第33話 ガリバタ村到着
コロンカンからドラゴン販売の内金を貰ったので、ゾーヤとターラー師弟は懐が温かかった。
寒い時期でもあり、好晴洋沿いをゆるゆると北上していった。
北西街道は各地に温泉があるので、つないで行くように泊まり歩いていく。
「世界には色んな温泉がありますね」
「同じ街でもちょっと離れただけでお湯が違ったりするのが面白れえな」
温泉で新年を迎え、春花の開花を追いかけるように街道を行く。
ガリバタ村に到着したのは、早春であった。
畑で麦踏みをしていた農民がゾーヤを見つけて駆けよってきた。
「ゾーヤさん、いらっしゃい」
「おう、来たで、みんな変わりはないかい?」
「はい、みな達者で息災ですよ」
ターラーはガリバタ村を見まわした。
実家のあった村に比べると豊かで幸せそうな村だった。
大麦の麦踏みかあ、よくやったなあ。
「これは、私の弟子のターラーだ」
「よろしくお願いします」
「おお、これはこれは、ゾーヤさんにもお弟子さんが出来たかね、そりゃあめでたいなあ」
「えへへ、いや、照れるなあ」
村の道を歩いて行くと、だんだんと村人が増えて行き、村長の家に付く頃には大群になっていた。
師匠は人気があるなあ、とターラーは思った。
「おお、ゾーヤ師、よくいらっしゃった」
「今年も見に来たよ、弟子も出来たしな」
「おお、お弟子さん、『火』属性ですかっ」
「農村にはあんま必要が無い属性だけどよ、まあ、魔物とか倒すなら頼りになんぜ」
「それは良いですな、近隣の村でも魔物に困っている所がありますから、仕事を受けても良いかもしれませんぞ」
「まあ、出来る事はやるからよ」
「お願いしますぞ、今回もアマリエの家にお泊まりなさるか?」
「そうだねえ、アマリエが良かったら寄らせて貰うよ」
「アマリエも喜びますよ、さあ、行きましょう」
村長と一緒に、村の中程にある中くらいの農家に入っていった。
牛の世話をしていた中年の女性がゾーヤを見て立ち上がった。
「まあ、ゾーヤ、ひさしぶりだわ、三年ぶりかしらっ」
「アマリエ、今回も泊めてくれるかい」
「もちろんよ、あら、こちらは?」
「私の弟子さあ、ターラーっていう」
「こんにちは、ターラーです」
「あらあら、お弟子さんなのね、すごいわゾーヤ」
「ほんに照れくさい」
「ゾーヤも丁度今のターラーちゃんくらいの時にメリン師匠と村に現れて、懐かしいわね」
師匠のゆかりの村なんだな、とターラーは思った。
「さあ、ターラーちゃん、自分の家だと思ってくつろいでちょうだいね。村長もありがとう」
「いやいや、じゃあ、俺はこれで」
ゾーヤとターラーはアマリエに案内されて農家に入り、リビングでお茶をご馳走になった。
ターラーの実家の三倍ぐらいの大きさの豪農だったが、干し草の匂いがしてとても居心地が良かった。
毎回ゾーヤが泊まる部屋があるようで、その隣の部屋をターラーは与えられた。
「ほとんど家族みたいですね」
「まあ、ここは長いからなあ」
「師匠にも駆け出しの時代があったんですね」
「そりゃあなあ、私なんざ鉱山の華売り売女の私生児でなあ、野良犬の方がまだ文化的ってえぐらいのもんだったよ、メリン師匠が偉い人でなあ、そんな私を腰を据えて教えてくれて、ちゃんとした魔女って言われるまで育ててくれたんだあ」
魔女として堂々の貫禄のある師匠の少女時代が荒くれ者だったとは想像が出来なかったが、メリン師匠と旅を重ねて変わっていったんだろうな、とターラーは思う。
魔女の師弟って最初は前時代的で封建的なシステムだと思っていたけど、師匠と旅をして自分が色々変わっていくのを感じて、本や口では教えられない事も、師匠の背中を見る事で本能的に解る事もあるんだな、と最近は思っていた。
窓際で、農村の風景を見ながらそんな事を考えていると、部屋のドアが少しだけ開いて、廊下から誰かが覗いているのが見えた。
背格好からすると子供みたいだ。
「どなたかな?」
ドアがギイと開いて、十歳ぐらいの赤毛の女の子がはにかみながら入ってきた。
「オイリー、だよ」
「ターラーよ、よろしくね、オイリー」
「うんっ! よろしく、ターラーお姉ちゃん」
ターラーは微笑んだ。
死んでしまった妹たちを思って胸がうずいた。
「農場の案内をしてあげようかっ」
「うん、お願いね、オイリー」
「わかった、行こう行こう」
オイリーはターラーの手を引いて農場の中を歩き回った。
農家特有の大家族で、三世帯が一つの家に住んでいるようだ。
働いている他の家族に会うと、オイリーが大声で紹介してくれた。
解りやすくて良いね。
麦畑で作業をしている若い男の所へオイリーはターラーを連れていった。
「へえ魔女さんか、属性は『火』かあ、野焼きの時ぐらいしか用事は無いなあ」
「ライモ兄ちゃん、分家の次男、ちょっとキザ!」
「なんだよー、オイリー、その紹介は」
「ターラーねーちゃん、『火』属性、『青』だって」
「『青』、火の最高位じゃんっ」
「魔物狩りとかだと頼りにしていいわよ、近所に魔物はいるの?」
「あんまいねえ、山奥にはいるらしいけどよ」
「そうなんだ-」
「行こう行こう、もっと家族いるから」
「はいはい、じゃあね、ライモさん」
「おう、よろしくな、ターラーさん」
ライモはだいたいターラーと同年代か、ちょっと上っぽい。
仲良くなると楽しそうだ。
ターラーは微笑みを浮かべた。
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