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いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
201/210

201

ずーん…


わたしは今フェルくんの背中に紐で縛り付けられながら、走るアセナさんの背中の上で猛烈に凹んでいた。


10才の子に足手まといとか、何様っていうか、これは完全に鬼ばばだわ…


"なんじゃ、ユウリ。いまさら気づいたのか?わらわは前から知って…しまった!"


そうね。いまさら気づいたのよ。


"・・・お、おぬし、頭は大丈夫か?"


大丈夫じゃないんでしょうね。


「アセナ」


"なんじゃフェル坊、痛っ!おい、首をそんなに強く握るでない!い、息が…"


「おしおき」


"わ、悪かったのじゃ!謝るから手を離、離してくれ!"


「ダメ。落ちる」


"せめてもう少し弱く握るのじゃ!わらわが別の意味で落ちるぞ!"


「・・・仕方ない。でも、2度目はないから」


"ひっ!わ、分かったのじゃ!ボソッ…ユウリの周りのものはこれだからイヤなんじゃ…"


「何か言った?」


"な、なんも言っておらんぞ!さぁ早く村に向かわねばな!"


「なんでもいいから急いで。ユウリ様」


ん?なんだい、フェルくん?

今猛烈に凹んでて、振り落とされないようにするのに必死なんだけど…


「大丈夫」


え?何が?何が大丈夫なの?

アセナから振り落とされないってこと?


「英雄様は大丈夫」


・・・


「さっきは感情的になっただけ」


・・・


「ちゃんと分かってる。英雄様もユウリ様も」


・・・


「村に着く前にはいつものユウリ様になって」


・・・うん。

ありがとう。


「あと…」


ん?なんだい?


「ちゃんとクリーンしてね」


・・・はい。

後でちゃんとキレイキレイにします。


フェルくんの背中はすでにぐちょぐちょのびしょびしょになっていた。


しばらくして落ち着きを取り戻すと、フェルくんの背中を『クリーン』でキレイキレイにしながら、そう言えばフェルくんがあんなにたくさん喋れるんだなと失礼なことを考えていた。





"ユウリ、もうすぐで村に着くぞ。しかし、ずいぶんと血の臭いがするのぅ…"


そのアセナさんの言葉通り、到着した村では鎧を纏った兵士たちがかくれんぼ作戦を共に行った村の人たちを襲い、怪我をした人たちがそこかしこに倒れていた。


「なんだお前らはっ!おい!まだ残りがいたぞ!」


わたしたちの存在に気が付いた兵士の一部が向かってくる。


アセナとフェルくんは怪我人を退避させて、ここから離れて!


「任せて」"任せるのじゃ!"


わたしを素早くその場に下ろすと、ものすごい勢いで去っていくアセナさんとフェルくんを見送り、風魔法全開じゃあっ!と兵士の群れに突撃した結果。


吹き飛ばされ、はね飛ばされ、巻き上げられた兵士たちは屍と化した。

屍って言っても本当にコロコロした訳ではない。


"相変わらず、おぬしの魔法はえげつないのう…だから手伝いなんぞ必要ないと言うたのだ"


そこかしこに転がる兵士をどうしようかと考えていると、アセナさんがやってきた。


村の人たちはっ?!


"怪我をしてるものは動けるものたちとフェル坊が一ヶ所に集めておる。すぐに治療が必要なものが多い。早う乗れ"


アセナさんの背に乗り辿り着いた場所で、わたしはすぐに『エリアヒール』を発動させ、多くの村の人たちが一命をとりとめ、怪我が治ったと歓喜していた。


フェルくん、兵士は始末してあるから、縛り上げておいて…


「ユウリ様、大丈夫?」


大丈夫…今は出来事をやろう。

心配してくれてありがとう。





わたし目の前にはただ一人、『エリアヒール』で傷が治っても目を開けない、盗賊のお頭だった彼がいた…



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