第57話 双子の弟子は学校へ行く
学校に行くようになって、ターラーといつも一緒だった双子の子供時代が終わりを告げた。
少し寂しい感じもしたが、弟子達の成長を喜ぶ気持ちの方が大きかった。
ターラーは夜会に招かれる事は無かったが、王家が主催するお茶会には時々呼ばれた。
「こんにちは、ターラー師、僕がリシャールです。サンディから、お噂を聞いていますよ」
「これはリシャール王子、このような平民の魔女にご挨拶恐れ入ります」
その席で、いきなりリシャール王子に挨拶をされたので、ターラーはびっくりしてしまった。
元は農民の娘なので、王族というものが何を考えている人種か想像も付かなかったのであった。
リシャール王子は利発で快活な美少年であった。
親族にプラントという魔女がいるからか、魔女の事も正確に良く知っていた。
サンディの事を気に入っているのか、お茶会でも仲睦まじく二人で語り合っている所を見た。
「リシャール王子は良い跡継ぎだよ、きっと賢王となり、リンデンをさらに発展させていくだろうね。サンディちゃんを娶る事で内外に魔女との協力関係をアピールもできるしね」
伯爵位としてヴァンフリートの王子への評価であった。
良く出来る子供のようだ。
双子は王立学校に通い始めた。
リシャール王子とも同じクラスで一緒に勉強をしているらしい。
ターラーは午前中が暇になったので、ガンドール工房のシフトを入れて魔導炉をガンガン回した。
ボストン親方やバリー親方が喜んだ。
ちなみに、ボストン親方が日頃の不摂生が祟って吐血して倒れ、それをサリーが世話をして、なんとなくまとまって、結婚したのもこの頃らしい。
ニノンはドラゴン外套を着て旅の生活を続けている。
時々王都に帰って来て切り子細工の仕事をする。
腕前は、今は無きゾーヤ師と並ぶとも言われた。
ターラーはニノンを会うたびに、ゾーヤ師匠に似てきているなと思い、胸を少しだけ痛めながら微笑んで見ていた。
いつしかニノンの後に小さい『水』の魔女がついていた。
「ああ、この子は弟子だよ、カナタ、ターラー師だよ」
「こ、こんにちはです、ターラー師、その、ご、御本を良く読んでおりますですっ」
「あはは、カナタちゃん、よろしくね」
「は、はい、立派な魔女になるためにがんばりましゅっ」
小さいカナタを見ると、師匠と旅を始めたあの頃を思いでして胸の奧がふんわりと温かくなった。
その年の夏の王都大祭で、リシャールの立太子が告知され、そして、サンディとの婚約も発表された。
王都の民は驚きと共に、好意的な眼差しを王家の跡継ぎたちに向けた。
大祭は例年になく派手に盛りあがった。
太陽の魔女妃が豊作をばらまき、リンデン王国は歴史的な好景気で、みな笑っていた。
ターラーもディアナと一緒に大祭を楽しんだ。
「お姉ちゃんが王子様と婚約してくれたおかげで、私はターラー先生を独り占めにできますね」
「それで良いのディアナ? あなたは恋とかは?」
「私はなんだか、その気になれなくて、独身魔女道を邁進しますよ」
「まあ、魔女は稼げるから独身多いけどさ」
「それに、年の半分は私の船でサンディと先生と一緒に旅ですから、問題無いのです」
「まあ、そうだね、今更豊作の魔法はやらない、という訳にもいかないか」
「リシャール王子が王位を継いでも、たぶん、王の巡行みたいに各地を祝福して廻りますよ。その時はきっと私の船を使うのです」
だろうね、とターラーは思った。
最近のディアナはさらに魔法を進化させて、結構な大きさのクルーザーを空に飛ばす事が出来るようになった。
そこまで大きくなれば、船室に泊まる事ができるし、使用人も沢山連れて行けるのであった。
学校に行っても、祝福の旅は免除にならない、どころか、年々うちの領を早く、もう一度うちの領へと要望は増え続け、減る事は無かった。
ディアナの飛行魔法の航行速度は年々上がるが、廻らなければならない領は増える。
農水省が調整をしてくれるが、欲望とは凄い物で確実な豊作を見込める祈祷に人々は殺到するのであった。
時々、リシャール王子を乗せてみたりして、ディアナの船はリンデン王国中を飛び回る。
友好国から、うちの国にも、祈祷を是非と言われるが、さすがに無理であった。
そんな忙しい毎日を暮らし、年を越えていき、双子は大きくなり、ついに学園を卒業して、リシャール王子とサンディの結婚式が大々的に行われた。
王都は三日三晩のウエディングセレモニーに湧き上がり、都民全員が、若い王子と皇太子妃を祝福し、大いに飲んで騒いだ。
ガンドール工房も操業を休み、工場内にご馳走を用意して、王子の結婚を喜んだ。
王都中が魔女妃の誕生を喜んだ。
今でもこの日は魔女祭りの記念日となり、国民の休日となった。
マジパンを送り合うほがらかな祭りとして現代にも伝わっている。
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