表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンナカムイの翼  作者: ななじぬぅす
第5章 アレクサンドリア
36/91

第36話 ゾーイは人に拒絶されたり悪意を向けられた経験がない

 焼き鳥を食べ尽くした後に、二人は日当たりが良くてあまり人が通らない校舎の裏に足を運んだ。ほんの狭い区画にゾーイが作ったささやかな菜園がある。ハーブをはじめとした何種類かの作物が植えられている。二人でしゃがみこんで間引きをしたり畝の手入れをした。枝豆と唐辛子が実ってきている。


 ゾーイは教室で浮いているのかもしれない、衣装が浮いているのは最初からにしても。


「微妙な空気だったな」


「最初は仲良くしてくれたのに、急に口聞いてくれなくなったり……どうしてかな」


 教室の空気に戸惑っているゾーイだった。レンジにはなんとなく様子の想像がついた。


 ゾーイは人に拒絶されたり悪意を向けられた経験がない。群れの序列を争って悪意に悪意を返すような下々の人間関係には戸惑うばかりだろう。人が集まればどこも同じか。レンジは現世の教室の人間関係を思い出してうんざりする。


 立ち上がって伸びをしてゆっくりと息を吐いた。澄んだ空気に木漏れ日が射して鳥の声が心地いい。現世では鳥の鳴き声に気がつかなかった、どこでも鳴いていたはずなのに。


「ゾーイ、髪の毛が地面についちゃうよ」


 鬣のように広がる薄桃色の長髪の先が、葉っぱの先に触れている。レンジは正面から腰をかがめてゾーイの髪に触れて軽く持ちあげる。絹のような手触りの髪はさらさと手のひらを滑って無限に光彩を変化させた。


 ゾーイは、長いと乾かしたりするのも大変なんだけど、と言いながら立ち上がる。レンジに髪の毛を触らせたまま、

「短くしたらね、ハリネズミみたいになるの」と言って笑った。


 目も口も大きい派手顔のゾーイが笑うと、豊かな胸と一緒にキラキラ光るアクセサリーも一斉に揺れて、周りの空気が一緒に躍動するように明るくなる。特別なエネルギーが発生しているように感じる。


 ゾーイが周りのみんなに本当に愛されて育ったことがレンジにもわかる。この娘を通して、この娘を愛した、たくさんの家族と友人の愛情が溢れて伝わってくる。レンジは切なく想う、ゾーイみたいになりたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ