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カンナカムイの翼  作者: ななじぬぅす
第4章 ゾーイ・ンゴロンゴロ
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第17話 襲撃

 いつも一番たくさん食べて、一番多く飲むのはチンチラだった。食べた後にすぐに眠くなって一番初めに眠るのも、翌朝最後まで寝ているのもチンチラだった。警戒心のない家猫みたいだと思っていたのに、最初に異変に気がついたのはやはりチンチラだった。


 不意にむくりと起き上がると、抱えて寝ていたジェンベを放り投げた。焚き火を飛び越えて荒野の暗闇に目を凝らす。腰を下げながらゆっくりと抜刀する。今日の武器は三日月刀だった。


「弓矢!」


 叫ぶと同時に剣を振るう。折られた矢が弾けて周囲に落ちる。


 続けて空気を裂く鋭い音が走って第二陣の矢が射かけられた。人足の喉に矢が突き立って血の飛沫があがる。獣よけの篝火が倒されて、切迫した複数の足音が迫る。


 護衛の人足が声をあげた。「襲撃だ! 向こうからは見えてる! 体を低くして馬車の下に隠れろ! 固まるな、的になるぞ!」


 一斉にみんなが動き出す。


「レンジ、焚き火から離れろ! 影に入れ!」


 ギンが鋭く叫んでチンチラの加勢に走る。じゅっと音がして焚き火が消される。


 火を見ていたから夜目が効かない。レンジは焦りながら手探りで馬車の方へ走る。


 雑多ないでたちの夜盗は、武装して顔をマスクや布で覆って隠している。焚き火が消えてもわずかな篝火と月明かりで辛うじて識別できた。騎馬もいる。


 襲撃は見境なく容赦ない。全員殺して荷を奪う気のようだ。背後からも剣戟の音があがる。レンジは恐怖と怒りが湧いてくる。人足たちの多くは悲鳴をあげて逃げ回っている。護衛担当は奮闘してくれているが、不意を突かれて劣勢だ。


 敵から武器を奪ったのか、チンチラが二刀流で踊るように戦っている。一人で数人を相手にしているが、危なげはない。ほとんど一太刀で斬って捨てていく。背後にも目があるのか、ものすごい感覚の冴と腕前。あんなにお酒呑んで熟睡していたのに、あの娘はやっぱりすごい!


 馬を斬って馬車に火を放とうとしている一団がいる。ギンが突っ込んでいってたちまち乱戦になる。


 あの二人は無双かもしれないが野盗の数が多い。制圧されるのは時間の問題に思えた。


 馬車までは距離がある。レンジが周囲の様子を伺って走りだしたとき、偃月刀を振りかざした騎馬が駆けてきた。横に逃げようとすると進路を変えて真っ直ぐに駆けてくる。狙われている。月を背後にして、その鋭利な刃がレンジに迫るのがくっきりと見える。斬り殺される予感にレンジは体が固まって動けなくなった。「レンジ!」と叫ぶギンの声が遠くに聞こえた。


 瞬間、右の視界の外からものすごい勢いで細い物体が飛んできて、偃月刀を振りかぶって開いた野盗の胴を貫通した。突き出した槍を茎にして鮮血が黒い花を咲かせた。槍の勢いに釣られてそのまま左に倒れ込んで落馬する。入れ替わるように、巨大な猫科の獣に乗って大剣を構える女性のシルエットが月に重なった。


 レンジのすぐ横を主を失った馬が駆け抜けていく。すべてがとてつもなく大きくて丸い月を背景にした、くっきりとした影絵のように映った。鬣のような長い髪が広がりながらなびいて、レンジを見る光る大きな目だけが赤い。


 戦闘に別の気配、別の声が混じり始めている。ギンがレンジの前に駆けつけた。腰を落として状況を把握しようと周囲に目を配る。


 いつのまにか、どこから現れたのか、派手な衣装で獣に乗った戦士たちの集団と野盗の戦闘が続いていた。暗闇の中からでも、その戦闘は一方的に見える。猫化に見える獣に乗った戦士たちのあとから、同じ系統の衣装に身を包んだ騎馬の戦士たちがさらに野盗たちを切り払っていく。圧倒的な戦闘力で野盗は制圧されて、一人も容赦されなかった。


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