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魔女の道々  作者: 川獺右端
第八章 太陽と月の双子
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第56話 サンディの魔法

 ワルプルギスの夜市をもう一度迎える頃には、双子も結構大きくなっていた。

 幼女の感じは抜けて、サンディもハキハキ喋るおしゃまな少女となった。

 ディアナは昔から歳の割に大人っぽかったのだが、知性派に磨きが掛かり、よく王立図書館でプラントを質問攻めにしてたりする。


 弟子の成長を見つめるのは楽しい時間で、ターラーはいつもニマニマしてしまう。

 もう少しで双子は学校に通い出すので、そうなると少し暇になってしまうなと寂しく思ったりもした。


 サンディの『太陽』属性の真価がわかったのは、この頃だった。

 この時期にはディアナの飛行魔法も進化を遂げていて、小帆船に魔法を掛けて飛ばす事が出来るようになっていた。

 家族や使用人とターラーを乗せて、侯爵領に一っ飛びで帰省できるようになっていた。


 侯爵領でのお祭りなどにちょくちょく帰っていたようである。

 そして、双子が来た翌年は必ず大豊作になった。


「この大豊作はサンディさまの『太陽』のせいに違いあるまい」

「なんとも素晴らしい魔女様であるかよ、御領主さまのお嬢様達は」


 民草はそう言ってサンディを褒め讃えた。


「サンディは何か魔法を使ってるの?」

「使ってるよ師匠、ええとね『植物すくすくのお願い』を畑中に掛けるの、ディアナの船の上からね」


 調べて見ると確かに船の航路の下の畑が特に大豊作であった。

 豊作は素晴らしい事だ。

 沢山の穀物が取れれば農家は豊かになり、お金が領内に廻り始め、商人がやってきて市が立つ。

 この時代の善政というのはひとえに取れ高がどれだけ上がるかであるのだ。


 その年、ターラーはアラニス侯爵領の隅々まで廻るように船を飛ばすようにディアナに頼んだ。

 広い領を飛ぶとなると三日ほど余計に時間がかかるが、途中途中の村々では大歓迎を受けた。


「サンディさま、豊作大明神さま」

「よくぞ我が村にいらっしゃいました」

「素晴らしい、これで今年は大豊作だ」

「えへへ、上手く行くと良いね、おじさんたち」

「我々も一生懸命働きますぞ、だから、サンディさまも豊作を祈念して下さいませ」

「わかったよー」


 そして、次の年アニエス侯爵領は全域で歴史的な大豊作にとなり、住民は諸手を挙げて喜んだ。

 あまりの大豊作だと作物の値段が下がり、アニエス領は良いのだが近隣の普通の作柄の領が困ってしまう事になった。

 ついにリンデン王府からの調査が入り、サンディの魔法の真価は王国中が知る事となった。

 王様はとても喜び、サンディとディアナ、そしてターラーを呼出し、お褒めの言葉を授け、国中の農作にサンディの力が使えないか、と打診してきた。

 サンディの魔法は強く、そしてディアナの飛行魔法と組み合わせればかなりの地域をカバー出来そうだが、いかんせん時間が取られるのが困りものであった。


 結局、農水省と一緒に計画を立てて、双子に無理の無いように豊作を国中にばらまく、という事で話はまとまった。


 王様は上機嫌で、王子のリシャールとサンディの婚約を画策し、そしてそれはアラニス侯爵家の合意をえて正式に契約された。


「わあ、将来は王妃さまなのね、サンディ」

「うーん、リシャールは良い奴だけどなあ、なんか実感が無いよ。あと子供が生まれないのに良いのかな」

「私の時は跡取りが出来ないって事で師匠に反対されたけど、今はもうみんな知ってるから良いんじゃ無いかな、私は反対しないよ」

「そうかー、貴族の魔女の将来に関わるんだね、私が王家に嫁ぐと良い前例ができるのか」

「そうよね、サンディ、頑張ってね」


 ディアナにも後押しされてサンディの気持ちは固まったようだ。


 それからは色々と忙しかった。

 ディアナの船でリンデン王国中を旅する事になった。

 魔女の道々の再開のようでターラーは大きく息を吸った。


 とはいえ、双子の学校もあるので一年中飛び回るのではなく、一年の半分ぐらいが旅で、あとは王都に戻った。


 クーニッツ伯爵領にも豊作の祝福に行った。

 領館で見るヴァンフリートとは王都での彼とは少し違って見えた。

 本妻さんには小説の事でごめんなさいねと謝罪した。

 彼女は、いえいえと言っていたが目は笑っていなかった。

 跡取り君はもう立って歩けるようになっていて、本妻さんのスカートにまとわりついていた。

 とても可愛くて、でも彼を見るヴァンフリートの目が優しくて、胸がチクリと痛んだ。


「三日かけて全域に祝福を掛けてくれるのだね」

「念入りにやりますよ、ヴァンフリート伯爵さま」

「よろしく頼むよ、サンディ嬢」

「まかせてー」


 サンディはにっこり笑った。


 三日掛けてクーニッツ伯爵領を飛び回った。

 一日は、妹のジゼルの家に滞在して、騎士領の村も念入りに祝福してもらった。


「ターラー姉さん、毎年お金を送ってくれるのはありがたいんだけど、悪いわ、あんなに沢山」

「私は、あんまり使わないから、アンヤの教育とかに使ってね」

「いつもいつもありがとう、姉さんは私の誇りだわ」

「そんな事無いわよ、ジゼルが村で頑張ってるって思うと私も救われるのよ」


 ジゼルは手を合わせてターラーを拝んだ。

 現金収入があれば家畜を殖やしたり、農具を揃えたりで、色々と助かるのだ。

 何より娘のアンヤを良い学校で学ばせる事も出来る。

 感謝してもし足りないという事は無かった。


 その年のクーニッツ伯爵領は空前の大豊作に沸き返った。

 そして、人々は空飛ぶ船で訪れる『太陽』の魔女たちを、毎年待ち望むようになった。

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― 新着の感想 ―
国にしっかり取り込まれてしまいましたな~。 後の世に太陽妃とか呼ばれたりして。
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