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魔女の道々  作者: 川獺右端
第六章 農村ガリバタから二年目
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第38話 ターラー吹きの時代

 ガラス工芸の様式にターラー吹き時代式という物がある。


 いわずと知れたターラーが王都で魔導炉を回していた時期を美術史ではそう呼んだのだ。

 色鮮やかで明るく楽しい感じのガラス工芸品が沢山生み出され、一時代を築いた。

 ガラス工房『ガンドール』のバリー親方の作品が特に有名だが、ライバル工房も負けじと工夫を重ね、ガラス工芸の黄金期と呼ばれる時代であった。


 とはいえ、それはゾーヤもターラーも亡くなって時代が廻ってからの呼び方で、作中の現在、ターラーは工房で魔導炉を回していた。

 ひさびさに魔力を練り込みながら魔導炉を回すのはなかなか楽しいものだった。


「あと一人、良い魔女が居れば最高温度記録にも挑めるのにね」

「んー、最近朝番に入った新人魔女が『白』だったわよ、若旦那に相談して回してもらおうか?」

「そうね、私が居るうちに記録作ってしまいたいわ」

「最高温度かあ、私たちの名前が記念プレートに記載されるのね」


 サリーは魔導炉の温度計を見上げながら言った。

 最高温度の記念プレートには、それを成した魔女の名前があった。

 現在のプレートにある名前は七人、『白』と『黄』が主で『赤』の魔女は一人もいなかった。

 現在のセンター時間のメンバーは、ターラーが『青』、ハンナとサリーが『黄』、あとは『赤』が三人であった。

 魔導炉には杖を差し込む場所が七カ所あるので、あと一人、魔女を参加させる事ができるわけだ。


 バンと扉が開いて、バリー親方が喜色を浮かべて走って来た。


「ターラー師、帰ってきたんだね、とても良い発色が出たよ」

「バリー親方、帰ってきましたよ。でも、温度は五度ぐらい違うだけなんですけどね」


 現在は巡行温度で二千度弱で炉を回していた。

 ターラーが居ない時でも、五度ほど温度が下がるぐらいで、ガラスの発色には関係が無いだろうと、ターラーは思った。


「違うんだよっ、きっとターラー師の魔力には独特の物があって、発色が良くなるんだと思うな」

「えへへ、気のせいですよ~」

「とりあえず、また毎日たのんだよ」

「はい、バリー親方も頑張ってガラス細工を作ってくださいね」

「ああ、また大物を作る予定だよ、がんばるよ」

「ああ、そうだ、去年のグランプリを私のガラス像が取ったようですね、おめでとうございます」

「ああ、ありがとう、まだまだ賞を沢山取るよ。ターラー吹きの温度があれば問題無しだよ」


 ものすごい圧でバリー親方に迫られて、ターラーは苦笑した。

 自分の魔法でこんなに喜んで貰えてとても誇らしくて嬉しかった。


 その日はどんどん魔導炉を回して、帰り際に若旦那に朝番の『白』の魔女の事を聞いた。


「ああ、ポーラちゃんか、確かに『白』だけど、まだ子供だよ」

「子供なんですか、幾つぐらいですか」

「十歳の天才魔女だよ、将来楽しみだね」


 ターラーが魔法を覚えたのが、だいたい十歳ぐらいだから、似たような感じだった。


「明日、朝番が上がる時に待っててもらって会わせてあげるよ」

「おねがいします、トーマスさん」


 十歳で『白』だったら、成長すると『青』まで行くかもしれないな、とターラーは思った。


 ポーラちゃんと会える明日を楽しみに、ターラーはゾーヤと一緒に帰宅することにした。


 途中の市場で色々な食材を買って自炊の準備を整える。

 パンも良い物が買えたので嬉しくなった。


 夕暮れの王都をぶらぶらと帰路につく。

 どこからかお料理に匂いがして、お腹が空いたのを自覚した。

 空を見上げると一番星が光っていた。


 で、アパートの前で、太った厚化粧の女とヤクザが待ち構えていた。


「あんた達ね、私の可愛いヘッダちゃんを殺した大悪人は」

「なによあんた」

「騎士領のマルタ夫人だあな、そっちのヤクザが間男か?」

「ちがうわ、私の愛しいダーリンなんだからっ、あなたたちが殺したヘッダちゃんを賠償金で償いなさいよっ、さもないと……」

「お、おい、こいつら……、工房魔女じゃなくて、道々……」

「工房で働いてるのよっ! 確かめたわっ!! 大丈夫よっ!!」

「あ、兄貴っ、兄貴~~!!」


 若いヤクザが後を見て声を上げた。

 ヤクザ親父たちが三人物陰から出て来た。


「へへ、あんたたち……」

「い、いや、え? なんでターラーさん、ゾーヤさん?」

「な、なんでなんで?」


 ゾーヤが杖を振り上げ魔力を練った。


「おまえら、都市魔女でも魔女は魔女って通達はしらねえのか」


 ヤクザ親父たちは路面に正座をして土下座をした。


「「「ゴ、ゴメンナサイッ!!」」」

「おまえらの組はどこだ」

「か、かかか、勘弁してください、勘弁してください」


 ヤクザ親父の一人が立ち上がりマルタ夫人を思い切り殴った。


「てめえっ、ふざけんじゃねえぞっ!! うちの組を全滅させるつもりかっ!!」

「お前もそうだっ!! ゾーヤ師、ターラー師といやあ、王都で絶対に喧嘩しちゃあならねえ、お人だっ!!」

「どうかどうか、この馬鹿どもは我々で締めておきやすんで、どうかどうか、お怒りをお鎮めくださいやし」

「だって、こいつらが、私のヘッダちゃんをっ!!」

「お前は娘を邪魔にして王都外周に棄てただろうがっ!! そんな奴の為に何してやがんだっ」

「死ね糞婆っ!!」


 ヤクザ親父たちは、マルタ夫人と間男をボコボコに殴った。

 ゾーヤとターラーは、それを呆れて見ていた。

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― 新着の感想 ―
うーん・・・ヘッダちゃん何で今頃出てきたの?って思ってたけど、自分を捨てた親に復讐してもらいたいって下心あったのかな?
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