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魔女の道々  作者: 川獺右端
二章 ワルプルギスの夜市
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第5話 色々な魔女とエリカ

 ターラーは夕方に火の組合から出た。

 色々な魔法を教えて貰って実りある午後だった。


 『青』というのは火炎の温度の事らしい。

 『赤』が一番下の温度で、その上は『黄』、その上が『白』、そして最上級の火の温度が『青』だった、カエルっぽいロッカさんが『白』、他の魔女さんたちは、大体『赤』か『黄』だった。


「百五十年ぶりの『青』だあ、期待してんぞ、ターラー」

「は、はいっ、大婆さまっ」


 魔女の大先輩に褒められてターラーはとても高揚した。

 その事をテントのゾーヤに知らせると、彼女はにっこりと笑った。


「そりゃあ、良かった、私も師匠として鼻が高えよう」


 嬉しそうなゾーヤを見て、ターラーも嬉しくなった。


 テントにソーニャがやってきた。

 黒髪のターラーぐらいの年格好の女子が後にいた。


「おまたせ」

「あら、晩ご飯はソーニャ師匠とですか」

「イドンの街に良いレストランを見つけたのよ、行きましょう」

「それは楽しみです、えと、そちらは?」

「ああ、私の弟子のエリカよ、土属性、飛行魔法が得意なのよ」

「こ、こんにちは、エリカです」

「ターラーです、火属性です、よろしくね」

「は、はい、よろしくおねがいします、ターラーさん」


 大人しそうな子だな、仲良くなれたら良いなと、ターラーは思った。


 四人は暮れていく夜市を歩く。


「夜市でご飯は出ないんですか」

「やっているわよ、ただ、酒場と一緒だから騒がしくてね」

「明日つれてってやるよ」


 魔女の酒場は楽しそうだな、とターラーは思った。

 前方の建物の所に、少し変わった感じの魔女が居た。

 白を基調とした服で尼さんみたいな感じだ。


「あれは、何の魔女ですか?」

「ああ、教会の聖女、治癒の魔女だな」

「話が合わないから声を掛けないのよ」


 ああ、教会の聖女も魔女として夜市に来ているのか。

 全然違う物だとばっかり思っていたターラーであった。


 夜市の出口では剣を()いた魔女が二人、門を守っていた。


「おう、ゾーヤ、久しいな」

「最近はめっきり会わないねえ、クランク」

「またやり合いたいけどなあ」

「よせやい」


 ゾーヤの知り合いのようだ。

 剣客のような魔女もいるんだなあ、とターラーは思った。


「お、良さそうな『火』だな、戦場に出るか」

「え、あ?」

「そのうちな」

「そりゃ楽しみだ、あたしは『(みなごろし)のクランク』、『剣』の魔女だ」

「『剣』属性ですか? クランク師匠」

「希少属性だ、身体強化系魔法しか使えねえが、戦場なら無敵だ、カカカ」


 戦闘狂みたいな魔女なのかあ。

 色んな魔女がいるのをターラーは初めて知った。


「傭兵に出た時はあいつに注意だ」

「傭兵って、戦場に行くんですか?」

「火魔法と風魔法は、戦争は儲かる」

「いやでも……」


 ターラーにとって戦場は汚れた場所で、唯一の例外は労働者が体制を打ち破る革命の戦いだけであった。


「まあ、師匠の言う事を聞け、うん」

「でも……」


 まあ、戦場に行って、各陣営の主張を聞いて、正しい方へ加勢すれば良いか。

 ターラーはそんな事を考えていた。


「火の魔法は戦場で需要があって良いですね、土属性はあんまり」

「飛行術で輸送とか無いの」

「あはは、そういう地味な作業は馬車とか使うんですよ」


 それもそうか。

 そうか、火と風が戦場向きなんだなあ。

 特に火だ。


 イドンの街のレストランは落ち着いていて、とても美味しかった。

 ターラーは出身が農村なので、凝った料理を食べた事が無く、あれもこれもと動けなくなるほど食べてしまった。


「食べ過ぎました~」

「まあ、ソーニャとお茶を飲んでるから、食休みをしておれ」

「はい……」


 ゾーヤはソーニャと各界の噂話を交換していた。

 国と国のトラブルから、開戦情報、戦の旗色の情報、今流行っている物は何か、困った魔女の噂話など、多岐にわたった。


 エリカはターラーを心配そうに見守っていた。


「薄荷アメ舐める? 口がすーすーするよ」

「ください」


 薄荷アメ自体が初めてであるが、ターラーは口に放り込んだ。

 わ、すーすーする。


「おいしい」

「良かった」

「エリカちゃんはどこら辺から来たの?」

「大陸の北の方、魔女だからって村でリンチに遭ってた所をソーニャ師匠に助けられたの。ターラーちゃんは?」

「私は西の方、農民反乱で両親が騎士たちに殺されて、学者の先生の言う通りに反乱を手伝っていたら、ゾーヤ師匠に捕まったの」

「あら、まあ」

「今は、農民の権利獲得に社会運動に動くか、魔女になるか、迷ってる所だよ」

「魔女の方が良いよ~、ターラーちゃん、才能ありそうだし」

「えへへ、ありがとう」


 魔女の道々を出て社会運動に邁進すると、火の組合の人達ともお別れなんだよね。

 それよりも、ゾーヤ師匠ともお別れになるなあ。

 どうしようかなあ、困ったなあ。


 いまだに気持ちの踏ん切りが付かないターラーであった。

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― 新着の感想 ―
幸せそうなターラーちゃんを見るとほっこりするんじゃよ。お友達も出来てよかった。 そのうち活動家共の実態を知れば考えも変わるんじゃないかな?
火は色で分かりやすいね 他の属性はランク分けがあるのかな?地なら鉱物出したり? 決戦兵器扱いだから戦場で見えたら殺し殺される関係かー それで情報共有してどこにいつ参戦するか駆け引きもあるのね
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