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2人がお礼を言われて照れている間に、角の生えた男性が目を覚ます。
「うっ…」
身体を起こそうして、よろけてしまった男性を支えようと咄嗟に手を出すが非力な私では支えきれず、結果的に男性の下敷きとなってしまった。
グエッ!
「「ユウリ様!!」」
下敷きとなった瞬間を見ていたようでフェルくんとシルバくんが駆け寄り助け出してくれた。
救出、ありがとうございます。
ホントにもう、カッコつかないなぁ…
「あの、すみません。」
男性も下敷きにしてしまったことを謝罪してくれたのだが、こちらの方こそ支えきれず、すみませんです。
男性の意識が戻ったところでどうして狼に襲われるようなことになったのか話を聞かせてもらう。
「私はこの先にある街で商店を営んでいるゼロスと申しまして…」
おじいさん、もといゼロスさんは私たちが目指している街で色んな商品を扱っているお店の店主さんでお姉さんと男性はゼロスさんの奴隷だそうだ。
ゼロスさんは近々引退をしようと考えており、引退前の最後の仕入れに行った帰り道で私たちが歩いていた街道から外れた、移動距離が短縮できる独自のルートを走っていたとのこと。
ただ休憩するときには街道の脇にまで出るようにしていたのだが、最後の仕入で気が緩んでいたのだろう。
何十年も仕事をしていて今回初めてそれを怠って木々が生い茂る人気のなのい独自ルートの途中で休むことに。
思いの外こっちのルートで休むのも悪くないと和んでいると、突然狼の群れが現れて襲ってきたそうだ。
突然の奇襲に角の生えた男性がとっさに身を呈して狼たちを足止めしてくれたおかげでなんとか馬車に乗って街道まで出ることができたのだが…
あとは私たちも知っての通りで現在に至る。
なんでまた急に狼の群れが襲ってきたんだろうか?
「実は最近この辺りでは狼を使役して馬車などを襲う盗賊団がいるのですが、人気のない場所で休んでいたことが仇となってしまったようです。」
おう…盗賊って本当にいるのね…
狼、やっつけちゃったけど襲われない?
私たち復讐とかされたりしないよね?
「確かにあれだけ狼を倒しましたので狙われてしまうかもしれませんが、逆に警戒して関わらないようにするのではないかと。」
なるほど。仮に襲ったところで返り討ちにあうかもしれないからなにもしてこないだろうと、そういうことね。
「ん。」
そっか。そうだといいなぁ。というか、そうであって欲しいなぁ。いや、そうであってくれ!
「ですが、街に着くまでは警戒するに越したことはないと思います。どうでしょう、目的地は同じようですし私たちとご一緒いただけませんでしょうか?」
「確かに人数が多い方が警戒もしやすいですし、襲いずらくなるかと。ユウリ様今回はこちらの方達とご一緒するのがよろしいかと。」
うん。私もそれがいいと思う。
「ああ、助かります!さぁ、皆さま馬車にお乗りください。」
私たちはお言葉に甘えて馬車に乗せてもらう。
しかも、ゼロスさんが言っていた独自ルートとらやを使えば徒歩の何倍も早く街に到着できるそうだ。
襲われたばかりで大丈夫なのかな…
「別のルートを使いますから大丈夫です。」
あ、他にもルートあるんですね。
まぁそれなら安心かな。では、よろしくお願いします。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
こうしてわたしたちはゼロスさんと共に街に向かうことになった。
荷物を運ぶための荷台に乗せていただいたのだが…
私のお尻は早々にお亡くなりになりました。