表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
98/210

98

作戦会議から2日。

ついに首都に到着した。


「随分あっさりと入ることができましたね。」


作戦のかいあってか、一切いちゃんもんをつけられることなく入ることができた。


確かにすんなり入れたけどやっぱりなんか負けた気がして悔しい。


出るときは堂々と出てやるから覚悟しとけ。



さてさて、まずはゼロスさんのお子さんの所に行かねば。

すでに日は傾いているので、宿も急いで探さなきゃいけない。


ゼロスさんの地図を頼りに辿り着いたのは、立派な呉服屋といった佇まいの服屋さんだった。


一番上の息子さんの宿もえげつなかったけど、ここもまた高そうな雰囲気がバンバン出ている。


今回はわたしが率先して挨拶することにする。

すでに手紙とペンダントは準備済みだ。


ガラスで出来た扉を開けると、すぐさま店員さんがやってくる。


「ようこそお越しくださいました。本日はどのようなご用件でいらっしゃいますでしょうか?」


ひー!なんか服屋の店員さんって苦手なのよ。


必死にひきつりそうになる顔に無理矢理笑顔を張り付けて、手紙とペンダントを見せる。


「・・・少々お待ちくださいませ。」


店員さんは一瞬真顔になったが、さすがはプロ。

すぐに素敵な営業スマイルで奥に消えていった。


待つこと、数分。


店の奥から出てきたのは、高級旅館の美人女将といった感じの女性だった。

着ている服が何となく和服に見えなくもないので余計にそう感じる。


「お待たせして申し訳ございません。」


女将さんは、わたしを見ると一瞬だけ眉毛をピクリとさせて近くまでやって来た。


「さぁ、こちらにどうぞ。」


そう言って直ぐにお店の隅の方にあるソファとテーブルのある場所に案内される。


あ、これ本来はここで待っててなきゃいけないやーつだ。

店員さんも気が付いたようで、顔を真っ青にしている。


わたしは店員さんにお取り次ぎありがとうございましたと元気よくお礼を言う。

これで、少しは怒られなくて済めばいいけど。


わたしが怒られる訳ではないがビクビクしちゃう。


「はぁ」


女将さんがため息をついた。

わたしと店員さんに緊張が走る。


「お客様に気を遣わせてしまうなんて、私もまだまだですねぇ。申し訳ありません。」


まさか謝れるとは思っていなかったので驚いたし、ずいぶんはじめの印象と違って女将さんはホンワカした感じに変わった。


わたしは、ただお礼を言っただけ。と若干片言になりながら返事するのが精一杯だった。


「ふふっ。私は4番目の子どもでシイナと申します。父からの手紙を持ってこられる方なんて滅多にいらっしゃらないから緊張してしました。」


そう言ってシイナさんが笑う。


なんか、すんません。


もう少し色々お話をしたいところだが、みんなを待たせているのでそうもいかない。


失礼なのは重々承知の上で、獣人に偏見がなくて馬車のおけるオススメの宿を聞く。


「オススメ出来る宿に心当たりはございませんねぇ。」


嘘やん。別にいい宿じゃなくても大丈夫なんですけど。


「首都は特に亜人に厳しいので…」


さいですか。

しょんぼりするわたし。


「泊まるとこをお探しなら、一ヵ所だけ思い当たるところがごさいます。」


んん?宿は無いって言ったよね。


?が飛び交うわたしに、シイナさんさはにっこり笑う。


「宿ではございませんが、当店の従業員用の宿舎はどうでしょう?」


うっ、その提案はありがたい。

ここならみんなを安心して預けられる。

でも何かあればシイナさんを巻き込んでしまう。


わたしが悩んでいると、さらに追い討ちが。


「お店をお手伝いいただければ、臨時の従業員ということでお給金もお出しします。」


シイナさんのこの言葉でわたしは即決した。


よろしくお願いします。


お金結構ヤバいんです。

人数が増えてて宿とちょっとヒヤヒヤものだったのよ。


とは言え、流石にお給金は貰うつもりはないのだがタダで泊まらせてもらうより断然いい。


今回はゼロスさんのお子さんのお店でお世話になることになりました。


早速宿舎に案内してくれるとのことで、わたしはみんなの元に戻って簡単に経緯を話す。


「またご相談もなくそんなことを…」


でもここなら色々気にしなくてもいいし、待つだけよりよくない?と言えばしぶしぶオッケーが出た。


ま、お店のお手伝いは待機組のみんなにお任せなんですけどね。


「こちらをご利用ください。」


案内された宿舎は、そこらへんの宿よりずっと立派だった。

何より素晴らしいところは、お風呂がついているんですよ!


シイナさんにみんなを紹介して、お手伝いは何でも頼んで下さいと言って、久しぶりのお風呂を堪能したわたしは出たあと速攻で寝た。


翌朝、わたしはシルバくんに宿舎の目立つ場所でお説教を受けていた。


「ユウリ様。聞いておられますか?」


聞いてます。ねぇ、もう少し違う場所でも…


「では、お店の真ん前に移動致しますか?」


ここで大丈夫です!ごめんなさいっ!


ああ、ミーナさん。女の子は部屋に連れていってくれるのはありがたいけど、そんなみちゃいけません的な感じじゃなくても。


「ユ・ウ・リ・様?」


ひっ、シルバさんもちろん聞いてますんで、お願いだから耳を引っ張らないで。


もげるー!



拝啓、ケビン創造神様。

こんなんが聖母なんて誰が信じると思いますか。


今一度よく考えて下さい。

そして、余計なことはしないで下さい。


よろしくお願い申し上げます。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ