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魔女の道々  作者: 川獺右端
第五章 迷宮島マーヨル
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第25話 キリリンの酒場で仲間を探す

 マーヨル島到着は夕方だったので宿を取り、宿の食堂で夕ご飯を食べて、お風呂に入った。

 わりと大きな温泉の大浴場が最上階にあり、海とマーヨル港を見ながらのんびりと浸かる事ができる。


「凄いですね、温泉付きですよ」

「まあ、その分高いけどなあ、明日からせっせと稼がねえと」

「あい」


 ターラーはゾーヤの背中を流したりして、ほっこりして温泉を堪能した後に寝た。


 翌日は朝からマーヨル港や繁華街を散歩した後に昼食を取った。


 キリリンの酒場という大きいお店でランチも庶民的な値段であった。

 なんだか、酒場の客はゴツイ男性ばかりで、ターラーはじろじろと無遠慮に見られて少々不快であった。


 金属甲冑を着た若いイケメンがゾーヤとターラーの前に立った。


「失礼します、俺はグリフといって、『未亡人の臥所』という中級パーティの者です、火魔法さんだけを参加してもらうというのは可能ですか」


 なんだなんだとターラーは混乱した。

 ナンパかと思ったけど、パーティ? 

 いや、それよりも『未亡人の臥所』というパーティ名はどうなの?

 なぜ、そんな色っぽい名前が付いたの?


「この子は迷宮始めてでなあ、私と一緒に雇って貰うのが希望だよ。あんたらは、もっと名を売ってから来な」

「そ、そうですか、失礼しました……」


 イケメンはすごすごと自分のテーブルに帰っていった。


「迷宮探索のパーティ勧誘ですか? これ」

「ああ、ここはパーティマッチングの酒場だあな、魔女が欲しいパーティはああやって申し込むんだぜ」


 ああ、なるほど、中級パーティだから、初心者っぽい私を雇おうとして声を掛けてきたのか。


「『六枚刃のゾーヤ』の事を知らねえパーティには用はねえのよ」


 酒場の男衆がどよめいた。


「ゾーヤ師かよ」

「二年ぶりか、凄腕だぜ、しかも火の弟子付きか」


 カランカランとドアベルを鳴らして、貫禄のあるパーティが入って来た。


「うおお、ゾーヤ師じゃねえか、空いてるのか?」

「昨日来た所だ、空いてはいるが……、あんた魔女雇ってるだろ」

「あ、ああ、おい、お前ら二人はパーティから出てけ、俺達はゾーヤ師とお弟子さんを雇うんだからよっ」

「えー酷い~」

「そんなの契約反故で駄目だよ」

「うるせえうるせえっ!! せっかくのゾーヤ師だぞ、『六枚刃』だぞ、おまえら『三枚刃』と『鋼』の出る幕じゃあねえよっ!」


 『鋼』というと、あのお下げの子は『土』属性なんだな、とターラーは思った。


「おい、契約してんなら駄目だ、お前のパーティには入らねえ」

「ええっ、そんな、頼むよ、二年前もゾーヤ師を雇いたくて雇いたくて、パーティの格が足りなくてよお、時間掛けてようやく上流のケツまで来たんだよ、お願いだよ、入ってくれよう」

「うるせえ、魔女を大事にしねえパーティには入らねえ」

「くそうくそう」


 おっちゃんは悔しそうに酒場の奧に歩いていった。


「人気ですねえ」

「まあなあ」


 さすがは師匠だなあと、なんだかターラーは誇らしくなった。


 煌びやかな甲冑を身にまとった、いかにも上流というパーティがキリリンの酒場に入ってきた。


「おお、ゾーヤ師、マーヨル迷宮にようこそ、まだ参加なされるパーティは決まっておられませんか」

「ああ『山裾の黄金』よ、まだ参加するパーティは決まってねえよ」

「それは望外の幸運! ゾーヤ師、是非とも我がパーティに参加なさってくださいませ」

「こっちは私と、弟子のターラーと二人だけど良いか?」

「お弟子さん……、え? 『付け火のターラー』さんですか、まさか?」

「あい、そうですよ」

「……!! これは凄い、百五十年ぶりの『青』の火魔女さま!! 是非ともご一緒させてくださいっ」


 『山裾の黄金』のリーダーは、なんだか身なりが良い上に、口調にも教養があって、なかなかのイケメンであった。


「今回はここにすっか? ターラー」

「そ、そうですね、よろしくお願いします」

「私は『山裾の黄金』のリーダー、チャプランと申します。よろしくお願いしますね」


 なんだかチャプランは貴族っぽい仕草もあって、元は良い所の生まれなんだろうな、とターラーは推測した。


 『山裾の黄金』のメンバーがテーブルに付いて、ゾーヤと詳しい条件を話始めた。

 ターラーはランチを食べながらそれを見ていた。


 リーダーのチャプランが『戦士』、あともう一人のがっちりした戦士と、小男の盗賊がいた。


「神殿の聖女さんとかは雇わないんですか?」


 ターラーが聞くと、男たちはどっと笑った。


「神殿の聖女たちは迷宮とか来ないので」

「居たら回復で便利だろうけどなあ」

「基本的にポーションなんかの傷薬で回復してるんだぜ」


 それは大変だなあ。

 ポーションには戦場で何回かお世話になったけど、聖女の回復魔法とは違って速効性は無い、治すにはしばらく安静にしていなければならないのだ。

 まあ、傷をほっといての自然治癒に比べればとんでもなく快復が早いけどなあ、とターラーは思った。


「それでは、午後から少し潜りますか」

「ああ、そうだね、迷宮の雰囲気をつかまねえとね」

「では、ご一緒しましょう。いやあ、楽しみですね」


 ターラーに向けて盗賊がバチコンとウインクをしてきた。

 異性とあまり付き合った事の無いターラーはどう反応するか解らないので、ぐいっとエールのジョッキを傾けた。

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― 新着の感想 ―
ターラーちゃんいよいよ初ダンジョン挑戦だね。ここでの体験で迷宮探索が好きになるかどうか印象が決まりそう。将来に影響大だし上手くいくといいね。
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