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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
203/210

203

街道の脇に転がる毛玉を無視して、動かない黒ずくめをフェルくんにお願いして縛り上げ、顔に巻いてある布を剥ぎ取った。


ワオ…


現れたのはもふもふの黒い猫耳が付いているイケメンだった。

しかし、わたしはその猫耳イケメンの口に問答無用で布を突っ込んだ。


これで次の村への被害は阻止できたと思うけど、念のため確認しておいたほうがいいな。


フェルくん。猫耳さんのお馬さんで村まで行ってくれる?


「ユウリ様は?」


わたしとアセナさんは襲撃された村に戻るよ。


「・・・分かった。アセナ」


"ぐすっ、なんじゃフェル坊"


「ユウリ様のことお願い」


"ふんっ!そんなことくらいお安いご用じゃ"


「今度落としたら許さないから………シルバが」


"わ、わかった!だから今回のことはあやつに言わんでくれ!お願いじゃぁ!"


コクリ


いや、シルバくんどんだけよ。


"ユウリ、シルバの恐ろしさはおぬしが一番わかっておるだろう!"


・・・ごめん。わたしが悪かった。


"わかればよいのじゃ…"


「もういい?」


あ、はい。大丈夫です。お願いします。


馬に乗って出発したフェルくんを見送ると、わたしはアセナさんの背に跨がり、猫耳さんは口に咥えてもらい来た道をゆっくりと戻るのだった。






村に到着すると、まだシルバくんたちは来ていなかった。


思ったより遅いなぁ…


わたしは皆が到着するまでの間に元お頭のところへ向うことにした。


お頭はボロボロだった服が着替えられていて、まるで眠っているだけのようだったが、何度『ヒール』をかけてもお頭の目が開くことはなかった…


亡骸をいつまでもこのままにしておくことはできない。


わたしは村の人たちと共に村の畑が一望できる場所にお頭を埋葬するために穴を掘ると、お頭を穴にの中に寝かし土をかけていく。


『ヒール』で救うことができた命がある一方で、救えなかった命があったことを忘れない。


土をかける度に見えなくなっていくお頭の姿にわたしは堰を切ったように溢れ出てくる涙を止めることができなかった…


「ちょっと待て!今、動かなかったか?」


「そんなこと今は言うな。そう思いたい気持ちはわからないでもないけどな…」


「いや、見間違いじゃないって!ほら!また動いた!」


「そんなわけ…ほんまや…」


「おいっ!土をかけるのを止めろ!」


「は、鼻に土がっ!誰だ!人の顔に土なんかかけやがったやつは!」


・・・うそやん。




お頭はあり得ないことに蘇ったのだった。




状況が分からず混乱しているお頭を穴から引きずり出すと、その場で胴上げが開始されあっという間にお祭り騒ぎとなった。


"なるほど、今回の奇跡は死者蘇生ですね"


ケビンっ!?


"あ、ユウリさん。こんにちは"


こんにちはじゃないわっ!

奇跡ってどういうことっ!?


"先日の加護の件で降臨たじゃないですか。そのときの分の奇跡が死者蘇生だったようですね"


えっ?奇跡ってそんなことできるの?

っていうか、奇跡って降臨と同時に起こるんじゃないの?!


"そりゃぁ奇跡ですから死者蘇生くらい起きますし、タイミングはその時もあれば10年後の場合もありますけど"


・・・マジか


"マジです。じゃ、奇跡も見届けたので帰ります"


お、おう…お疲れ様。


"はい。お疲れ様でしたー"




ほどなくして村に到着した皆がユウリ様の姿が見えないと騒ぎだし大規模な捜索が行われ発見されるまで、わたしは奇跡が起きた穴の中で座り込んでいた。


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