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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
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絡まれないための鉄則。

①目を合わせないこと

②話しかけないこと


以上。


白装束の集団は7名。

内訳はえらいべっぴんさんな10代の少女におばさん3名とおじさん3名が祈りの間の入口にいた。


わたしはからしたら出口になるわけで。

直接出口に向かうことは断念し、壁側に迂回する。

視線を下にして決して目を合わせないように移動する。


しかし、いざ出口にたどり着いたわたしの前には白装束の集団。


なんでやねん。全然移動してないから出られないやんけ!


お互い動かず、微妙な空気が流れる。


このままでは外に出られない。

仕方ないので鉄則を破り、勇気を振り絞ってどいてくださいと声をかけようと口を開いた瞬間。


「あなた様が聖母様ですか?」


下を向いたままだったが、声の感じから声をかけたのは少女だろう。

その問いに回りの人たちがざわざわしている。


一番聞かれたくないことを直球で聞かれて動揺しかけた。


しかし、わたしはガラス◯仮面をつけることにより月◯先生に負けず劣らずの大女優に進化した。


相変わらず視線は合わせないようにして、聖母とはなんのことでしょうと返す。


「先ほど神のお声が聞こえたのですが。」


と間髪いれずに返された。


おいっ!電波の周波数ぐらいちゃんと調整しておけよ、バカケビン!


心の中でケビンにぶちギレながら、しかしわたしは顔に出すことなく知らぬ存ぜぬで押し通す。


「しかし、確かにお声が…」


少女も諦めずに声をかけてくる。このままではラチが明かない。

今までずらしていた視線を、少女の目に合わせる。


そして、目を見つめたまま存じ上げませんと答えると少女は何かを言いかけた口をつぐんで、


「失礼しました。」


と言って道を譲ってくれた。


他の人が色々言ってくるが、ここはまるっと無視して少女にありがとうごさいますと言ってよくやく外に出ることに成功した。


外に出ることには成功したが、わたしはあまりの罪悪感に扉の横にうずくまった。


べっぴんさん、本当にごめんなさい。

嘘をつくのがこんなに辛かったことはない。


それもこれもケビンのせいじゃ、ボケェ!


うずくまってほどなく、心配した三人がお迎えに来てくれた。


あそこまでキッパリ違うと言ったのだから、このまま聖母ではないと押し通す覚悟を決め、鑑定を受けるために移動することにした。








ユウリが出て行ったあと、白装束の集団は揉めていた。


ユウリがべっぴんさんと呼んでいた少女は本当に神の声を聞くことのできるこの世界では聖女と言われる存在であった。


ただ、彼女の神託は一方的なもので自分の意思で聞くことはできず、今までに受けた神託の回数は僅か2回。


それでも、神の言葉を聞けることはあまりにも稀なことなので、過去にはたった一度の神託だけ聖女と呼ばれた者もいた。


そして彼女は今回ケビンの


"ユウリさん、聖母ってことでこの世界のピンチ救ってください。"


のセリフの中の"聖母" "救って"

だけが聞こえたのだった。


彼女が慌てて祈りの間に向かうと、そこにいたのは一人の女性。

人目を避けるように移動する女性を見つめ、確信を持って問いかけた。


「あなた様が聖母様ですか?」と。


しかし、女性は明らかに動揺したあとなんのことでしょうと答えた。


その後も目を泳がせながら知らないの一点張りで問答は平行線をたどると思われた頃、女性がまっすぐ目を見つめ存じ上げませんと答えた瞬間。彼女は悟った。


この方が聖母様で間違えないと。


使命を果たすために内密に行動しているため、聖母だと名乗れる訳がなく仕方なく知らないと言ったのだと理解し、自分の行動の浅はかさを恥じた。


そして、これだけの取り巻きを引き連れて、しつこく問い詰めた自分にありがとうと感謝を述べてすまなさそうに去っていく姿に懐の深さに感激した。


彼女はやいのやいの言っている取り巻きに、声は聞こえたがあの女性が聖母様ではなかったと言いきると自室へ戻った。


そして、信のおけるものだけに真実を伝え陰ながら聖母様のご助力をすることを決めた。


こうして、ユウリの知らない間に聖母としての外堀が埋められていくのは神の策略かはたまた偶然か。


もう、誰にもわからん。




いつのまにやら、ブックマークが50件を越えていたり、評価してくださった方がいたりとお読みいただいている皆様には感謝しかございません。


これからも頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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