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魔女の道々  作者: 川獺右端
第八章 太陽と月の双子
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第53話 レア組合に双子を登録する

 双子の手を引いてカジノへと向かう。

 二人とも幼児なので気分次第で唐突に駆け出したりして危ない。

 サンディも危ないが、ディアナは風で飛んでいってしまうので、しっかり手を握っていないといけない。

 王都の屋敷で、ディアナは一度風に飛ばされて木の上に引っかかって泣いていた事がある。

 庭師さん、執事さんが出て、ハシゴを掛けたりして大騒ぎとなった。

 二人とも手繋ぎが必須であるのだ。


 カジノに入ると若い魔女が沢山かっぱがれている最中だった。

 『算』には勝てないぞ、と教えてあげたいが、これも魔女の通過儀礼だから放っておくことにした。


「あれはなあに?」

「ルーレット、賭け事よ」

「やりたいやりたいやりたい」

「後でね、まずは組合登録をしないと」

「はーい」


 返事は良いが、サンディはルーレットを目で追って興味津々であった。


 カジノの奧でプラントはちんまり座ってお茶を飲んでいた。


「おお、ターラー、双子、いらっしゃい」

「プラント師がレア組合の長なら、王都で登録してくれたら良かったじゃないですか」

「え、図書館にいる時は組合の長じゃないよ、カジノに居る時だけだね」


 なんという無精な人なのだろうかと、ターラーは思った。

 というか、初めて会った時から変わらない少女みたいな姿で怪しい人である。


「プラントしぇんしぇえ」

「先生」

「おお、双子よ、ターラーはどうだ」

「ししょーは優しい」

「魔力の操作方を詳しく教えて下さいました」

「そうかいそうかい」


 プラントは双子を抱き上げて抱きしめた。


「ルーレットやりたいっ」

「えー、サンディには早いだろう、 もう少ししてからな」

「やりたいやりたいやりたいっ」

「もー、しょうがないなー、ちょっとだよ」


 良いのか? とターラーは思ったが、プラントのカジノであるから文句は言えなかった。


「あ、プラント師、登録は」

「もう名簿には載せてあるよ。心配すんな」


 プラントは二人を抱っこしてケラケラ笑いながらルーレット卓に運んでいった。

 筋力が足りないのか、なんだかふらふらしていて、怖い。


「ディーラー、この子たちにチップを五十枚ずつ上げてくれたまえ」

「かしこまりました、オーナー」


 サンディとディアナの前にチップコインが五十枚ずつ配られた。

 チップ一枚が一銀貨であるので、金貨五枚分ずつである。

 ターラーはお財布を出そうとしたがプラントは手で止めた。


「最初だからな、おごるよ」

「ありがとうございます」


 侯爵家から双子のお小遣いにと大金を預かっているが、博打などに費やすのは馬鹿みたいなので厭だった。

 おごりと聞いてターラーはほっとした。


「さあ、ごらん、あそこのルーレットに玉を投げ入れて、どこに止まるかを当てるゲームなんだ」

「ほおおお」

「出た目の数を当てるのですね」

「そうだ、数を一つだけ当てると賭け金が大きい、四つに賭けたり、そのゾーン全体に賭けたり、赤に賭けたり、いろいろと賭け方があるよ」

「あてりゅあてりゅ~~!」


 サンディはチップを五十枚、十二番のマス目に入れた。


「い、一気に使っちゃうのか、すごいな、サンディは」

「ここに来る」

「そうか」


 ディアナは赤のマスに五枚賭けた。

 他の若い魔女も思い思いの場所に掛け金を置いていく。


 ボールがルーレットのレーンに投げ込まれた。

 聞いた話だが、このディーラー役の魔女も凄腕で、狙った番号に自在に投げ入れる事ができるらしい。

 サンディの五十枚は一気に無くなってしまうね。

 ディアナは堅実にちまちま賭けるだろう。

 こういう所に性格が出るわね、とターラーは思う。


 ボールはカラカラと音を立てて、十二番に止まった。


 シンと場内が沈黙に包まれた。

 プラントがディーラーの方を見ると彼女は手を横に振った。

 作為では無いようだ。


「わあいわあいっ! ディアナもあたったね」

「うん、でもサンディは凄いね、お金に換える?」

「替えないっ、まだやるうっ」


 チップが山ほどサンディの前に配られた。

 五十枚の三十六倍だから千八百枚だ。

 金貨にすると百八十枚、一財産だね


 それから、サンディはたまに負けたりしたが、大体、勝った。

 ディアナにチップを分けて上げながら、プラントが音を上げるまで勝ち続けた。


「あり得ない、確率的に無茶苦茶だ」

「ふっふーん」

「勝ちは帳簿にしておいてください。当座のお小遣いに金貨五十枚ほど下ろしてください」

「ああ、畜生、サンディあんた博才あるな、将来はディーラーやるかい?」

「やるやるうっ」

「やめてくださいプラント師、侯爵令嬢がディーラーだなんて」


 サンディは思う存分ルーレットで遊べたのでご機嫌であった。

 ディアナもお小遣いをサンディから貰ってご機嫌であった。

 サンディはターラーにもお小遣いをくれようとしたが、弟子から小遣いを貰うのは老婆になってからだと思い、断った。

 幼い弟子の意外な才能であった。

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― 新着の感想 ―
な、なんだぁこの博才幼女!? レア属性の力なのか・・・!? でもそれならプラント師が気付くか。
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