エピローグ (寝取られ)女達の救世主~政志(亮)
追加!
結構エグめ。
政兄のアパートを出た私は史佳と池尻美由紀を連れ、駅前のカラオケボックスに入った。
二人には聞きたい事が山程ある、
史佳は三年前に兄さんを諦め、根戸と付き合いだした。
そして池尻美由紀も、兄さんが大学で地元を離れる際、遠距離恋愛は無理と言って彼女の方から別れたのだ。
それなのに、どうして今更二人は兄さんのアパートへ来たの?
兄さんから直接聞きたかったけど、それは止めた。
やっと兄さんと繋がる事が出来たのに、また無視されたりしたら、今度こそ死ぬ。
心だけではなく身体も、間違いなく。
「紗央莉、説明してくれる?」
案内された部屋に入るなり、史佳は切り出してきた。
「それはこっちのセリフよ、なんで史佳と池尻さんが兄さんのアパートを知ってるの?」
『もう政志に興味無いの』
最後に会った時、史佳はそう言って根戸に媚びていたではないか。
美由紀も根戸のセフレになったと噂で聞いたし。
私の両親から聞いた可能性もある。
でも史佳と美由紀は化粧も派手になり、ピアスも耳から鼻まで開け、近所から浮いた人間になっていたから教える筈ない。
でも今は二人にピアス等見当たらない、すっかり昔に戻っていた。
「根戸から聞いたの」
「根戸から?」
「私もよ」
根戸がなんで兄さんの住所を知ってるんだ?
「調べたらしいわ、政志の知り合いからね」
「...ふーん」
根戸龍太は兄さんと同じ高校だった。
私が狂っていた時、奴に洗脳されて処女をあげてしまった、今となっては死にたい位後悔の記憶だ。
そう言えば、奴からピアスを開ける様に言われたな。
『俺の女だって印だ』
そんな事を言われたっけ。
お母さんから止められてなければ、開けていたかもしれない。
「二人ともピアス止めたんだ」
「当然」
「もちろんよ、大きな孔は病院で塞いで貰ったわ」
「そう...」
そういえば史佳は顔にもピアスをしていたな。
「大変だったわ、身体中にも開けてたからね」
「はあ?」
聞いてもないのに、身体中って。
「乳首でしょ、後は臍とアソコにも」
「...なんとまあ」
よく恥ずかしげもなく言えるな。
「私は耳と乳首だけ」
「バカ!!」
美由紀まで、本当に救い様の無い人達。
「兄さんがその事を知ったら軽蔑するわ」
そんな過去を隠して兄さんと復縁しようなんて、信じられない。
「政志は知ってるよ」
「ええ、見せたから」
「...まさか」
そんなバカな?
兄さんにそんな趣味があったの?
いや、それより知ってる事は...
「...裸を見せたの?」
「そりゃ見せなきゃ分からないでしょ?」
「当たり前じゃない」
「嘘...」
つまり二人の裸を兄さんは...いや、
まさかセックスしたの?
「政志に全て塗り替えられた...」
「史佳、塗り替えられたじゃないわ、一から政志の物に生まれ変わったのよ」
「そうね、その通りよ」
「...なんて事を」
そんなバカな事があるもんか!
兄さんは何を考えてるの、こんな奴等を抱くなんて!
「何ショック受けてるの」
「そうよ、紗央莉だって処女じゃあるまいし」
「...う」
史佳達の言葉が突き刺さる。
確かに私は根戸とセックスをしてしまった。
愕然とした兄さんの姿に、己がしてきた愚かさを知り直ぐ根戸と別れた。
プライドを傷つけられた根戸は、周囲の人間に私を抱いた事を吹聴して、それは家族にまで知られてしまった。
母から叱られ、義父は呆れ、姉から激しく詰られてしまった。
その事で家族と私の間に大きな溝が出来てしまい、未だに和解出来ないままなのだ。
「そ...そうだけど、一回だけよ」
「回数の問題じゃないわ」
「そうよ」
「うぐ...」
苦し紛れな言葉は即座に一蹴された。
「確かに私達は根戸の性奴隷だった。
政志への愛を裏切ってね」
「そうよ...貴女達は」
「でも私は付き合っていた訳じゃない。
政志からすれば、単なる幼なじみの女だった」
「私も根戸と関係を持ってしまったのは、政志と別れてからよ」
「...それなら私だって」
私だって兄さんと付き合っていた訳じゃない、二人と同じじゃないか!
「紗央莉は政志の好意に気づいていたはずよ」
「それなのに、馬鹿とのセックスを政志に見せるなんて正気の沙汰じゃないわ」
「...アァァ」
史佳と美由紀から、容赦ない言葉が投げつけられる。
その通りなのだ。
兄さんから距離を置かれ、恋人を作られた悔しさから私は堕ちてしまった。
どうして兄さんを取り返さなかったのか?
兄さんが私を嫌っていた訳じゃない事くらい、分かっていたのに...
「兄さん...兄ちゃん」
激しい後悔に涙が止まらない。
こんな救い様の無い女なのに、兄さんは助けてくれた...
「紗央莉」
「...史佳」
史佳が私の肩をそっと掴む。
もうこれまで...私は身を引くしかない。
「またやり直せば良い」
「そうよ」
なぜそんな事を言うの?
「出来る訳無いじゃない」
「さっきも言ったでしょ?
私達は生まれ変わったの」
「そうよ、死にたい程の絶望に居た私達は政志から愛されて」
「兄さんから...愛されて...」
兄さんとのセックスに一体何があったんだ?
「そう、あれが本当のセックス。
それまでのは単なる子供の児戯...
いいえ、それにも値しないわ」
「全くよ、糞野郎とした記憶なんか思い出したくもない」
うっとり話す二人に言葉が出ない。
兄さんとのセックスはそんなに...
「...本当に生まれ変われるの?」
「間違いないわ」
「本当の愛を知ればね、あれが政志の気持ち、実力なのよ」
「兄さんの気持ち...」
「ええ、あの時見せた野生的な政志の瞳。
言葉は無かったけど。私を救おうとする気持ちは本物だった」
二人は力強く頷いた。
そういう事なのか。
兄さんは昔から困っている人を見捨てられない性格だった。
それなら私だって!
「兄さんは私も幸せにしてくれるかな?」
「頑張りなさい」
「でも一人締めは駄目だからね」
「うん...」
私達は固い握手を交わす。
こうして兄さんを巡っての戦いは再び火蓋が切られたのだった。
「でも紗央莉に政志の相手が務まるかしら?」
「そうね、政志は凄いタフよ」
上気した顔で二人は言う。
でも負けない、何があってもね。
兄さん、愛してる...
女達の旅も続く...