第52話 双子と一緒に夜市を行く
双子の弟子はまだ幼児なので旅が難しい。
馬車を使い、使用人達に手伝って貰い、ターラーはワルプルギスの夜市がある、ガスパル山まで旅をした。
「ガスパルでの夜市は、私が初めて行ったワルプルギスの夜市なのよ」
「夜市にいるのは魔女ばっか?」
「そう、夜市には魔女しか入れないのよ」
「テントで泊まるのでしょう? 楽しみですターラーさま」
「将来はディアナの飛行魔法でみんなで行きたいわね」
「がんばります」
ディアナは意気込んだ。
サンディはそれを見てニコニコ笑った。
窓越しに峠道が見える。
師匠と一緒に息を切らせて登ったっけ。
足下のテントを入れたリュックを手で触ってターラーは微笑んだ。
あの頃から、ずいぶん遠くまで来てしまった。
師匠から受け継いだ魔女の心得を間違い無く、この子達に伝えて行かなくてはね。
ターラーはそんな事を考えて、車窓の向こうを流れて行く峠道を見ていた。
イドンの街に着いたのは夕暮れで、ターラーたちは馬車を降り高級ホテルに宿を取った。
メイドさんが二人と執事さんが一人、侯爵家から双子のためについてきた使用人達だ。
彼らが大体の世話をしてくれるので、旅の間ターラーはあまりやる事が無かったが、夜市に入ったら忙しそうだ。
豪華なスイートルームでターラーは双子と眠った。
次の日は夜市の開会式だった。
ターラーと双子は、高級ホテルに使用人達を置いてガスバル山に向かった。
使用人はこのままイドンの街に滞在して、何かがあったらターラーと双子を支援してくれる。
双子を連れて歩くのだが、サンディはあちこち興味をしめして寄り道をするし、ディアナはぷかぷか浮いて風に飛ばされそうになるし、幼児の引率は大変である。
ガスパル山に入る道に魔女が二人、歩哨に立っていた。
「よお、ターラー、最近戦場にこないじゃんかよ」
「二人も弟子ができて忙しいのよ、クランク師」
「おお、ターラーの弟子か、うわ、ちっちぇえなあ、こんにちは~」
「こ、こんちは、兵隊?」
「いや、魔女だ、『剣』属性、クランクっていう」
「ちは、私はサンディ『太陽』」
「わ、私はディアス『月』です、クランク師」
「うへえ、『太陽』に『月』か、大物になりそうだなあ、おまえら」
「えへへ、ありがとっ」
「ありがとうございます」
クランクは目を細めてぐりぐりとサンディの頭を撫でた。
サンディはキャッキャと言って喜んだ。
夜市の会場に入った。
懐かしい、騒がしい雰囲気であった。
ターラーは双子の手を引いて夜市本部のテントに向かった。
「おや、ターラーよ、噂の双子の登録かえ?」
「はい、婆さま、『太陽』のサンディと『月』のディアナです」
大婆さまのメロディが双子の登録を受け付けてくれた。
なんとも長生きな魔女だな、とターラーは思った。
「今年の開会の挨拶は?」
「私はもう隠居だよ、新しい道々の代表はソーニャだ。ゾーヤが生きてさえいればねえ。あんたの所の家系は凄い魔女が入るが早死にでいけないよ」
「そう、ですね」
「ははは、腐るな腐るな、後進に道をつないでいくのが魔女の勤めさね」
「はい、ところで、レアな属性の魔女はどこの組合に入れればいいですか?」
「希少属性は、『剣』でも『霊』でも、『算』の所に所属だよ、プラントの方は双子の事しってんだろ」
「プラント師の所ですか」
「あとでカジノ行って、話を聞いてみな」
「わかりました、ありがとうございます」
ターラーは二人を連れて開会式場に向かった。
途中、ロッカとポーラに出会った。
「おお、ターラー、その子たちが新しい弟子か」
「わあ、可愛いですねえ、こんにちはー、『火』のポーラですよ」
「私は『火』のロッカだよ」
「『太陽』のサンディれすっ」
「『月』のディアナです、ポーラさま、ロッカさま」
「あっはっは、可愛い可愛い」
ターラーはロッカに撫でられるサンディとディアナを見て目を細めた。
はげ山の上にソーニャが立って声高らかに夜市の開催を宣言した。
楽隊が楽曲を鳴らし、夜市が始まる。
ターラーはテント場にテントを張った。
しばらく旅をしていなかったので少々かび臭いが布地はしっかりしていた。
敷布を敷き詰め寝床を作り、テントの前にカマドを作ってお茶を入れた。
双子もキャーキャー言いながら手伝ってくれた。
丸太に座ってお茶を飲んでいると、いつのまにかギャガが居てニコニコしていたので、無言でお茶を出した。
「かわいいヨーイヨイ。私は『霊』のギャガだヨーイ」
「おんちゃー、私はサンディ『太陽』属性!」
「こんばんは、ディアナといいます『月』属性です」
「おお、レアだねえ、レア属性だねえ、かわいいヨーイヨイヨイ」
「同じレアの組合になるみたいね、何か気を付ける所とかありますか、ギャガ師」
「なんもなーいヨーイ、レア属性は魔法を教えてくれる先輩はいないがー、なんとなくなるホーイホイ」
「たのしいヨーイ」
「霊を呼んで教えてもらうわけには?」
ギャガは静かに首を振ってお茶を飲み干した。
「霊は必要な時にしか出てこないヨイヨイヨイ」
「そう、ですか」
「うん、弟子が出来たんだからしっかりしなさいよ、とか、言ってるヨーイヨイ」
ターラーの手が震えた。
師匠がいるのか……。
口寄せを、と言いかけて、ターラーは止めた。
「そうだいな、死人に頼るんで無いわな、だヨーイ」
「はい」
ターラーは胸が一杯になってうつむいた。
涙がポロポロと出て来た。
「ししょー、だいじょぶ?」
「どこか痛いのですか?」
小さな二人の弟子が心配してくれて、ターラーは二人をぎゅっと抱きしめた。
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