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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
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しかしいざお店の前に到着すると急に冷静になって、入ることを躊躇ってしまう。


お店の前で入るかどうしようか悩んでいると、本日2度目の衝撃が私を襲った。


「あ、おねぇさん!いらっしゃいませ!」


なんとお店の中からアリサちゃんがいらっしゃいませといいながら出て来るではないか。


「来てくれるのアリサ待ってたんだ。」


待ってた?その言葉に昨日のアリサちゃんとの色々なやりとりが蘇ってくる。


何故、あんなにも奴隷推しだったのか。

そして別れ際にまたねと言われた理由もすべて繋がった気がした。


そして私はあまりの衝撃でお店のまえで両手両膝をついた。


「わっ!おねぇさん大丈夫?」


急に膝をついた私に気を遣ってくれるアリサちゃん。


大丈夫、ちょっとめまいがしただけと言って立ち上がる。


「ダメダメ!お店の中で休んだ方がいいよ!」


と言ってお店の中へ案内しようとする。


若干というか、かなりアリサちゃんの手のひらで転がされている気もしなくもないが、一人ではお店に入れる気がしないので、これ幸いと思うことにして、手を引かれるままお店の中へ入った。


お店に入ると勧められたイスに座る。

私がイスに座ったことを確認するとアリサちゃんは奥にある受付に向かいカウンター越しに男性と何か話している。


その様子をぼーっと見ていたら男性とアリサちゃんがこちらにやって来た。


男性はアリサちゃんのお父さんで、この奴隷商店の店長さんだった。


うん、なんとなくだけど、そんな気がしてた。


「すんません、昨日は娘がお世話になったようで。ありがとうございました。」


いえいえ、お世話になったのはこちらの方です。

それにしても、しっかりしたお嬢さんで。


「アリサ、おねぇさんに色々教えてあげたんだ!」


本当に色々教えてもらったんですけど、奴隷についてはまだ教えてもらっていなくて、ご教授願えますか?


「ええ、もちろんですとも。当商会では…」


お父さんの説明を聞いて、どうやらこの世界における奴隷とは私の思い描いていた奴隷とはちょっと違うことがわかりました。


この世界では、お店などは基本的に家族経営なのだが、お店が大きくなればなるほど人手が足りなくなる。

そこで手が回らなくなったらどうするか、家族以外の人に手伝ってもらうことになる。その際雇うのが奴隷だそうだ。


ちなみに地方の貧しい農村の出身の人が多く、一般的には出稼ぎ奴隷とも呼ばれているそうだ。


奴隷は真面目に働く代わりに雇い主は衣食住と給料を支払う義務を負う。

もちろん、真面目に働く以外にも雇用主によって色々約束ごとを付け加えられる。

昔は口約束でお手伝いを雇っていたそうだがトラブルが多発。

このトラブルを少しでも失くそうと試行錯誤して現在は奴隷という形になったらしい。


奴隷といってもほとんどは家族と同じ扱いで、真面目に働いていれば支店を任してもらったり、独立するなんてこともあるそうで、なんか夢があるなと思った。


奴隷は初回登録時によっぽど問題がない限りはタダで一月ほど奴隷商店所有の寮に住むことができる。

その間は奴隷商店の一員として色々な仕事をしながら、雇い主と出会えるのを待つらしい。


様々な理由から契約が解除となった場合は、銀貨1枚払えば初回登録時と同じように一月は奴隷商店で面倒をみてくれるそうだ。

もちろん犯罪を犯した場合は刑務所に入れられて、完全に更正したと判断されるまで奴隷登録は出来なくなる。


要は奴隷商店とは人材紹介紹介及び派遣会社で奴隷とは雇用契約を結んだ従業員、派遣社員ということですね。


おい、自動翻訳どういうことだ。

なぜこれが奴隷という翻訳になるんだ。


ただよくよく話を聞いていくと、国や領地によっては扱いがかわるらしい。

他にも旅をしながら短期の奴隷契約で旅費を稼ぐ流れの奴隷や、まれに一般の方にはご紹介できない訳ありの奴隷、お金持ちの道楽として売られる奴隷なども存在しているらしいのだから、やっぱりこの世界はヤバい。


「では、早速当商会の奴隷をご紹介いたしますので、どうぞこちらへ。」


奴隷について教えてもらうとそう言われて、店の奥へ連れていかれた。


いや、まだ心の準備できてませんけど!?





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