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第八章 春日遊覧 ー間奏曲ー(三)
後宮も、非常に華やかである。
神野がかなりの数の妻を持っていることは、周囲にも知れるようになっている。子供の数も多い。即位後五年ほどが過ぎると、妻の数、子供の数共に十人を優に越えるまでになった。
そんなきらびやかな後宮の実質的な女主人となっているのは、親王時代からの妻である橘嘉智子だ。絶世の美女、そして非常な才女として名高く、神野との間に正子内親王、正良親王を始め、二男三女をもうけている。
出産の度に妻は実家へ戻るのが決まりである。嘉智子もまた出産のごとに半年ほど内裏を留守にすることになるのだが、戻ってくるごとに大抵女の一人か二人は増えているという案配だったし、やれ懐妊だ、宿下がりだ、出産だ、という話がひきもきらず、よく言えば活気に溢れた、悪く言えば、安世が例の口調で、
「財政難なのは、主上の御子のせいではありませんかねえ」
と神野をからかったりもする、そんな盛況ぶりなのである。
ただし、ここに至るまでには、少し曲折があった。