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魔女の道々  作者: 川獺右端
第九章 旅の終わりと始まり
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第63話 近衛五騎との死闘

 リシャール王と軍勢が取り囲む中で、ターラーと動甲冑の近衛騎士たち五騎は死闘を繰り広げていた。

 ターラーはロングレンジで戦うタイプの魔法使いだが、戦場で幾たびかクランクとやり合っているので近接戦闘の捌き方もわきまえている。

 だが、不利は不利だ。

 王の考えを直接聞いたので、もう四軸ジンバル魔法で飛んで逃げても問題は無い。

 ヴァンフリートの逃げる手伝いをした方が建設的だ、と、思った。


「逃げるつもりか、ターラー」

「ええ、もう馬鹿馬鹿しいので」


 ターラーは杖を逆さにして金具に片足を乗せた。


「戦わず逃げるなら、王都の都市魔女を虐殺する」


 リシャール王の言葉を聞き、ターラーは動きを止めた。


「なぜ? 魔女のお陰で王都は発展していたのでしょう?」

「魔女と協力して培った王都の繁栄は偽物の安ピカ物だ、それを証明するために、貴様は魔導動甲冑に退治されるのだ『付け火のターラー』、お前の命で新しいリンデン王国の幕開けを言祝ぐのだ」


 ターラーは舌打ちをした。

 こんなに病的な廃魔女主義者を、見破る事ができなかった自分を恥じた。


 水の杖騎士はターラーの『質量炎』で倒れている。

 残りは四騎だ。


 ターラーは杖に『質量炎』を纏わせ地面に陣をかき始める。


『くそっ、なんだその陣は』


 ステファンは恐れて陣を踏めない。

 おそらくは只の落書きで魔法陣では無いと思っているが、敵は火魔法の『青』だ、警戒しなくてはならない。


 剣騎士が見誤ったか、陣を踏んだ。

 青い炎がヘビのように足に絡みつき、焼き潰し、剣騎士は悲鳴を上げて、のたうち回った。


 敵の自由な足運びを制限した。

 戦場でクランクに対してこれを行い、大怪我を負わせて退散させた技だ。


 動きが制限された所で『ファイガトリング』を発射し、微細な炎魔法の奔流を叩き込んだ。


『ぐっ、が、そんな攻撃!!』


 動甲冑の装甲は魔法をことごとく弾いた。

 『質量炎』以外は貫通できないようだった。


 ターラーは『質量炎弾』をリシャール王に向けて発射した。

 ステファンが慌てて射線に入り、盾で弾き飛ばした。


『ひ、卑怯!』

「は? なんで?」

『王よ、安全な所へお下がり下さい!!!」

「し、しかし、ターラーが死ぬ所を見れない」

『あなたが先に死にますよ!』


 リシャール王が白馬の頭を回すと、ドンと衝撃があって、白馬の頭が破裂した。


「騎士なんか倒してる場合じゃ無かったわ、あんたを直接殺せば万事解決じゃない」


 ターラーが落馬したリシャール王に向けて笑いながら近づいて来た。

 リシャールは信じられなかった。

 リンデンの王を殺すと言うのか、この魔女は。

 よりにもよって、この私を。


 ぶるっと胴震いが下から襲って来た。

 音がくっきり聞こえるようになり、視界が広くなった。

 ターラーが青い炎を纏って歩いて来ていた。

 焼かれる、焼かれる、一撃で私は焼かれる。


 魔女の事を危険だと思っていなかった。

 叔母が『算』の魔女で、恋をした少女は明るくて楽しい魔女で、全ての魔女は王国を豊かにしてくれる要素の一つで、王国に牙を向くとは思っても見なかった。


 リシャール王はこの日、初めて現実の魔女を知った。

 自分に都合の良い愛想笑いをする女たち、では無かったのだ。

 青い火炎をまとって、笑いながら殺しに来る凶悪な存在だったのだ。


 悲鳴を上げていた。

 子供のように胸を震わせて汚い悲鳴を上げていた。


『ターラー!!』


 ステファンがターラーとリシャール王の間に割って入った。


 ターラーは地面に杖で陣を書きながらゆっくりと前進していく。

 陣は必殺の武器でもあるし、死角からくる攻撃を防ぐ盾でもある。


「兵よ!! 陣に飛びこめ!! 無効化しろ!!」


 リシャール王の無体な命令に、一瞬、周りに居た兵が沈黙した。


 王国に対して、命を賭ける?

 このような不名誉な姿をさらした王に対して、命がけで飛びこんで陣を消す?

 誰がそんな事をするというのだ?


 と、一瞬の視線で兵達はそんな事を考えた。

 だが、利口な兵ばかりでは無い。


「うわあああっ!!」


 絶叫し、顔を真っ赤にした若い兵が一人、ターラーの陣に飛びこんだ。

 青い炎に巻かれて焼け死んでいく。


「!」

「うわあああっ!! うわあああっ!!」


 兵が絶叫しながら何人も、陣に飛びこみ、圧縮炎を消す。

 ターラーはふり返り戦慄した。


 『うおおおおおおおっ!!』


 足を焼かれた剣騎士が転げて陣を踏んで全身を焼かれた。

 その開いた空間を槍騎士が踏み越えてきた。

 ターラーは咄嗟に火炎弾で槍を吹き飛ばしたが、槍騎士は青い炎に取り巻かれながらもターラーのローブを掴んで動きを止めた。


『団長!!』

『応っ!!』


 巧みに陣の線を避けてステファンがターラーの首に斬撃をくわえた。


――よけ、られ、ないっ!


 正確にステファンの剣はターラーの首筋を目指して奔った。

 それは、すばらしく美しく手練れな一撃だった。

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― 新着の感想 ―
こ、こんなことが・・・こんなことが許されてええんか・・・!? ていうかリシャールを担いでいる限り王国滅亡待ったなしなんだけどね。教育って大事。
クランク師〜!カムヒヤ〜!
く〜! 手に汗握る〜!!
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