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魔女の道々  作者: 川獺右端
第五章 迷宮島マーヨル
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第30話 グリーンドラゴンの脅威

 巨大な深緑色の竜であった。

 今泊まっている一流旅籠ぐらいの大きさの質量がこちらに向けて、のっしのっしと歩いて来る。


「た、倒せる気がしませんよ……」

「同感だよ、ターラー」


 ターラーは気を失ったヨーナを振り回し、広間の隅にぶん投げておいた。

 隅っこならドラゴンも首を突っ込むのが大変だろう、という判断だ。


 ゾーヤは魔力を練り、詠唱をして大型の『風鎌』を作り飛ばした。

 グリーンドラゴンは一声吠えて前足で『風鎌』を踏み潰した。


『あはははっ、無駄だ無駄だっ! ゾーヤ、お前とグリーンドラゴンは同属性の『風』だ、どんな奥義の魔法だろうと耐性で潰されるだけだっ、諦めて弟子共々迷宮主に喰われなっ!』


 どこからかアレクセイの声が聞こえた。

 奴は監視用の魔導具で広間の様子を見ているらしい。


 グリーンドラゴンはゾーヤに向けて暴風ブレスを放った。

 『風』の耐性があるのはゾーヤも一緒だった。

 彼女は風の障壁を張って暴風ブレスを受け流した。

 ターラーはその隙に『ファイヤーボール』をぶつけるが、竜の強靱な表皮に阻まれて効果は薄い。


「効果が抜けませんっ!」

「いや、だが、『風』よりも『火』の方が通る!」


 ターラーが尻尾の一撃を飛び退いて避ける。

 一発でも入れば骨折して、そのまま喰われる。

 そんな未来を幻視してターラーはぶるっと震えた。


『ぎゃっはっは、無駄だ無駄だ、魔女だからってドラゴンに勝てるかよっ、早く喰われろっ、ぎゃはははっ』


 ターラーはドラゴンがヨーナの方へと行かないのを見てほっとしていた。

 獲物に魔力がある方が食欲をそそられるらしい。


 竜は、そんなには動きは素早く無い。

 それだけが救いだが、ゾーヤには、どうしても勝ち筋が見えない。

 ターラーの火炎魔法なら通るが、何しろでかいうえに鱗の装甲が厚い。

 ゾーヤの風魔法に至っては、全てが無効だ。

 広間を見まわすが、外に出られる出口はなさそうだ。


「まずいね、こいつは」

『ファイガトリング!』


 ドガガガガと細かい火炎魔法が飛ぶが、グリーンドラゴンはうるさそうに羽を振って跳ね返した。

 竜は一歩踏み込んで前足をターラーに向けて振る。

 彼女は飛び退いて爪を避けた。


――圧倒的に、火力が足りない!


 『ファイグレネード』を撃とうにも距離が近すぎる。

 『ロングファイ』で精密に撃ち抜こうにも、どこが急所か解らない。


「なにか、ドラゴンが一発で死ぬ急所とか無いんですか?」

「そんな都合の良い急所があるもんかいっ」


 そりゃまあそうである。


 グリーンドラゴンはターラーに向けて暴風ブレスを放った。

 魔力で風をまとめたブレスで、巻き込まれると吹き飛ばされて壁に激突して、死ぬ。


 前方に火炎噴射をして緊急回避した。

 やばいやばい。

 ターラーは全身に粘い汗をかいた。

 目の前に確実な死がいて、自分の生は幸運が尽きた時に終わる、とターラーは自覚した。


『ぎゃはは、逃げてばかりかっ!! 哀れだなあっ! お前達を喰えば迷宮の寿命は十年延びそうだ、ありがとうな、感謝するから、潔く死んでくれよ、あっはっは……。だれだお前……』

『ヨイヨイヨイ~』

「ギャガ!!」


 ドタバタと荒事を思わせる音が響き、静かになった。

 その間、ゾーヤとターラーはグリーンドラゴンの攻撃から逃げ続けた。


『水晶でゾーヤたち見えるが、ピンチだねえ、ヨイヨイヨーイ』

「そっちは制圧したかい?」

『手下達が全員捕まえたヨーイ、ゾーヤたちはアレクセイの罪を重くするために迷宮主に喰われてもいいな、ヨイヨイヨイ』

「ふざけんなっ」


 急にギャガの声が小さくなった。

 マイクから外れたようだ。


『ヨイホイホイヨ~イヨイヨイヨ』

「何を言ってるのかな?」

「霊と話してる」

「は?」


 ターラーはグリーンドラゴンの尻尾の一撃を飛んで避けながら疑問の声を発した。


「ギャガは『霊』属性の魔女だからな」

「はっ?」


 ゾーヤは風の障壁で剛風ブレスをそらしながら返事をした。


『テワンストレンスヨリホイホイ、霊の人助けてくれるってさ、ヨイヨイヨイ~』

「は?」


 ブワリと小さな赤い玉が空中を舞った。

 緑の玉もある。

 広間中にある魔女達の死骸から出くるようだ。


《助けるよ、あの糞トカゲを焼き尽くしておくれ》

「は、はあ」

《わたいのとっておきの魔法だわさ、もっておいき》

「あ、ありがとうございます、先輩」


 赤い光が沢山下腹部に飛びこんで来て、魔法の術式が脳裏に浮かんだ。

 そして、魔力も無尽蔵に体にあふれ出した。

 ドラゴンの攻撃を避けながらターラーは詠唱して、術式を組み立てる。


――ああ、これは、高度な、とても高度な美しい術式だなあ。


 ゾーヤにも同じ事が起こっているのか、風の障壁が堅くなり、竜巻を何本も起こしグリーンドラゴンを牽制した。


 術式が組み上がる。

 ターラーの目の前には青い炎が固体化したような魔力の塊の大きな青い杭が現れていた。


『ファイバンカー!!』


 真っ青な火炎で出来た杭が高速で回転しながらまっすぐに飛び、ブレスを吐こうとしたグリーンドラゴンの口から頭蓋を撃ち抜き、破裂させた。


 竜の頭蓋を破壊した青い杭はそのまま天井を撃ち抜き、大穴を開けた。

 外気が入って来て、斜めに遠く小さく、青い空が見えた。


「す、すっごい威力ね」

「ちがいない」

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魔女の元気玉! 相手は死ぬ! さ~て、地上に上がったらお死置きだな! 小便を済ませて命乞いと処刑BGMを鳴らす準備をしておくんだぞ~!
ターラーとゾーヤとヨーナが助かってヨイヨイヨイ
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