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魔女の道々  作者: 川獺右端
第九章 旅の終わりと始まり
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第66話 クランク来来

「クランク!! ランドランドの魔女がどういうつもりでっ……」


 クランクは黙って背中の大剣を抜き、駈け寄って来た。

 まったく気負いも無い走り方で指揮官は絶句した。

 ためらいなくクランクは大剣を振り、指揮官を真っ二つにした。

 血が月下にまき散らされた。

 配下の兵が青い顔でクランクに襲いかかるが、つまらなそうな無表情でクランクは斬り飛ばしていく。


 一個小隊の三十名が命を落とすのに、さして時間は掛からなかった。


「あ、ありがとうございます、クランク師」

「ああ、気にすんな、ターラーの弔い合戦でリンデン兵を斬りたかったんだよ」

「ありがとうございます」

「プラント、お前がついていてなんて不手際だ!?」


 プラントは馬車の窓から顔を出した。


「しらんよ『星』が生まれるなんて想像の埒外だし、リシャールが狂うのも想定外だ」

「ちくしょう、ターラーを倒すのは私だったのによう」


 クランクは暗い目をして中央公園方向を見た。


「とりあえず、南門を破壊しよう、これから王都から魔女が全員逃げ出すわけだしよ」

「そうだな」


 クランクはクーニッツ伯爵の一行に混ざり、南門の守備兵を皆殺しにして、門を物理的に破壊した。


「クランク師、どうかクーニッツ伯爵領までの護衛をして頂けませんか」

「私はこれから全部の魔女が逃げるまで軍隊を押さえないといけねえ、お前は勝手に旅をしろ」

「そ、そうですか」

「サンディの為にローパーは連れて行け、プラントは私の作戦に協力しろ」

「そうだな、『繋』の魔女を使うのか?」

「ああ、避難勧告の原稿を書けってよ」

「了解だ。ヴァンフリート、悪いな、先に領に帰ってくれ、サンディをよろしくな」

「解りました、お二人とも、ご武運を」

「なあに、軍隊なんざ、何万居てもどうってこと無いぜ。じゃあな」


 クランクは手を振って、ヴァンフリートの一行を見送った。


「王都から魔女を全員逃がすにはどれくらいかかるか?」

「最長で五日って所か。まずは、アラニス侯爵家を開放しに行くか」

「そうだな。あと、リンデンは魔導動甲冑をどれくらい保有してるんだ?」

「十五機ほどか、強力なのは近衛騎士団長の乗った奴ぐらいで、あとは大した事が無いぞ」

「騎士団長は大した剣客と聞くから、おもしれえな」


 クランクは凄味のある笑顔をプラントに見せた。


 二人は散歩をするような軽い足取りでアラニス侯爵家に向かった。


 深夜零時を回る前に、クランクとプラントは侯爵家を占領していた王軍を血祭りに上げ、侯爵夫妻を開放し王都から脱出させた。


 プラントはクランクを伴って王立図書館に入り、食事を取り、自分の部屋で寝た。

 警備の兵はいたが、クランクを見て何も言えずに二人を通した。


 翌日に、エリカがでっぷり太った魔女を箒の後に乗せて王立図書館の庭に下りてきた。

 プラントは笑顔で出迎えて、『繋』の魔女、ヴォッコに原稿を渡した。


「よござます、今から呼びかけますか?」

「九時丁度から始めよう」


 魔女達は、プラントの執務室に入り、時間を待った。

 エリカは、また箒で飛び去った。


 九時だ。


 その日、王都の魔力のある女性、いわゆる魔女は脳内に声を聞いた。


(おはようございます、こちらは『繋』の魔女ヴォッコと申します。王都内の魔女の皆さんの脳内に直接呼びかけています)


 宿屋を営む平凡な主婦のジルバは、脳内にヴォッコの言葉を聞いた。


 彼女の声は、昨日の騒乱の顛末を詳しく語った。

 リシャール王の妃、太陽妃サンディが、『星』属性の魔女、アリスを産んだ事。

 娘を戦争に使うというリシャール王と、そんな事は駄目というサンデイ妃の間で激しい口論となり、王が剣を抜いて王妃を斬ったという事。

 傷ついたサンディ妃は魔法を使って逃走し、師匠のターラーを頼った事。

 王に問いただしに行ったターラー師に、リシャール王は動甲冑をけしかけ、殺さんとした事。

 ターラー師は戦いの中で奥義を発動し『精霊化』してリシャール王を焼き、そして自分も消滅したという事。


『かくも恥ずべき犯罪をもって、魔女の道々はリンデン王国全体を破門し、全ての魔女を王国から退去させると決定しました。この声を聞いた魔女の皆さんは、王都南門へ集合してください』


「あらまあ」


 ジルバは昨日の大騒ぎの詳細を聞いて驚いた。

 それよりも、自分に魔力があるのも驚いたものである。


「お前さんは魔女の声を聞いたかい?」

「は、何を言ってやがる、気でもふれたか、ババア」


 旦那のレスリーは泊まり客の朝ご飯を調理しながら毒づいた。


「あれ、おかみさん、魔女だったのかい?」


 たまたま泊まっていた旅の魔女が笑顔で聞いた。


「あんたさんは聞いたかい?」

「ああ、聞こえたよ、九時からだった」

「私も魔女なのかねえ、知らなかったねえ、どうしようねえ」

「うるせえ、黙って仕事しろや、ババア。いまさら魔女になってどうすんだよっ」

「おかみさん、どっかに変な形のアザは無いかい? 火とか、水滴とか、ダイヤの六角形とか、風の意匠とか」

「水滴みたいな、もんはあるんだけどねえ」


 ジルバは魔女に肘のアザを見せた。


「へえ、こんな事もあるんだねえ、あんたは『水』の魔女だ」

「魔法が使えるようになるのかい?」

「ああ、『水』だろ、氷作れるぜ、氷」


 亭主のフライパンが止まった。


「まじかよ、氷つくれるのか? そりゃあ、儲かるぞ」

「ああ、氷でいろいろ冷やせるしさ、あと農業用水の仕事もできるよ」


 だが、ジルバは思案顔だった。


「でも、魔女は王国から出ていかなきゃならないんだろ? 亭主とやってるこの宿屋は畳まないといけないんだろ?」

「ああ、そうだな、でも、道々に言えば色々便宜図ってくれると思うよ」

「ババア、まずは偉い魔女に話を聞いてこい。その上で、どうしても行かなきゃならねえなら、俺も一緒に出てやるぞ」

「いいのかい、あんた?」

「氷作れる魔女の亭主だぞ、俺は左うちわで暮らせるじゃんかよ」

「んもう、あんたは厭な人だよ」

「がははは、とりあえず行ってこい」

「わかったよ、魔女さん、連れて行ってくれるかい?」

「ああ、私も行かなきゃならないからね。王立図書館に行こうよ」


 ジルバは降って湧いたような状況に不安になったが、魔女の客と一緒に王立図書館に急いだ。

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旦那さんのツンデレ具合ときたらもう。 幸せにおなりッ! 魔女と連れ合って幸せになる例をもっと作ってくれ。
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