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第一話:一緒に帰らない?

「ねえ、かける君。その……よかったら、一緒に帰らない?」


 ……は?

 いや。ちょ、ちょっと待て。

 流石に()()()()()()()()それはおかしいだろ!?


 校門前で俺の目の前に立つ、落ち着いた長い紺色の髪をした、ブレザー姿の優しそうな美少女。

 彼女は何処か恥ずかしげに、上目遣いにちらちらとこっちを見てくるけど……。

 予想だにしなかった、非現実的な光景を見ながら、俺は内心思わずそうツッコミを入れていた。


 ──今日はこの夢乃高校ゆめのこうこうの入学式であり、高校一年になって初の登校日。

 そんな初日の下校の時間。

 目の前に立つ清宮きよみや綾乃あやのは、俺の帰宅の誘いに対し、少し困った顔でこう口にする()()だった。


  ──「あの……みんなにからかわれちゃうの、恥ずかしいから。ごめんね」


 って。


 ()()()()()なら、こっちから声を掛け、誘いの言葉を断られるはず。

 だから俺も確認を兼ねて、敢えて声は掛けた。掛けたけどさ。

 彼女が素っ気なく塩対応してそれで終わると()()()()()()からこそ、俺は平然を装えてたんだぞ!?


 それがどういう事だよ!?


「よ、よう。久しぶり」


 とりあえずと思ってした、たどたどしい挨拶に振り返り、そこにいたのが俺だって気づいた瞬間、嬉しそうな顔をしてきた綾乃に、完全に虚を突かれた。


 面と向かって見ると、ここまで魅力的に感じるのかってくらい、彼女の笑顔が持つ破壊力がヤバすぎで、さっきからずっと心臓がバクバクいいっぱなし。


「お、同じ高校だったんだな」


 動揺を必死に抑えながらも、何とか自然に返したつもりが。


「う、うん。良かった。翔君が同じ学校で」


 彼女はまたも想定外の反応を見せ、こっちの顔を赤くさせるのに十分な、破壊力のあるはにかみ顔を見せてきた。

 しかも挙句の果てに、さっきのお誘いの台詞まで掛けられたせいで、俺は内心パニくりまくりだ。


 だってそうだろ。

 この世に生を受け、今年で()()()()()

 生まれてこのかた、彼女なんていた事もなんてないし。学生時代だって目立たない奴だったから、学園生活で必要な日常会話は交わせども、女子とのプライベートな会話なんてほとんど経験していない。


 そんな男がこんな、ザ・ヒロインと言ってもいい、完全無欠の美少女相手に、まともに接するなんて無理に決まってるだろ!?


 今までリアルでも、片思いくらいはした事がある。だけど、結局その時だって、殆ど遠間から相手を眺めて、それで終わりだったんだ。

 それが、幾ら夢みたいなこの世界とはいえ、こんなありえない展開に簡単に適応できるはずないって!


 狼狽うろたえまくりの俺は、本当なら喜ばしいはずのこの状況の中、正直困り果てていた。

 だけど同時に、この世界を()()()()()からこそ、俺は強くこう思ったんだ。

 

 この()()()、フラグがおかしくなってるんじゃないかって。

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