表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
59/210

59

祈りを開始するとすぐに電波を受信した。


先制したのは創造神様。


"この前は話の途中で祈りを止めるから、全然話しが出来なかったじゃないですか。話したいことがいっぱいあるのに。目を開けちゃダメって言ったのに目、開けちゃうし。"


創造神によるグチグチ口撃が繰り出された。


それに対し、わたしの反撃はうるせぇの一言だ。


"・・・"


なんと、この一言で神様が沈黙。

出鼻は挫かれたが、チャンス到来やで。今度はこっちの、


"すごい!すごい、すごいです!仮にも創造神である私にうるせぇなんて!私は今、猛烈に感動してます!"


なんで感動!?っていうか反撃する隙がないんですけど。


でも、なんだろうこの感じ。ものすごく身に覚えがある。


神様の激しい口撃のなか、わたしはある一人の人物を思い出していた。

トラブルメーカーの小悪魔ゆみちゃんとほぼ同時期に颯爽と登場して嵐のように去っていった一人の人物を。


そいつの名はケビン。

金髪碧眼の超イケメン外国人。

なにやら良いとこの坊っちゃんという噂で、経緯はまったく分からんがわたしの働いていた会社に突然やって来た。


今考えると、何故うちの会社に来たのか謎でしかない。


このケビン、黙っていれば本当にイケメンで、やって来た当初はそのルックスと肩書きから会社中の女子という女子と少しの漢たちが恐ろしいほど群がった。びっくりするほど群がった。


そんな中わたしとゆみちゃんだけは我関せずだったけど。


わたしは忙しいくてそれどころではなかったのだが、イケメン大好きなゆみちゃんが関わらない理由が分からず一度だけ聞いたことがあった。


ニコッ。


その時のゆみちゃんの顔は忘れることはないだろう。

結局、理由は判らなかったが二度と聞くまいと誓ったことは昨日のことのように覚えている。


さて、イケメン外国人のケビンだが、いざ話してみるとあまりのマシンガントークに全く会話が成立せず、残念なイケメンだということがほどなく判明した。


横文字混じりのマシンガントークはまさにル◯大柴そのものだった。


「私とトュギャザーしませんか?」


その後も果敢に挑んだ猛者もいたのだが、ことごとく撃沈。

いつしかあまりの残念さに、誰も話しかけなくなった。


するとケビンは自分から話しかけるようになったのだが、あの群がりようが嘘のように全力で避けられていた。


そんな中、当時のわたしは仕事が湯水のようにわいてくるという地獄の中で、全然聞いてもいないのに適当に返事をしてさも聞いているようにみせかけるという超最低な特技を取得していた。


主にゆみちゃんとクソ上司に使っていたのだが、これがケビン相手に大変活躍してしまい陰でケビン係と呼ばれていた。


時々、思い出したようにうるせぇと文句をあったこともあったが、ケビンはキョトンとしたあと何事もなかったように話しを続けていたっけな。


そんな奴もゆみちゃんが退職したあといつの間にかいなくなり、わたしに平和なときが訪れたのだった。


その平和も異世界召喚とかいう訳のわからない状況で終わったけどね。



はっ!いかん。

久しぶりに特技を発動していたようだ。


"・・・"


気がつけば神様の口撃が止んでいた。

なんとか乗り切ったのかと油断していたその時。


"やっぱり、聞いてなかったんですね。"


ボソッとこぼれた神様の言葉にビクッっと肩が跳ね上がる。


そうだった。頭の中の考えはだだ漏れやった。


わたしは今明らかにピンチを迎えていた。

そして追い討ちをかけるように、とんでもない一撃をくらう。



"ちゃんと聞いてないと、困るのは聖母であるユウリさんなんですよ。"



・・・うん、ちょっと何言ってるのか分からないですね。


今、絶対聞いちゃいけない言葉を聞いてしまった気がする。

これ以上の対決は危険と判断して祈りを強制中断するべく目を開けた。





しかし目を開けると、そこにはさらなる絶望が待っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ