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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
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町にはブリザードが吹き荒れていた。


人垣のその中心にいるのは、ふふふ、はははと笑いながら話す笑顔の男女。


とってもいい笑顔だが、お互い目の奧は笑っていない。


「ただの観光ですよ。」


あら、お二人だけでですか?


「たまたまですよ。」


たまたま。ですか?


「ええ、またまたまです。」


真実と偽りを織り混ぜ交わされる会話の中から真実のみを見極め、どれだけ相手から欲しい情報を引き出せるかが勝負の激しい舌戦を繰り広げられていた。


戦いは会話の内容だけではなく、相手の表情、声色、仕草と様々な点をさりげなくチェックし合う頭脳と洞察力が必要だった。


わたしも英雄さんも一歩も譲らず、はたから見れば仲睦まじく会話を交わしているように見えるだろう。


ザワザワ…


そんな中、突然人垣の外側が騒がしくなる。


喧騒がどんどん近づいてくると、町の人たちが逃げ惑う。

そんな人々の間から見えたのはいつぞやの熊の魔獣だった。


しかし、前回とは違う点があった。

数が1頭ではなく、3頭だったこと。


すぐに討伐と救出と誘導に別れて対応するように声をかける。


アセナとフェルくんが熊に向かって走り出し、残りのみんなはパニックを起こしている町の人たちに声をかけながら負傷者の救出を開始する。


ここで、偏見の弊害がおきた。

指示を聞かないものが出てきたのだ。


「亜人の言うことなんか聞けるかっ!」


こんな時に人族とかそうじゃないとかアホか!


ムカつきは半端なかったが、事は一刻を争う。

仕方なくシルバくんとレオくんには討伐に向かってもらい、残りのメンバーで誘導と救出を行う。


討伐はあっという間に終了した。

アセナさんは2頭倒し、3人は残りの1頭を仕留めてくれた。


うん、熊ぐらいは瞬殺ですね。


わたしは集まった怪我人に『エリアヒール』をかける。


本当は文句も言いたかったし、なんなら『ヒール』も使いたくなかった。

でも、それをしたらわたしも町の人とかわらなくなってしまうと無理矢理自分を納得させた。


「・・・」


そして、さっきまでの戦いの時とはうってかわって、厳しい顔で拳を握りしめているしている英雄さんに声をかける。


英雄くんの目が覚めたあとは、大事を取って帝国に帰るか、しっかり休んでから行動した方がいい、と。


わたしのアドバイスに英雄さんは、俯いて


「そうですね。考えておきます。」


と答えた。


強く握りしめすぎて血が滲みはじめている英雄さんの手に触れて『ヒール』をかける。


「ありがとうございます。-----」


すれ違いざまに、お願いされたことは聞かなかったことにしよう。



英雄たちを帝国から解放して欲しいとか無理に決まってるだろ。



自分たちでなんとかしぃや。

ケビンといい、英雄さんといい、イケメンはわたしに無理難題を言うのが決まりなのかね。


爆発しろ!


完全に姿が見えなくなるまで見送ると、すぐ出発したかったが魔獣のあの突然の登場の仕方は原因がある。


出所を探そうとしたところに、今度はブラックシャドウが登場した。


「例の紙は既に見つけてあります。仕掛けた犯人も捕まえたのですがどうしますか。」


・・・なんかタイミング良すぎやしないか。

本当に次から次へとなんやねん。


色々聴きたいところだが、すぐに呪われし紙の元に向かう。


しかしそこに紙はなかった。


どうやら町の人を治す時のエリアヒールの範囲内に入っていたようで、既に塵と化したようだ。


そして犯人として連れてこられたのは、小さな女の子。


よく見れば、女の子の手は火傷をしたように爛れていたが、その顔に表情は一切なかった。


ぶっちゃけMPに余裕はない。


たけどこのままにしておけるわけもなく、わたしはみんなに出発の準備をするように指示を出し、横にいたシルバくんにあとは任せた言って『ヒール』を発動する。


「仕方ありませんね。後のことはお任せください。」


シルバくんの言葉を最後にわたしは意識を失った。




ちょっと、確認なんだけど。

こんなに何度も意識とか失ってて大丈夫だよね?ね?


教えて、おじーさーん!




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