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朝、目が覚めると火は消えていた。
みんなが朝食の準備をしている。
村の人たちから差し入れをいいただとのこと。
え、寝てるときに来てたのかよ、恥ずかしいんですけど。
とりあえず、今さら恥ずかしがっても時すでに遅しという事で素早く切り替えてありがたくいただくことにする。
ご飯が食べ終われば今後についての話し合いをすることに。
「村の方はあとは建物の建設になるそうで、そうなると手伝えることもあまりないので、そろそろ出立しても良いかと。」
そうだね。あんまり長居するとそれはそれで気を使わせちゃうし。
わたしたちは村の人たちに出発の挨拶をして出ることにした。
問題は燃えたあとに残った灰だが、穴を掘って埋めてしまえばオッケーとのことなので、猪たちにお願いして土魔法で穴を掘ってもらい、あとはひたすらマイスコップで灰を捨てるマシーンと化した。
なかなかの量だったので最後の方はスコップを持つのも辛かった。
こりゃ、明日は筋肉痛ですわ。
灰の処理も完了したので挨拶をするために村に向かうと、すでに建物の建築が始まっていた。
昨日の運んだ木がさっそく活躍しているようで何よりです。
村の人に出発することを伝えると、沢山の人たちに感謝の言葉をいただいた。
うん、感謝の言葉が心苦しい。
だって今回の件、村の人たちはなんにも悪くないんだもんよ。
後ろめたい気持ちがいっぱいで、わたしたちは村を出るまで誰も口を開くことができなかった。
村を出るとわたしは無言で膝をついた。
本当に申し訳ございませんでした!
見事な土下座だったと思う。
旅を再開するにあたり、猪たちとはここでお別れすることにした。
""あっしらもご一緒しますぜ。""
猪たちは着いてくる気満々だったがアセナのように小さくなれるわけでもないとのことで、ご遠慮いただく。
目的だったアセナの無事も確認できたんだし、どうぞお帰りください。
別に3頭揃っているとすぐ喧嘩して面倒くさいとか、また何か問題起こしそうだとか、ちょっと毛がチクチクするとか、戻ったら山の神様とやらに怒られればいいとか全然思ってないからね。
"そうじゃ、帰れ、帰れ。"
ちょいちょいヤジを飛ばしてるアセナも心配してきてくれたのに邪険にしない。
別に一緒に山にかえってもいいんだよ。
と言うとアセナは黙りこんでフェルくんの後ろに隠れてしまった。
もう、恥ずかしがり屋さんなんだから。
後でいっぱいモフモフしてあげようね。
""そうですかい。じゃ、あっしらは山に帰ります。""
そして、味方が誰もいないと悟った猪たちはとぼとぼと山に向かって歩いていく。
チラチラとこっちを見ながら。
うん、チラ見されても引き止めたりはしないからね。
いい笑顔で元気でねと手を振れば、猪たちはこちらを二度と振り返ることなく物凄い勢いで走り去っていった。
""うわぁーん!!""
目元が光っていたようだが、わたしは何も見なかったことにした。
さぁ、お米様の元に向かいましょう!
あ、次の日にちゃんと筋肉痛きました。
今回は『ヒール』を使うのを我慢したので地獄だった。
アセナがモフモフのお返しとばかりに、つついてくるので筋肉痛が治ったあとまたモフモフしてやりましたよ。
その後は特に問題もなく進む。
「明日にはいよいよ次の町に到着する予定ですよ。」
おお!久しぶりの町だね。
「ゼロス様のお子様のお一人がいますので、預かっている手紙をお渡ししましょう。」
そうなんだ。お子さんってどんな人だろうね。
「きっと、いい人。」
だね。
また、途中の村の祠では旅の安全とともに山の神様にクレームをいれさせていただいた。
いくら猪とは言え猪突猛進にもとほどがあるやろがい。
自称眷属のしつけくらいちゃんとしろください。と祈っておいた。
ついでにがっつりお灸を据えてくれるとありがたいです。
町に向かうまでの間、こんなにも平穏を祈っているのに何故こうもやっかいごとばかりに遭遇するのかと考えば考えるほど何かイライラしてきたので、次の町の教会で一発かますことを密かに誓いながら馬車は進む。
総合評価100p,PV20,000を達成致しました。
この場をかりて皆様に感謝申し上げます。