黒幕の末路
「ミレーナ!!」
「アレン様、この度は色々とご迷惑おかけしました」
切り株に腰掛けている私の元にアレンがやって来た。
今の姿はとてもじゃないが、令嬢には見えない。
スカートは膝上まで破られ、顔や足には銃弾を受けた時の傷、そして返り血で真っ赤に染まった服。
そんな私に、アレンが上着を脱いで膝元に置いた。
素足を見せるなんて、無作法だったか。
「こんな格好で申し訳ありません。足腰が立たなくて」
「そんな事はどうでもいい!!」
怒鳴ると同時に抱きしめてきた。
「本当によかった。ミレーナが無事で……」
抱きしめてきた手が震えている。
心配かけちまったね。
もう大丈夫だ。私は生きているから……。
アレンを抱きしめ、頭を撫でた。
私の温もりが届くように……。
※
あの後、足腰立たない私は兄様にお姫様抱っこされ、屋敷へと帰ってきた。
サラは、あれだけ動いたのに平然としていた。
私もまだまだ鍛え方が足りないみたいだね。
ジルベルトに鍛えてもらおうかね?
屋敷に戻ってきた時の、使用人達の顔が忘れられない。皆顔を青ざめ、絶句していた。
爺やなんて、腰抜かすほど驚いてたからな。
悪い事をした。
コンコン
「レーナ、入るよ?」
「どうぞ、兄様」
王宮に行っていた兄様が帰ってきたらしい。
私は足腰立たず、ベッドの上での出迎えだ。
「ソニアの事だが、婚約解消。アルカンディニ家は爵位剥奪の上、領地の返還、屋敷の取り壊しが決まった」
「えっ!?この件はソニア様の独断ではなかったのですか?」
「いや、ソニアのお父上も加わっていた」
「は?」
「どうやら、アルカンディニ家は財政難だったらしくてね。そこにソニアと僕の婚約話だ。娘が侯爵家に入ればアルカンディニ家としても箔が付く。それに上手く行けばセルヴィロ家自体が手に入ると」
なるほど、頭の悪い奴が考えそうな事だ。
セルヴィロ家が手に入るだと?うちの連中も甘く見られたもんだねぇ。
そんな事、絶対ありえないのに。
「で、ソニアにレーナがいると侯爵家を上手く乗っ取れないと言われ、暗殺者を雇いレーナを狙ったと言うわけさ」
全ては、愛に溺れた哀れな令嬢、そして金と権力に溺れた愚かな伯爵の起こした事件ってことか……。
「そしてソニア自身だが、死刑が決まった……」
「そう……ですか」
義姉だと思ってた人間が死刑か……。
仕方の無い事だとわかっているが、残念でならない。
兄様の方が、よっぽど傷ついてるに違いない。
原作では、ロベルトという男はミレーナ命のように描かれていたが、兄様は違う。
言葉ではミレーナが一番だと言ってはいるが、それなりにソニアを愛していたんだと思う。
ソニアと話してる時の兄様、優しい顔をしていたからな。
あれは恋する男の顔だったよ。
──気づいていたかい?兄様……