第77話 俺のレンジ
外から聞こえる音と声から状況を探ることはとっくに諦めた。眠っているのか起きているのか、夢か現実かもわからない朧な意識を追いかけていた時に、重い鉄の扉が開く音で感覚が目覚めた。
横になっていた筵から体を起こすと、鉄の扉を肩で押し開けてレッドがあらわれた。
「待たせたな」
快活な声を響かせて牢に足を踏み入れると、ブーツの足音、長いサーベルを吊るした腰の金具の音が鳴った。
「俺のせいで捕まった、許せよ」
明かり取りの穴から差し込む光に彼の上半身が照らされる。
レンジは「誰と一緒にいたって俺の勝手だ」と言って、強張った体をほぐしながら立ち上がった。
「レヴィアタン・ジギラニラゾって、レッドか」
「言ってなかったっけ?」
しばらく見つめて微笑み合うと、レッドはレンジを抱きしめてその背中を叩いた。
「俺の正体を知っても変わらない、おまえはやっぱり俺のレンジだよ」
レッドはアレクサンドリアの頃よりも少し痩せていた。指先が酒毒に震えて、宝具の鍵穴に鍵を差し込むのに手間取った。
「体調悪そうだね」
「おまえもな」
レンジはその震える指を見ているともの悲しくなってきて、手を添えて手伝った。レッドは恥ずかしげな表情を浮かべて小さく言葉にならない詫び言を唇にのせた。
宝具を鍵ごと放り捨てると「出るぞ」と踵を返す。鉄の扉の外に待機していた獄卒から、レンジは持ち物の太刀と巾着袋を受け取ってレッドに続いた。




