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進むこと半日、森を抜けると舗装された道がのびていた。
ついにレティサラ教国にはいったようだ。
舗装された道を見て、これでガタガタ道とはおさらばできると思うと泣けた。
本当に地味に辛かった。
最初の町までは極秘ルートはないようなのでこのまま道なりに進む。
カーザ方面に向かう人はおらず、誰ともすれ違うことなくキャンプ地に到着した。
「このペースなら明日の昼頃には町に到着出来るかと。」
そっか。じゃいつも通り先ずは宿を確保してから夕飯までに買い物をして、翌日には出発しよう。
レティサラ教国は広い。
縦断するのにはふた月はかかるのではないかとのこと。
何もなければ。
もうイベントはお腹一杯でこれ以上はご遠慮願いたいところだ。
翌日、魔物に会うこともなく昼過ぎに町に到着した。
帝国の国境の町ほどではないが、それなりに大きい。
町に入るのに検問が行われたのだが、ここでちょっとしたいざこざがあった。
「はい次。はい次。おい!そこの馬車、止まれ!」
馬車の従者はフェルくんだったのだが、
他の人たちは特に声をかけずバンバン通していた門番だったが、フェルくんには明らかに態度が違っていた。
「この町に来た目的はなんだ。どこから来たんだ。ん?それに随分立派な馬車だな。怪しい。荷台の中身を見せろ。」
直前の人まで特になにも聞くこともなく通していたのに、急にあれこれ言い出したのだ。
もちろん門番としてそれを聞くことが仕事なのは分かるが、あまりにも言い方が横暴なので、少々カチンときたわたしは荷台から降りて門番の元に向かった。
「ユウリ様。ごめん。」
門番はわたしの姿をみると、フェルくんを無視してわたしに話しかけてきた。
「なんだ、お前これの主人か?」
これとフェルくんを顎でさす。
あまりにもムカついたので、門番の問いを無視して通っていいのかどうなのかを聞く。
門番はムッとしたようすで
「荷台の中を確認しなければ通せないな。」
と言ってきた。
それならさっさと見てくれ。
「ふん。おい、中を調べるぞ。手伝え!」
仲間を召喚して荷台を調べ始めた。
調べてる間も、別の人間がわたしたちを見張っている。
その間にも他の人は荷物検査も目的も聞かれることなく門をくぐって町に入っていった。
「ユウリ様、何かあればゼロス様に頂いたペンダントをお見せください。」
シルバくんがこっそりアドバイスをくれたが、何かなんて起きようがないと思っていたら荷台を調べていた門番が人数のわりに荷物が少ない。なんだか怪しい、馬車は盗んできたのではないかと言い出したのだ。
あまりの飛んでも理論に説明するだけ無駄だと思ったわたしは溜め息を吐くと、アイテムボックスから大きなテントを取り出し、ペンダントを見せる。
「アイテムボックス持ちか。だがな、ん?そ、それは…!
それを持ってたらなら最初から見せれば通したものを。」
あれこれ言い訳し始めたのでそれを遮り、もう一度通れるのかと聞く。
「・・・どうぞお通りください。」
門番は顔をひきつらせながら、道を開けた。
門を通り抜けると、背後で何か文句を言っているようだったがまるっと無視することにする。
相手にするだけ無駄無駄ァである。
町にはいると、町の人たちもまた不躾な視線を向けてくる。
とりあえず、宿を見つけるとさっさと買い出しを終わらせ会議を開くことにした。
どうやらこの国では全員ではないにしろ、人族以外は全て奴隷のようで、しかも扱いがあまりよろしくないロクでもない国であることが分かった。
今いる宿も宿泊を渋られたくらいだ。
少し宿代に色をつけなんとか泊まることができたけど。
という事で、村はまだなんとも言えないが町には極力寄らないことにする。
ただ、ゼロスさんのお子さんが首都に居るのでそこには寄らざるを得ないけど。
今回の一連の出来事でいちばんショックを受けていたのは、ガルくんだった。
確かにカーザは強ければ種族は関係ないし、弱いものは強いものが守るみたいなところもあったので、かなりの衝撃だったようでお怒りだった。
「全然納得出来ないっすよ!」
まぁまぁ、落ち着きなさいな。
わたしは表面上はガルくんをなだめながら、宿に風呂がついていなかったこともあいまって、腸が煮えくり返っていた。
場合によっては、ケビンに会わないといけないかもしれないと考えて憂鬱な気分のまま就寝した。