカ、息災でなあ」

「エリカちゃん、またね」

「うん、また会おうね、ターラーちゃん」


 エリカの操る箒に乗って、ソーニャとエリカは東の空に向けて飛んでいった。


「そんな顔すんじゃないよ、また四年後会えるさ」

「はい……」


 初めての夜市が終わった。

 なんだか悲しくなってターラーは泣きながら歩いた。


「所で、どこに行くんですか」

「戦場に行くべいよ、傭兵で稼ぐぞ」

「せ、戦争ですか」


 血生臭いのは厭だなあと思ったが、その分お金は稼げるのだろうなあと、ターラーは思った。


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