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Pirates of the sky Great beginning  作者: 山極 由磨
10/13

第三部・やがて一家は『伝説』となった。3

 一家四人、一生かかっても稼げないほどの莫大な金額を一度に手にした『イカヅチ空賊団』がもう一つ手にしたものが有った。

『名声』に限りなく近い『悪名』だ。

 帝国、連合、同盟の各勢力下のほか、第四諸国の放送局は事件の翌日からこの『空賊』事件を一斉にラジオで報じ、発行されている全ての新聞の第一面を飾った。

 当然ながら上流階級の愛読する主要紙は。

『やっと訪れた平和を脅かす空飛ぶ悪夢』

『法と秩序と理性に対する邪悪な挑戦』

 と、散々に彼らの行いを非難したが、あまり品のおよろしくない大衆紙あたりは、一人の死者を出さなかった犯行に目を付け。

『一滴の血も流さずお宝をかっさらう大量空輸時代に現れた空飛ぶ海賊』

『イカヅチの名に恥じぬ胸を空くような電光石火の鮮やかなる手口』

 などと半ばはやし立てるような見出しを躍らせ、不況で喘ぎ政府や資本家への鬱憤を溜め込んだ大衆を喜ばせた。

 南方大陸の帝国新領にある龍顎湾近海の無人島に着陸させた『イカヅチ号』の船体の下で、熱帯の強烈な日差しを避けながら、キッと冷やしたスパークリングワインを煽りつつ、自分たちを非難する一流紙と、持ち上げる大衆紙を交互に見比べながら、ジョユスはさてさてどうしたもんかと考える。

 奪った金塊は女武器商人が紹介してくれた故買屋を介して現金にした。10パーセントという法外な手数料を取られたが、諸々の借金を返しても上手く運用すれば、一生とは言えないまでも楽々暮らせるだけの金は手に入れた。

 そして、この世間の騒ぎ様。紙面の片隅には各勢力の空軍、航空軍や司法機関の広報官が徹底取り締まりを宣言している。

 またヤマを踏めば捕まる。あるいは撃墜される恐れもある。

 今のところは面も素性も割れてはいない、堅気に戻ることも可能と言えば可能だ。

 左舷側の日陰では、ディリックがクソ暑いと言うのに買ったばかりの革のフライトジャケットを素肌に羽織り、傍らにビールの瓶を何本も並べ、ラジオから流れる流行曲を聞いており、アルネスは浜辺で海面に浮かべた樽を的に、最近手に入れた新品の帝国軍の対戦車小銃で射撃の練習をしている。

 凄まじい発砲音と共に強烈な反動で彼の体は半歩以上も後退したが、波間に浮かんでいた樽は水柱と共にバラバラに四散する。

 アマンデはと言えば、椰子の木陰に椅子を出し、黒い布に向かって白い糸を通した刺繍針を動かしていた。

 ダラルはハイビスカスの下で居眠りをし、アバルは静かに本を読んでいる。

 つい数か月前、一家は極貧の一歩手前にいた。

 何も悪いことはしていない。身をもって国に奉仕し、滞らさず税を納め、法律を守り、朝な夕なに神に祈り、何一つ人様に迷惑を掛けずに生きて来たつもりだ。

 しかし、国も法も神も自分たちを見捨てた。

 だからこっちも捨ててやった。

 そして得たのが、つかの間かもしれないがこの幸福感と、あの襲撃の夜の高揚感。

 高級紙と大衆紙、またこの二つの新聞の見出しを眺める。

「ちょっと、見てくれる?」アマンデの声がしたので顔を上げると、目の前に巨大な髑髏が有った。

 正確に言えば黒い布に白い刺繍糸で精緻に描き出された髑髏で、顎のあたりから堂々とした翼を広げ、額には黒々と稲妻の印。


「天下に名を轟かす人類初の空賊団が、汚れたシーツの旗を掲げてちゃカッコ悪でしょ?」

 

 自慢げに旗を広げる彼女を見て、ふと、また新聞紙面が気になり視線を落とすと、高級紙の広告欄に『あなたの貴重な商品を守る空賊保険発売開始』の文字が目に飛び込む。

 腹を括った。


「カッコいいじゃないか、それ、よし、今度の仕事で早速使おう」

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