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プロローグ-俺は男だ

注意!

作者は豆腐メンタルにガラスハートの持ち主です。

取扱いにご注意ください。

 気が付くと俺は大きな部屋で一人の老人と相対していた。

 何を言っているのかわからないかもしれないが、俺だってわかりゃあしない。

 兎に角状況を説明すると目の前には何やら書類のようなものを読んでいる老人が一人。

 周囲に見えるのは、右手に人形のようなものがたくさん積まれた山で、今も上から一体、また一体とポンポン落とされて行っている。

 よくよく見れば下の方ではその人形が引き釣り出されているようで大体一体ずつ、ごくたまに二体といった感じで近くのベルトコンベアのような動く板に乗せられて左の方へといっているようだ。

左手の方に続くベルトコンベアの先には光り輝く泉のようなものが見え、一体、また一体と順々に人形が落ちていく。

 不思議なのはベルトコンベアに乗る直前から急に滑らかに動き出していること。

 これではまるで……。


「まるで命が吹き込まれたかのようじゃろう?」

「え?」


 その言葉を聞いて前を向くと、目の前にいた老人が書類から目をあげてこちらを見ていた。

 表情を見る限りは優しそうに見える。

 というか、まてよ?

 この老人はもしや俺の心を?


「別に心を読んだわけではないぞ?

 お主と同じ世界から来たもので、わしが話すことになった者は大体同じことを聞いてくるからの。

 経験じゃよ、経験。

 さて、何となく察したかもしれんが、ここは単なる人形の製造工場などではない。

 ここはおぬしらのような人の子を転生させる場所じゃ。

 先ほどお主が見ていたあの山は特段善行を積んだわけでも、悪行を積んだわけでもない者が転生するための身体を作っておいてあるのじゃよ。

 そういったもの達まで対応するには手が足りんくてのう。

 おひとり様につきおひとつお取りくださいという看板を立てて勝手にやってもらっておるんじゃ。

 最近流行りのセルフサービスというやつじゃの」

「最近?」

「(。´・ω・)ん?

 何かおかしかったかの?」

「いえ、それよりも俺はもしかして気づかぬうちに悪行を積み重ねてしまったのですか?

 こんな特別な場所に呼ばれるほど悪いことをした覚えはないのですが……。

 何かの間違いでは?」


 そう、問題はここだ。

 俺は僧侶とかではないので、修行して徳を積んだりした覚えはない。

 つまり、ここに呼ばれるということは悪行を気付かぬうちに溜めてしまった可能性が高いのだ。

 悪ければ畜生道に落とされてしまったりするのかもしれない。

 何かの間違いという可能性もあるので祈る気持ちでお伺いを立てる。


「ん?

 ああ、ああ、そうじゃったそうじゃった。

 お主は自分が死んだ原因を覚えておらんのじゃったな」

「俺が死んだ原因ですか?」

「うむ、死亡したときのまま呼び寄せると錯乱して話にならないことが多くてのう。

 死亡前後の記憶がない状態になって呼び寄せるのが通例になっておるんじゃ。

 映像を見せても良いが、あまり気持ちの良いものではないのでな。

 口頭で説明するが、お主は幼い少女をトラックからかばって命を落とした。

 その少女は多少怪我を負ったが無事での。

 予定ではあとおおよそ90年生きることになっておる。

 つまりお主は良く徳を積んだということでここに呼ばれておるんじゃ」

「なるほど……」


 えっ?

 俺そんな自分の命を捨ててまで少女を助けるような殊勝なやつだっけか?

 う~む、分からん。

 でもそういうならきっと本当に助けたんだろうなぁ。

 少女を助けつつ自分も生還するみたいな主人公補正の乗った感じにならない辺りは自分らしいといえるのかもしれないが。

 で、ここまでの話的に行くと俺は転生するときに補正、言うならばチートをもらえるみたいなことなのか?


「うむうむ。

 何となく話がつかめてきたようじゃの。

 日本のことわざに『天は二物を与えず』という言葉はあるが、人一人を無償で救ったとなれば話は別じゃ。

 本来お主が転生した際に受け取るはずのもの一つと救った命の分の一つ。

 合わせて二つのものをお主には渡すことができるというわけじゃな」

「おお~、ありがとうございます」

「お礼など必要はない。

 これはお主自身で勝ち取ったものじゃからの。

 それに最期に命を救った分がなくとも総合的に見て、お主の人生は善行の側にやや傾いておる。

 短くはあったが素晴らしい人生であったといって差し支えはなかろうて。

 そうじゃのう……、そのもともとの善行の分で転生先の世界を選んでも良いぞ?

 簡単に出良いが、お主はどんな世界に行きたいと思うかの?」

「あぁ、なるほど……。

 魔法とかにあこがれはあるんですけど、俺の元居た世界と同等以上の文明がある世界がいいなぁと思うのですが、ちょっと贅沢ですかね?」

「その程度ならば問題はないとも。

 ふむ、そうじゃな。

 この世界などちょうどよいだろう。

『ティアレレ』と呼ばれている世界じゃの。

 魔法も存在しておるし、インターネットも原理こそ多少違うが存在しておるぞ?」

「ありがとうございます!

 是非その世界でお願いします」

「うむ、ではまぁ、お主に与える特典じゃがの。

 この世界では基本的に頭の良いものほど魔法がうまく使える故、頭脳の基礎値をよくしようぞ。

 してもう一つは……、この世界だと運動能力はそこまで重視されておらんしのう。

 魅力の基礎値を上げるという形で良いかの?

 どうじゃ?」

「勿論、問題ありません。

 ちなみに身長とかはどうなりますか?」

「平均より少し高めぐらいになるかの。

 高すぎてもあれじゃろ?」

「ええ、確かにそうですね」

「うむ、したらばこれでよいかの。

 申し訳ないんじゃがこの後も何人か待ち人がおっての。

 色々と駆け足じゃったが、これで転生に必要な事項は終わりじゃ。

 この裏側にお主の体が出てくる。

 専用に作っておるから居心地は抜群のはずじゃ。

 頭脳明晰であり、()姿()()()()()()()の素晴らしい素体じゃ。

 それをどう活かすかはお主次第じゃがの。

 それでは、また何れな。

 願わくば、わしがきれいさっぱりお主のことを忘れた辺りに会えることを願っておるぞ」

「分かりました。

 いろいろとありがとうございました。

 最期に一つだけ。

 俺のことを忘れるのってどれぐらいの時がかかりますかね?」

「ん?

 うむ、まぁ、軽く百年後ぐらいかのう?

 もう少しかかるかもしれんからな、ゆっくりしてくるといい」

「はい、ありがとうございました!」


 こうして俺の転生の話し合いのようなものは終わりを迎えるのであった。




 ◇




 いやいや、ちょっと待ってくれよ。

 そんなことってありえるのか?

 刻一刻と迫るタイムリミットを目前にした俺は、ある種の危機感(いや、嫌悪感といってもいいのではなかろうか)を感じてしまう。

 順を追って説明したいところだがそんな時間はないのでさっきの会話から今までに何があったかを一言でいうと、今俺は俗にいうTS転生をさせられようとしているのだ。

 いや、最後の方の言葉を思い返してみればおかしいと思ったんだ。

 才色兼備も容姿端麗もどちらかといえば女性に使いそうな言葉だ。

 男性だったら眉目秀麗とかいろいろと他に言葉があるだろうし。

 くっ、いや別にTS転生物を否定する気は一切ないんだ。

 面白い作品もたくさんあるし、創作物としてみる分には全然かまわないし、むしろウェルカムといっていい。

 だが、だがしかしだ。

 自分が経験するのは流石にちょっと……。

 だってあれだろ?

 将来的に男のピーが俺のピーに……


 !!自主規制!!


 うむ、無理だ、無理無理カタツムリ。

 ちょっと考えただけでも鳥肌が立ってしまう。

 もしかしたら転生した後で俺の意識は全くなくなってしまうのかもしれないが、もし仮に前世の記憶があるとかなってしまったらと思うと身震いが止まらない。

 俺はそんなものはなかったが、テレビとか周りの奴らの何人かは前世は自分は○○だったとか言っている人もいたし、自分の意識がある可能性も否定できない。

 そうなってしまった場合に、せっかく魅力にボーナスをもらっているといっても全く楽しめない、灰色の人生が確定してしまっているということになりかねない。

 いや、まだ結婚しないという選択肢を選べればいいが、もしもいいところのお嬢様なんかに生まれ変わったりしてしまって、婚約者を決められたりしてしまった際には……。

 アッー!

 そんなことを考えてもしょうがない。

 覚悟を決めるしかないか?

 ちらっと元の場所を見ればさっきの老人は他のだれかと忙しそうに面談をしているし、正直俺の都合でまた作り直してもらったりするのは申し訳ない。

 さらに言えば不興を買ってしまう可能性もあり得るわけで。

 ……。

 やむを得ず、か。

 俺としての意識が残らないのであればきっと次の人生は素晴らしいものになるに違いないし、最悪有名なアーティストとかになってそういうのを躱すという選択肢もあるかもしれない。

 そう思い、転生するためらしいベルトコンベアへと乗っかろうとしたところで横にある山に目が行く。

 まてよ?

 確かこの山の人形は一人につき一つセルフサービス的なことを言っていたような。

 素の能力的にはこの体はいいもののはずだし、これを置いて新しい体に乗り換えるというのもありかもしれない。

 もったいない気もするがここにあるのは普通の人らしいし、暮らしていけないということはないはずだ。

 前世の俺と似たり寄ったりの性能はあるはず。

 そう思い、一先ず一体を引っ張り出してみる。

 スッと股間をまさぐってみると今の俺にはない独特の異物感を手が感じ取る。

 間違いない、こいつは男だ。

 よしよしよし。

 これは何とかなったぞ。

 人形に肩を貸しながらそのまま押し流されるように列に並んでいく。

 後は俺がこっちの体に移るだけ……。




 あれ、どうやって移ればいいんだ?

 最初は触ってれば体に入り込めたけど、もうすでに体に入ってしまっている場合にはどうすればいいんだ?

 頭のてっぺんを上から引っ張られるような感覚を感じてみようとしたり、幽体離脱幽体離脱と心の中で念じてみたりしたものの全くもって俺がこの体から抜けるような感覚は感じ取れない。

 そんなことを考えながらも足元は動く床なので着実に転生先へと運ばれていく。

 万事休すか、俺の思考が残らないことを願うしかないな。

 最期にそう思うと同時に俺は転生を果たすのであった。

 自分専用に作ってもらった高品質な人形♀と、一般通過人形♂の2つをもって。




 ◇




 これがどういう事態を生むのか、それは神のみぞ……いや、神すらも知らない物語。

 なにせ、神はアバターが一つ余分に減っていることにすら気づいていないのだから……。

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