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イヴの子供たち:オリジン  作者: 神海みなも
第1章 小さな侵入者
16/21

16 ドラゴンとの戦い

 闘技場内にはドラゴンの笑い声が響いていた。ドラゴンはヒゲを撫でながら「ふむ、そうだな……」と言って一瞬何かを考えた素振りを見せるとどこかへ飛び去る。そしてしばらくすると何かを口に咥え戻ってきた。ドラゴンはその咥えたものを私達の前に吐き捨てると顎でクイッと指す。


 私の魔導具であるダガーナイフと、ルドルフの帯剣・『シックザール』が眼の前の地面に突き刺さった。シックザールはその重さのためか剣を入れた鞘は地面にぶつかった衝撃で薪割りの薪のように真っ二つに割れ抜き身のまま刺さる。


「ほら、これで魔法が使えるだろう? オレはフェアじゃねぇことは好きじゃねぇんだ」


「はっ、よく言うぜ。自分が勝てる勝負しかしないのはどこのどいつだよ、ったく」


「ふん、オレを卑怯呼ばわりか? 計算高いと言ってほしいね。オレはオレなりに努力してんだよ」


「どっちも一緒でしょ? そういうのを弱いものいじめっていうのよ」


「どうとでも言え」

 

 私とルドルフは地面に刺さった魔導具をお互いに引き抜くとそれぞれ武器を構えた。私は顎の横に、ルドルフは両手で下段に構える。間近で見るとドラゴンのあまりの大きさに私は息を呑んだ。


 分厚い鱗が太陽の光に照らされ鈍い光を放っている。こんなのどうやって倒せばいいのよ。私が右往左往していると、ルドルフが私だけに聞こえるくらいの声でささやいた。


「……ここに白蛇・フロイントの毒が入った小瓶がある。見つからないように隠し持っていたんだ。牢屋の中にいるときあの万屋ディルクに貰ったんだよ」


「あいつ、いつの間にそんなものを。ん? ちょっと待って、じゃあ私たちがドラゴンと戦うことを知ってたってことじゃない! ほんと、何なのアイツ」


「ここで言い争っててもどうしようもないだろ。ほら、これをダガーに塗ってあのドラゴンを刺してくれ。俺がおとりになる」


 ルドルフはそういうと小瓶を私の方に投げてきた。慌てて落としそうになるのをギリギリ受け取る。するとルドルフは私の返事を待たずに『舞空陣(ぶくうじん)』を発動させるとおもむろに駆けだした。


 ハンスのおかげか傷も治り背中の魔法陣も復活していた。ルドルフが駆けだすのと同時にドラゴンがブレスを吐きながら彼を追いかけていく。ルドルフが瞬間移動しながら走るためドラゴンも軌道を予測しながらブレスを吐いて周る。そのたびに観客席では歓声が上がっていた。


「え? ちょっと! どこをどう攻撃すればいいのよ。私、ドラゴンと戦うの初めてなんですけど!」


 私の上げた声も虚しく色んな音に掻き消されてルドルフには聞こえない。いや、聞く気なんて更々ないんだ。あー、もう。自分勝手なんだから。


 私は自分のダガーに小瓶を叩き割ると、二人のあとを追いかけた。失敗は許されない、チャンスは一度だけだ。私は走りながらドラゴンについて一生懸命思い出そうとしていた。


 以前一時ドラゴンについての書物を読み漁っていた時期があった。動機もただリアが古い神話や伝承、そして辺境の村の民話について話してくれたことがあって少し興味が湧いたためだ。そして近くの本棚でたまたま手に取ったのがドラゴン関係の書物だったのだ。


 ドラゴンの起源は大蛇やトカゲ、ワニなどの爬虫類が魔力の影響によって今の姿になった説や、悪魔が変身した姿などといろいろ言われている。形も様々で翼のないモノや海に住んでいる哺乳類のような生き物でもあった説もあるそうだ。


 さらにドラゴンには寿命がなく死なないらしい。その血を浴びれば不老不死になれるような逸話だってある。もしそれが本当ならハンスが自分の寿命を二十年も分け与えたのも納得できる。だって二十年分の寿命なんか私達人間にとって蚊に血を吸われる程度しかないんだから。


 そう考えると一気に私は血の気が引いた。そんな無敵の相手にどうやって勝てばいいのよ。


 しかし幸か不幸かドラゴンには共通した弱点があるようだ。ドラゴンにはたくさんの鱗に覆われているが、ちょうど顎の下喉のあたりに一枚だけ逆さに生えているところがあるらしい。


 そこだけ脆くなっており、剣を突きつければ鱗は剥がれそこから柔らかい肉にナイフをねじ込ませられる。つまりそこがアイツの弱点というわけだ。もちろんハンスは何かしらの対策を行っているだろうが今はそれしか方法がない。

 

 ドラゴンはルドルフを追うのに夢中で、すぐ後ろで武器を構えている私には気づいていない。私は出来るだけドラゴンに近づき、『逆鱗』を探す。

 

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