到着
本来の予定より一日遅れて、ようやくアルデガニ国に到着した。
王宮に着くと、大勢の騎士と共にカルロが出迎えてくれた。
その光景にダンテとマウロ、それにカナリヤまでがビビってる。
「ようこそいらっしゃいました。長旅疲れたことでしょう。私の離宮を用意しておきましたので、滞在中はそちらをお使いください」
「お気遣い、ありがとうございます」
一礼し、案内役の騎士の後を着いてく。
ダンテとマウロはずっとキョロキョロしっぱなしだ。
王宮なんて、ゴロツキが入れる所ではないからな。
当然、こうなることは予想していた。
「こちらがカルロ様の離宮になります」
通された場所には、薔薇が咲き乱れた庭に真っ白な宮殿が立っていた。
「わぁ~、素敵……」
カナリヤがキラキラした目で辺りを見渡してる。
こういうの、女ウケがいいんだろうな。
ま、私は花より団子派なんでな。
騎士から侍女長に案内役が交代し、やっと部屋に到着した。
そして部屋に入った所で、ソファにダイブ!
「はぁぁ疲れた!!」
「ミレーナ様!はしたないですよ!」
早速、サラが小言を言い出したがそんなもの無視だ。
ダンテとマウロはどうしていいのか分からず、扉の前で仁王立ちしている。
「ほら、ダンテにマウロ。お前らも座りな」
「こんな上等なもんに、俺らみたいなもんが座っていいのか?」
「いいんだよ。ほら、座りな」
「おお!!すっげぇ!!」
ビクビクしながらも座ると、その柔らかさに感激していた。
まったく、やかましい奴らだねぇ。
さて、これからだ。
原作の通りなら、カルロは夜会を開くだろう。
そしてカナリヤとのダンスを楽しんだ後、バルコニーにカナリヤを連れて行きプロポーズをする。
はずなんだが……。
コンコン
「はい」
「失礼致します。私、カルロ様の執事を務めておりますジーノ・カノッサと申します。以後お見知り置きを」
訪れてきたのは、カルロの執事らしい。中年のモノクルをかけた男性。
この手の人間はモノクルが良く似合うんだよねぇ。
「明日、皆様の歓迎を兼ねた夜会をカルロ様主催で行われます。是非ご参加くださいませ」
やっぱりか……。
わかってはいたけど、いざその通りになるとやっぱ不安になるね。
「ミレーナ様!夜会ですって!楽しみですねぇ」
「おいおい、俺らは無理だぞ!」
ウキウキしているカナリヤ、かたや拒否反応を示すダンテとマウロ。
──さて、どんな夜会になるのかねぇ。
「ミレーナ様!俺の事忘れてません!?」
窓からひょこっとエリオが現れた。
あっ……。忘れてた。
「……そんな事ないよ。ご苦労だったね」
「今の間!絶対忘れてたでしょ!?」
肩にポンッと手を置き、労いの言葉をかけるがエリオは不貞腐れている。
「……あんた、最近態度が最初の時とはえらい違わないかい?」
「最初はミレーナ様をよく知りませんでしたから、多少猫被りますよ。ミレーナ様って人を分かったら猫被ってるのが、馬鹿らしくなりましたからね」
「軽く失礼なこと言ってるよね?」
「褒めてるんですよ」
ま、いい。猫被られてちゃ信用されてないのも一緒だ。
ってことは、ちょっとは信用してくれてる証拠かね。
「それはそうと、この王宮内ちょっとヤバいですよ」
「なに?」
「どうやら、今第一王子と第二王子の権力争いが正念場を迎えてたらしいんですが、第一王子派の幹部が次々に第三王子派に乗り換えてるらしいんです」
ん?カルロは王位継承権を破棄しているはずだが?
カルロは元々王位などに興味がなかったはず。
「それで決まりそうだった王位がまた、一から決め直しになったんですが、今度は第二王子派の幹部が不審な死を遂げ始めたんです」
は?今度は第二王子の幹部!?
「で、第一王子と第二王子は第三王子のカルロ様が企てた事だといい始めたところに、ミレーナ様の訪問です」
「は?なんで私が出てくる!?」
「ミレーナ様のお父様は優秀な宰相ですよね?そこですよ。カルロ様を上手く口車に乗せて、王妃になり上がろうとしている女……全ての黒幕はミレーナ様だと……」
──なんだって!?