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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
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朝がやって来た。

わたしたちは朝食を取ることなく、町を出ることにする。


外に出る際にも門番がいる門を通らなくてはならなかったが、今回は特に何事もなく通ることができた。


ま、御者のレオくんがフードを目深に被っていたことも理由のひとつだろうけど。


街道をひた走り、極秘ルートを抜ければ夕方には村に到着した。


教国もまた村の外れには掘っ立て小屋があった。

町とは違い村では特にこれといったことは起きなかった。


ただ気になったのが、村の生活はあまり良いとは言いがたい状況に思えたことだ。

国の端に方に位置しているから、こんなものなのかもしれないけど。


ドォーン!!


掘っ立て小屋をクリーンさんで綺麗にし、夕飯の準備を始めようもしたその時だった。

外で大きな音がした。


アセナたちが村で大暴れしたときの感じに似ていたので、みんなで音のした方に向かう。


グォォ!


そこにいたのは大きな熊だった。


熊は暴れていて、何人かの村人が倒れているのが見えた。


アセナが熊に飛びかかるのを確認してから『エリアヒール』を発動する。


アセナの一撃で動かなくなった熊の側で倒れていた人たちをすぐさま回収。


「ユウリ様、全員無事のようです。」


『エリアヒール』は問題なく発動してくれたようで、倒れていた人たちは全員助けることができた。


『エリアヒール』の範囲は広いので、あちこちから傷が治ったと言う声が聞こえる。


「ささくれが治った!」


・・・うん。よかった、よかった。


「旅のお方。お助けいただきましてありがとうございました。」


村の人はなにかお礼をさせて欲しいと言ってくれたので、現在の教国について聞かせてもらう。


情報は大事だがらね。


ちなみに、倒した熊は村に寄贈する。

貴重なタンパク源ということで大変喜んでもらえた。


"わらわが倒したのに…。"


アセナさんがしょんぼりしていたが、今回は我慢してもらう。


村の人たちの話によると、

昔から教会の人間の人たちは総本山という事で割りと鼻持ちならないところがあったそうだが、どの種族、どの職業に対しても平等であった。


しかしそれは、50年前の先代教皇の代替わりを境に一変し、人族至上主義を掲げ、種族、身分による差別が当たり前になってしまったそうだ。


その為人族以外は基本的に奴隷しかいなくなり、農民の地位は現在この国ではいちばん低くなっていて、厳しい生活を余儀なきされているとのこと。


20年前に現教皇が就任したが、現状は変わらず、むしろ悪化しているそうだ。



一通り話を聞き終えると掘っ立て小屋に戻り緊急会議を開催する。


話を聞いて思ったんだけど、これまた帝国が絡んでいて最悪なことに現在この国の中枢はほぼ掌握されている可能性が高いと思うんだけど。


「確かにその可能性は高いと思います。」


だぁー!本当になんでこんなに行き先々で帝国関連の面倒事が起きてるんだよ。


国の考えなんて色々あるから、人族至上主義だろうがなんだろうがご勝手にと言いたいところだが、帝国が絡んでいてるなら話は別だ。


「他にも聖女様たちを教会の都合のいいように利用しているという話もありましたね。」


そうなのだ。

現在聖女は2人いて、1人は神の姿を見ることができる目を持ち、もう1人は神の声を聞くことができる耳も持っているとのこと。


しかも2人ともまだ10代の若い女の子だというではないか。


もしこれが本当なら最低だ。


そして、話を聞いて思い浮かんだ1人の少女がいた。

帝国の教会で会ったべっぴんさんだ。


べっぴんさんはあの時、神の声が聞こえたと言っていなかっただろうか。


たくさんの人に囲まれたべっぴんさんの様子を思い出す。


あの時、自分のことでいっぱいいっぱいで気にかけることが出来なかったが、べっぴんさんが本当に聖女の1人なら無視することはできない。


あの時の罪悪感は忘れられない…


首都に行くことも決まってる、なら出来ることをやるという選択肢しかわたしにはない。


こうなったら、使えるものはなんでも使って帝国の企みを潰させてもらいますわ。


覚悟なさい。オーホホホホ!




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