復帰
毒に始まり暗殺事件があり、学園をしばらく休んでいたが、今日からまた通うことが出来る。
兄様はまだ早いと言うが、身体がなまってしょうがない。
それに、そろそろ本格的に犯人探しをしようと思ってるからね。
「ミレーナ様!!」
「カナリヤ、お久しぶりです」
門をくぐった所でカナリヤに声をかけられた。
しばらくぶりだが、元気そうでよかった。
「心配したんですよ!?お身体はもう大丈夫なんですか!?」
「ええ。心配させてしまって、すみません」
「そんな事全然構いません!ミレーナ様が無事ならそれでいいんです」
「ありがとうございます」
本当に優しい子。
最近は妹のように思える。
「ミレーナ!!」
「殿……アレン様?」
「聞いたぞ!殺されかけただと!?」
情報が早いこと。
ま、その発信源はおおよその検討がつくがな。
「ええ。しかし、ちゃんとここにおります」
「聞いた時、心臓が止まるかと思ったぞ」
「あら。アレン様の心臓はその程度で止まるのですか?」
「ああ。ちゃんとミレーナだ」
「失礼ですよ」
これでも病み上がりなのだ。少しはいたわれ。
「して、犯人は掴めたのか?」
「それが、まったく……」
そう、犯人についての手掛かりが何も無い。
賊の男も、手掛かりになる様な物はなにも無かった。
指紋採取が出来れば一番いいが。
そんな技術、こちらにはない。
だから、学園に来たんだ。
学園には沢山の人がいる。
一人になる時も多い。そこを狙って来るかもしれない。そうなると、犯人は学園の中に紛れている可能性がある。
──木を隠すなら森の中か。
「私も力になろう。できる限りの事はやってやる」
「私も!ミレーナ様をお守りします!」
「ふふっ。カナリヤ、貴方は守られる方でしょ?」
カナリヤの言葉に思わず笑みがこぼれた。
私より弱い令嬢が、私を守ると言う。
自分でも分かっていて、言っているのだろう。
それでも、守ると。
──その言葉だけで十分、嬉しいねぇ。
「……ミレーナの笑顔……初めて……」
「なんです?」
「あっ、いや、ミレーナはそんな顔で笑うんだなっと……」
「?誰でもおかしい事があれば、笑うもんですよ?」
おや?アレンの前で笑ったこと……ないかもな。
愛想笑いはあるかもしれん。
しかし、たかが笑顔ぐらいでなんだい?
顔が真っ赤じゃないか。
「あ~。ミレーナ、あれだ。護衛はどうしている?」
「護衛など必要だと思いますか?私ですよ?」
だてに剣術と体術をマスターしていない。
そこら辺の護衛より、断然強いと言い切れる。
そもそも、自分の身は自分で守る為に習い始めたことだ。
護衛を付けたら意味が無い。
「実力は知っている。だが、もしもの事を考えろ」
「もしもがあったら、その時はその時です」
昔は、危険は常に隣り合わせだった。
組のヤツらを守る為、常に一歩先を考えて行動しなければならなかった。
それが、組の頭の役目。
──最期は読みを間違えたがな。
「またお前は……。まぁ、いい。護衛は付ける!これは王子命令だ!」
「都合のいい時だけ……」
「なんだ!?」
「いいえ。わかりました」
命令と言われてしまえば、従わない訳にいかない。
──都合のいい時だけ、権力をかざしやがる。