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魔女の道々  作者: 川獺右端
第四章 王都のガラス工房
24/95

第24話 王都出発、南へ

「もう行ってしまうのか、ターラー師、できれば常駐でずっとここに居て欲しいのだけど」

「いやあ、旅をするのが道々の魔女なんで」

「給料ももっと上げるし、アパートメントも支給してもいいよ」

「良いお話ですけれど、また来年に来ますよ」


 若旦那トーマスは惜しい惜しいと言いながらターラーにこれまでの給料を渡した。

 契約していたお給金よりも大分金貨の数が多いようだ。


「色々とお世話になったし、ボーナスを付けておいたよ。ハンナ師もサリー師もあなたがいなければ成長しなかったろうし。是非また来年来て欲しい」

「あい、また来ますよ」


 ターラーはにっこり笑って工房の事務所を後にした。

 外では、ハンナとサリー、そしてセンター班の魔女達が待っていた。


「いっちゃうのね、寂しくなるわ」

「また来年、きっと来てね」

「うん、ありがとう、また必ず来るわよ。今度は魔導炉の最高温度更新に挑みましょうよ」

「そうね、ありがとう、ターラー」


 サリーは涙ぐんでいた。

 ハンナはふんわりと微笑んで、花束をターラーに渡した。

 センター班の魔女達が笑顔で拍手をした。


 ボストン親方や、バリー親方、板ガラス工房の親方などもターラーを見送ってくれた。


「また来年な、まってるからよ」

「ガラス細工の腕を磨いているから、また来てくれよ」

「はい、また来年来ますよ、親方たち」


 ターラーは工房の敷地から出て、ゾーヤと合流して王都の南門を目指して歩いた。

 何度も何度もふり返り、ガラス工房『ガンドール』の姿を目に焼き付けるようにして見た。

 凄く良い工場だった。

 良いお友達も沢山出来て、楽しかったなあ。

 と、ターラーは思った。

 胸に小さな空洞ができたように少し寂しい。


「なあに、また来年来ればええさ」

「そうですね、師匠」


 二人は王都大手門の軍用のゲートから外に出て、南に向かって歩き始めた。

 なんだか旅も久しぶりで、ターラーは忘れていた何かを思い出すような気がした。


 王都の南街道を一日行って、宿場街でテント泊をして、次の日から、ゴロント川を川舟で下る。

 川舟は馬よりも速いし、座っていられるので快適だった。

 船は山々の間を抜けて行き、早瀬や小滝を乗り越していく。

 船からの景色はとても綺麗でターラーは満足した。


 川宿場のラリンで一泊し、その後は徒歩で街道を延々と歩く。

 秋がどんどん深まっていき外気温は下がるが、南下することで温度の低下は和らいでいく。


 色々な山、色々な瀬や湖、沢山の綺麗な場所を見てターラーは感動していた。

 綺麗な景色は沢山あるんだなあと、嘆息したものである。


 街道を行き、次は大河リンツ河を客船で下る。

 レストランもある大型船で個室を借りて三日の旅だった。

 ちょっとターラーは船酔いで参ってしまったが、それでも船は速い、好晴洋を望む河口の港街テーメスに着いた。


「うわあ、これが海ですかー、変な匂い~~」

「おう、海はこんな感じだ、目指すのは迷宮島マーヨルだ、明日渡し船で渡るぜ」

「海船ですか、楽しみです」

「今日は海産物でも食べて、宿に泊まって休むべい」


 ゾーヤとターラーは港街で豪華な海鮮料理をたらふく食べ、エールを飲んで寝た。

 宿の清潔なベッドで、ずっと波の打ち寄せる音を聞きながら眠りについた。


 翌日、大きな海船に乗り好晴洋を渡って二日、迷宮島マーヨルに着いた。

 甲板から見る迷宮島はゴツゴツした青い島だった。

 意外と港街は発展していた。


「マーヨル迷宮は三十年前に発見されて、大分探索が進んだ迷宮だ。結構深くまで潜るが、その分獲れるお宝も大きいよ」

「ふわー、迷宮なんて始めてですよ、ずっとあるものじゃないんですね」

「ああ、迷宮には寿命があってな、底まで探し尽くされたら死ぬ。どこかでまた新しい迷宮が生まれる。大体の寿命は百年ぐらいと言われてるな」

「良いですね、なんだかワクワクします。ロマンですね」

「まあなあ、だがまあ、儲かるかどうかは博打みたいな所があんな、面白れえけど、儲からねえ時は儲からねえから覚悟はしとくんだよ」

「あい」


 海船は港に接岸した。

 降りる客はみなゴロツキのような荒くれ者ばかりだった。

 街の治安も悪そうだ。


「泊まりはテント泊ですか?」

「いや、上流の宿屋に泊まるよ」

「お金が掛かるんじゃないですか?」

「ああ、でも、テント泊とか安宿とかだと、かならずゴロツキと揉めたりすっからね。上流の宿の方が結局は安かったりすんのよ」

「ほえー、治安が悪いんですねえ」

「迷宮の街だからな」


 そう言ってゾーヤは上級の小綺麗な宿で三ヶ月の前金を払って二人部屋を借りた。

 わりと良さそうな部屋であった。


「でも、アパートメントとか借りたら良いんじゃないんですか?」

「ああ、駄目駄目、アパートメントなんざ、盗賊が毎日くるぜ」

「げ」

「ある程度、良い宿じゃねえとな」


 これはある程度荒稼ぎしないと、赤字になる職場という事だなあ。

 と、ターラーは理解した。

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― 新着の感想 ―
客層から治安が決まるよね
アパートに泥棒くるんだw それじゃ冒険者もそうそう借りられんね。パーティじゃなくてクラン位の人数抱えてないと財産を守れそうもない。
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