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朝、モフモフの朝。
どうやらアセナのしっぽが顔に乗っかっていてたようで朝から幸せだった。
いい感じの温さに二度寝しかけた瞬間。
「朝ご飯ができましたよ。」
声にビックリしたアセナのしっぽが顔を強打してしばし悶絶。
これからは顔の近くで寝るのはご遠慮いただくことにしよう。
地味にめっちゃ痛かった。
美味しい朝ごはんをいただいたあと、今日の予定を決める。
まず、新たに仲間となったアセナの旅道具を買うことにする。
ブラシとか食器とか専用のクッションとか買わないといけないものがいっぱいある。
そのあと町の外で魔法の発動範囲を再確認してみることになったが、まずは買い物だ。
あれこれと買ってしまったが一片の悔いなし。
むしろいい買い物ができて大満足です。
さすがゼロスさんのお店、品ぞろえが本当に豊富で最高ですわ。
お昼を途中の出店で買って町の外へ向かう。
ちなみに、アセナはわたしたちと同じものを食べてます。
毎回ご飯の度に下界の食べ物は美味しいと言っていい笑顔を向けるので、皆が自分の分を少し分けてしまうのは仕方ないことだと思う。
前回練習した広場に到着後、ご飯を食べてからいざ魔法レッスン開始。
『ウィンド』
昨日の感覚を思い出すように発動した魔法は、威力は増していたが残念なことに範囲が戻っていた。
いや、何となくそんな気がしてましたけどね。
「「「・・・」」」
"なんじゃその魔法は。範囲が狭いにも程があろう。"
3人が気をつかって特に何も言わない中、アセナが転げ笑っている姿が視界の端に入って軽く殺意を覚えた。
いくらモフモフで可愛くても許せないことがあることを知った瞬間だった。
罰としてわたしが満足するまでモフり倒してやんよ。
覚悟しいや。毛玉め!
そのあとも色々と試してみるが、結局半径一メートル以上外に魔法が発動することは一度もなかった。
「ユウリ様、まだまだこれからですよ。」
「そうですよ。」
コクリ。
"なんじゃ、その、これからも頑張るのじゃぞ。"
流石に最後の方はアセナも笑えなくなったようで、みんなと一緒に励ましてくるがそれがまた辛かった…
いつもならアセナを抱っこするのはわたしの役目だが、今回はフェルくんの腕のなか。
何となく気まずい雰囲気のなか、帰路につく。
ゼロスさんの家に着くと、馬車が修理を終えて戻ってきていた。
元通りになった馬車にほっとして、アイテムボックスにしまっておいたクッションなどを詰め込んでおく。
これで明日の朝には再出発することが出来る。
ご飯を食べて元気を取り戻したあと、お風呂に入ってモフモフを堪能しようと思っていたが、3秒でスヤァしてしまったのでそれはまた明日。
翌日、朝ごはんを食べたあと、二度目別れの時。
今回も門まで見送ってくれることになり、その際みんなにも内緒でゼロスさんにひとつお願いをした。
「何をお願いされたのですか。」
うーん、今はまだ秘密。
いつか、話すつもりなのでその時が来たら話すよ。
もしかしたらお願いは無かったことになるかもしれないしね。
改めて、別れのとき。
流石に今回は泣かなかった。
2人が見えなくなるまで手をふって、わたしたちは再び東に向かって旅に出た。
お米様、待っていてください。
今、ユウリが参りますからねっ!
気付けば今回のお話で50話に到達いたしました。
これも読んでくださる皆様のおかげです。
感謝申し上げます。